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国際市場での競争激化に苦しむ養豚業界(ベトナム)


輸出市場の競争激化
  ベトナム農業・農村開発省によれば、今年第1四半期の豚肉の輸出量は前
年同期比32%減の約2千トンと大幅に減少した。同国最大の豚肉輸出企業で
ある国立畜産公社(VINALIVESCO)は、今年の年間輸出目標を昨年実績と同
水準の1万4千トンとしているが、第1四半期の輸出量は 300トンにとどま
っており、目標達成はきわめて困難な状況となっている。

  このような輸出不振の要因について、同公社は、当事務所の取材に対し、
豚肉の国内消費が増加傾向にあるため、国内価格がキログラム当たり1,100
ドン(約8.5円:千ドン=7.7円)を上回る高い水準で推移しており、輸出市
場における同国産豚肉の競争力が低下しているためであるとしている。

  同公社によれば、2002年は畜産が好調であり、豚の飼養頭数は前年比6.4
%増の約 2,320万頭(うち繁殖母豚は約300万頭)となっており、豚肉生産
量は同14%増の約170万トンであったとしている。輸出については中国など
との価格競争の激化により、目標の3万2千トンを大幅に下回った。ロシア
はベトナムにとって伝統的な豚肉輸出市場だが、ここでも中国やブラジルと
の競争が激化しており、特にブラジルのロシア向けの豚肉輸出量は、 2001
年に1万5千トン程度であったものが 2002年には約17万トンに急増してい
る。

 

輸出価格の低下続く

  昨年のベトナム産豚肉の平均輸出価格はトン当たり1,600〜1,700米ドル
(約19〜20万円:1米ドル=119円)であったのに対し、今年に入ってから
は中国産などとの競争により同1,200米ドル(約14万円)まで価格を下げて
いる。 ベトナムにとって伝統的な丸焼き用子豚の輸出市場である香港向け
も中国との価格競争の激化により減少している。 丸焼き用子豚の平均輸出
価格は、2001年が1トン当たり1,400〜1,600米ドル(約17〜19万円)、2002
年が同1,100〜1,200米ドル(約13〜14万円)であったのに対し、今年に入
ってからは同950〜1,000米ドル(約11〜12万円)にまで下落している。ベ
トナム在来のモンカイ種は肉の香りが良いとされており、同国では外国種と
の交雑により丸焼き用子豚を生産しているが、中国産との価格差が大きすぎ
るため、品質による競争力を十分発揮するには至っていない。
 


飼料コストの削減が急務

  同公社によれば、ベトナムでは飼料の生産コストが高いため、現状より
輸出価格を下げるのは困難である。2002年の同国のトウモロコシなどの飼
料原材料輸入量は90万トン、2億1,800万ドル(約257億円)に達している。

 配合飼料の主成分であるトウモロコシ、大豆かす、魚かすといった飼料
原材料の輸入には7%の関税率が適用されており、さらに国内消費される
製品へ加工する場合には5%の付加価値税が課せられ、飼料の生産コスト
を上昇させている。同国の飼料産業はタイのCP(チャロン・ポカパン)社、
フランス系のプロコンコ社、米国系のカーギル社といった外国企業が高い
収益性を誇って支配的地位を占めていることから、国内養豚業界は、飼料
原料の税制上の優遇措置の導入による原料コストの低減だけでなく、飼料
産業と養豚業界との協力体制を確立するための政策が必要とされている。



 
【シンガポール駐在員 小林 誠  6月11日発】 

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