ALIC/WEEKLY
米国と南米の初の包括的自由貿易協定 米国通商代表部(USTR)ゼーリック通商代表とチリのアルベアル外相は6月 6日、フロリダ州マイアミで二国間の自由貿易協定に調印した。この協定は、構想 から12年、2年間にわたる複雑な協議を経てようやく調印となったが、双方の国会 での批准手続きが終了し発効すると、米国と南米諸国の間での初めての包括的な自 由貿易協定となる。農産品については牛肉を始めその4分の3について4年以内に 無税とするとともに、鶏肉等についても12年以内に関税の漸減および関税割当枠の 拡大をしていくこととしている。 ゼーリック通商代表は、「米国の農業者、労働者、消費者、産業界はチリとのア クセスの改善により恩恵を受けるであろう」とし、通商代表としての最初の外遊が チリであったこともあり感慨深い様子だ。チリは既に欧州連合およびカナダとの間 で二国間自由貿易協定を締結しており、米国は今回の二国間自由貿易協定締結によ り、これらの国々よりも有利な貿易条件を得るとともに、豚肉・豚肉製品、牛肉・ 牛肉製品、大豆、マカロニ小麦等の主要農産品について4年以内に無税の恩恵を享 受することが出来るとしている。他方、米国はチリ側に乳・乳製品、生鮮野菜、果 実等についてアクセスの改善を図る。 米国の牛肉・豚肉生産者団体は調印を歓迎 全国豚肉生産者協議会(NPCC)は、「この協定は米国の豚肉生産者に心が躍 るような輸出の機会を与える」と、また、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA) は、「この協定はチリ向けの牛肉および牛肉製品の関税を削減し、市場開放をもた らす」とそれぞれ歓迎のコメントを公表した。 この協定の交渉に際しては、衛生植物検疫(SPS)の扱いが論点となったが、 双方のWTOのSPS協定上の権利を留保しつつ、SPS問題委員会を発足し、二 国間での解決を図っていくとした。また、牛肉の規格問題については、米国の規格 をチリにおける国内規格と同等なものとしてチリ側が例外的に扱うことで決着を見 た。このように、この協定は、非関税障壁問題においても両団体の関心を反映した ものとなっている。 鶏肉製品については、覚書を手交 鶏肉製品については、12年間で関税割当枠を段階的に拡大し、最終的に無税とす ることとしたが、ゼーリック通商代表とアルベアル外相との間で鶏肉製品貿易につ いて相互の利益を図るために技術・科学的な作業を鋭意進めていくとの覚書が交わ され、今後も事務レベルで残された問題の解決を図っていくこととした。 WTO農業交渉も見据えたしたたかな内容 ゼーリック通商代表は、「この協定が現在行われている米州自由貿易地域(FT AA)交渉および国際貿易交渉を加速するであろう」ともコメントしており、この 協定の農業部分には、両国がWTO農業交渉において農産品に対する補助金の撤廃 を目指し協調していくことも盛り込まれるなど、米国のしたたかな多国間(WTO )、地域(FTAA)および二国間の三方面に対する貿易自由化促進戦略の一面も 垣間見られる。 【ワシントン駐在員 犬飼 史郎 6月11日発】
元のページに戻る