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酪農乳業危機からの脱却を目指し新たな合意(アルゼンチン)


危機的状況が続くアルゼンチン酪農乳業界

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)が4月30日に発表した生乳生産動向
によると、2002年の生乳生産量は、前年比14.0%減の815万キロリットルとなり、
90年代半ばの水準まで減少した。この要因としては、乳価低迷に伴う収益性の悪化
から酪農家の廃業が増加したこと、乳牛のとう汰頭数が増大したこと、酪農から耕
種への転換が進んだことなどがある。今年に入っても減少傾向は続き、2003年の生
乳生産量は、前年比4.3%減の780万キロリットルと予測されている。同国の酪農乳
業関係者の間では、生乳生産の減少傾向に加え、多額のドル債務を抱える乳業メー
カーの経営状況が厳しいことなどから、同業界は依然として危機的状況にあるとの
見方が多い。


国家酪農乳業政策協議会を結成
 こうした中、主要酪農地帯であるコルドバ州サンフランシスコ市で5月8日〜11
日、2003年酪農乳業展が開催された。この乳業展では、アルゼンチン最大の乳牛品
評会が行われるとともに、酪農乳業の現状についてさまざまな論議が交わされるが、
今回は、国、州、酪農生産者、乳業メーカーが一体となって問題解決に取り組まな
ければならないとの認識から、当事者間で次の合意が締結された。

@ 酪農生産者、乳業メーカー、主要酪農生産州であるサンタフェ、コルドバ、エ
  ントレリオス、ラパンパ、ブエノスアイレスの各州政府、およびSAGPyA
  のそれぞれの代表者から構成される国家酪農乳業政策協議会を結成する。

A 同協議会において優先的に協議および分析される事項は次の通りとする。
  
 ・生乳の品質基準を全国的に統一する。

 ・乳業メーカー独自の基準による現行の乳価決定システムを全国的に統一する。

 ・乳価決定の基準となる生乳の品質分析をメーカーに代わり公的機関が実施する。
  
 ・生乳の安定供給や乳価の安定を図るため政府がどのように関与すべきか検証す
  る。

 ・牛乳・乳製品の生産から販売にいたる過程で付加価値が価格にどのように反映
  されるかなどを検証する。

B Aに関連して現在実施されている、生乳の安定供給を図るための手法などに関
  する調査の継続を再認識する。

C 国および州の代表者は以下の事項を実施する。
  
 ・正規の流通・販売ルートを通さない違法な牛乳・乳製品の取引を撲滅するため
  の監視システムを強化するとともに、公衆衛生の向上を図る。

 ・牛乳・乳製品に関する統計情報システムを充実させる。

 ・違法取引の防止や統計情報の作成のため、州ごとに酪農施設登録制度を確立す
  る。

 ・酪農乳業界の利益を確保するため、国際フォーラムなどへ積極的に参加する。
  
 ・Aの実施に必要な法規を提案する。



生産者にとって価格交渉力の向上を期待

 SAGPyAの酪農乳業政策国家コーディネーターのリナリ氏は「利害調整が困
難な業界にあって、今回の合意は歴史的な出来事と言える。今後は、乳業メーカー
による乳価決定システムが見直され、酪農生産者の価格交渉力が増す一方で、乳業
メーカーにとっては、違法な取引が減少することで生乳確保と販路拡大が期待でき
る」と述べている。今回の合意を足掛りとして、酪農乳業界の問題解決に関係者が
いかに取り組むか、その動向が注目される。
 

【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 5月21日発】 


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