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2004年の10大ニュース


ブエノスアイレス駐在員事務所【 犬塚 明伸、横打 友恵 】


1.南米自由貿易圏の発足に向けた動き

 2003年12月16日メルコスル(南米南部共同市場)を構成するアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、
ウルグアイとアンデス共同体(CAN)5カ国のうちコロンビア、エクアドル、ベネズエラが経済補完
協定第59号を締結した。またCANの一員ペルーもメルコスルと2003年8月25日に同第58号を締結して
いたが、両協定ともに品目別関税削減方法が規定されていなかったためその後の交渉が長引いた。2004
年12月1日現在、両協定の進ちょく状況に差異はあるもののラテンアメリカ統合連合(ALADI)に
おける事務手続の段階にあり、最終的な協定発効には至っていない。なおCANのボリビアは1996年12
月17日にメルコスルと同第36号を締結しており、76年10月にアンデス共同体を脱退したチリは、メルコ
スルと同第35号を結んでいるほか、ボリビア(第22号)、ベネズエラ(第23号)、コロンビア(第24号)
、エクアドル(第32号)、ペルー(第38号)とも協定を結んでいるため、南米全域をカバーする10カ国
で構成する大きな自由貿易圏が発足する運びとなった。


2.アルゼンチン、OIEにおいてBSE清浄国に認定

 5月25日、パリで開催された国際獣疫事務局(OIE)の総会において、アルゼンチンはアイスラン
ド、シンガポール、ウルグアイの3カ国とともに、BSE清浄国として暫定的に承認された。なお、ア
ルゼンチンでは農畜産品衛生事業団(SENASA)決議第15/2003号(2003年2月5日付け)などに
基づいて輸出向け肉牛に対する個体識別制度が導入されているが、6月の世界食肉会議に出席したサブ
サイ農牧水産食糧庁(SAGPyA)次官は、2005年3月までにはその対象を国内向けも含めたすべて
の牛にしたいとしている。


3.チリ、牛のトレーサビリティ・システムが始動

 11月1日からチリにおいて、牛のトレーサビリティ・システムが始動した。これはチリ農牧庁(SA
G)決議第3321号(2004年9月13日付け)に基づいて実施されており、第11州の牛関連畜産施設の登録
が先行して行われ、その他の州においては2005年1月1日から登録が開始される。個体識別は「個体識
別公式装置(DIIO)」と呼ばれるもので行われ、決議で規定された施設に飼養される牛に装着が義
務付けられる。なおDIIOは黄色と定められ、SAGから与えられた個体識別のための9桁の番号な
どが表示され、基本的には左耳に耳標タイプ、右耳にボタン状タイプを装着する。


4.ウルグアイ、個体識別によるトレーサビリティ・システムのパイロットプランを実施 
 
  ウルグアイ農牧水産省は、6月上旬から個体識別によるトレーサビリティ・システムを導入するため
のパイロットプランを実施した。ウルグアイでは家畜の移動や衛生といった各部門において存在する情
討が行われており、これに併せ個体識別制度も検討されてきた。今回のプランでは、全国の牛飼養頭数
の約1割に相当する100万頭分の耳標を農牧水産省が購入して配布する予定で、@家畜の識別が可能な
ビジュアルタグと、A同タグと同一の番号を電子的に保存する無線ICタグ−の2つを装着し、生産者
は50〜65%を負担する。


5.ブラジル、SISBOVにおける登録期間義務付けは輸出向けと畜牛のみ

 ブラジルでは農務省(MAPA)訓令第1号(2002年1月9日付け、同訓令第17号(2003年12月12日
付け)により変更)によりすべての牛(水牛を含む)が2007年末までに個体識別制度(SISBOV)へ
登録することが義務付けられた。また同訓令第88号(2003年12月12日付け)において2004年6月からは
、輸出向けと畜許可を得るために全国データベース(BND)への登録期間が40日間以上から90日間以
上必要になるとされ、かつその他の牛についてもBNDへの登録が義務付けられていた。しかし10月29
日に公布された同訓令第77号(2004年10月28日付け)により、BNDへの登録の義務と期間は、輸出向
けにと畜許可を得る牛のみについて40日間以上に変更された。


6.アルゼンチン・ブラジル民間セクター、ブラジル産豚肉に最低価格を適用

 近年、安価なブラジル産豚肉が流入したことで、アルゼンチン養豚産業の競争力が次第に低下し、両
国間であつれきを生んでいた。これについて、アルゼンチンの民間セクターは輸入枠を設定するように
要求したが、ブラジル側が拒否したため、最低価格によるコントロールを試みることが両者間で確認さ
れ、5月1日からブラジル産豚肉のハム加工用等6部位の輸入価格を監視することが合意された。


7.ウルグアイ産牛肉などに対し、米国が「ナチュラルミート」の呼称使用を承認

 ウルグアイ国立食肉院(INAC)は8月29日、米国内においてINACが認定する「ナチュラルミ
ート」をその呼称を用いて販売することが米国農務省(USDA)により承認されたと発表した。IN
ACによれば、海外ではウルグアイが初の承認となる。ウルグアイにおいて食肉は全輸出額の20%を占
める重要な産業であり、かつ国際市場では食の安全、動物福祉、環境保全についての要求が高く市場拡
大も期待されることから、INACは牛肉・羊肉に係る「認定ナチュラルミート制度」を策定しており、
今回はUSDAからその制度が承認された。


8.アルゼンチンのヒルトン枠配分騒動、収まらず

 SAGPyAは決議第113/2004号(2004年1月22日付け)により、2004年7月1日〜2008年6月30日
までの4期間にわたって適用されるヒルトン枠(EU向け骨なし高級生鮮牛肉の関税割当枠)の新配分
方法を制定した。しかし、具体的な算定方法などの詳細事項が不明であること、利幅の大きいヒルトン
枠を獲得するため食肉パッカーが訴訟を起こすなどにより、具体的な配分数量の決定が遅れていた。こ
のような中、9月29日SAGPyAは、決議第113/2004号を改正する決議第904/2004号(2004年9月28
日付け)を公布して配分方法などの詳細を定め、関税割当年度開始から3カ月が経過した10月14日に食
肉パッカーへの具体的な配分数量を定めた決議第1108/2004号(2004年10月13日付け)を公布した。
  しかし配分数量をめぐっては、パッカーのみならず州知事や国会議員などからも不満が続出し、アル
ゼンチン牛肉輸出業者連合(ABC)などは司法に輸出に係る証明書発給の差し止め命令を要求して提
訴するなど12月7日現在、配分をめぐる騒動は沈静化していない。



9.4年連続の減少となったアルゼンチンの生乳生産が回復傾向

 SAGPyAによると、2003年の生乳生産量は前年比7.0%減の800万キロリットルと4年連続の減少
となった。要因としては、主要酪農地帯であるサンタフェ州を中心とした水害やコルドバ州南部やブエ
ノスアイレス州西部の干ばつなどが挙げられる。サンタフェ州では前年比14.6%減、コルドバ州では同
12.0%減、ブエノスアイレス州でも同0.6%減といずれも前年を下回る結果となった。しかし2004年は回
復傾向で推移し、12月のSAGPyA公表データによれば、1〜10月の主要乳業メーカー生乳取扱数量
は前年同期比19.3%増となっている。



10.ブラジル産鶏肉の輸出が好調

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると2004年1〜10月の鶏肉輸出量は、前年同期比25.8
%増の約199万8,500トン、輸出額は同48.7%増の約20億6,500万ドルとなった。このうち対日輸出量は同
65.9%増の約26万5,500トン、輸出額は同107.0%増の約4億2,100万ドルで、特に輸出額は2倍強となっ
た。また1トン当たりの輸出価格は同18.2%増の1,033ドル、対日輸出価格は同24.8%増の約1,587ドル
であり、主要鶏肉輸出国における鳥インフルエンザの発生などの家畜衛生問題などにより輸出が好調と
なっている。



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