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2004年の10大ニュース


シドニー駐在員事務所【井上 敦司、横田 徹】


1.豪州産およびNZ産牛肉の日本向け輸出量、過去最高を記録
 
  米国での牛海綿状脳症(BSE)の発生を受け、米国産牛肉が輸出停止になったことから、豪州
産牛肉およびニュージーランド(NZ)産牛肉への需要が高まり、日本や韓国向け輸出量が大幅に
増加した。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、豪州産牛肉の日本向け輸出量は、2004
年1〜11月の間で前年同期比38%増の36万トン、一方NZ産牛肉も同年1〜10月間で91%増の約3
万トンとなり、暦年で過去最高となった。また、強い需要を反映し素牛価格、牛肉輸出価格とも高
騰している。


2.豪州およびNZ、各国とのFTA交渉活発化
 
  豪州およびニュージーランド(NZ)は、各国との自由貿易協定(FTA)の締結または交渉開
始へ前進した。豪州は、米国やタイと2004年にFTAを締結し2005年1月からの発効が決まった。
また、東南アジア諸国連合(ASEAN)とのFTA交渉も2005年に行われることが決定され、同
年さらに中国とのFTA交渉も開始される見込みとなった。一方、NZは、中国やASEANとの
FTA交渉が2005年から開始されることに決まった。


3.豪州、フィードロット飼養頭数、過去最高を記録
 
  豪州フィードロット協会(ALFA)は10月25日、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)との共
同調査による四半期ごとの全国フィードロット飼養頭数調査の結果を発表した。これによると、総
飼養頭数は2004年9月末時点で75万9千頭と4期連続の増加となり、過去最高の飼養頭数を記録し
た。ALFAによると増加要因は、米国でのBSEの発生により米国産牛肉のアジア諸国向け輸出
が停止したことで、これらの国の牛肉需要が豪州産に大きく依存した結果だとしている。


4.豪州QLD州政府、NLIS義務化の骨子を発表
 
  豪州最大の牛飼養頭数を有するクインズランド(QLD)州政府のパラジュック第1次産業相は
9月2日、電子標識(耳標)による牛の個体識別制度であるNLISの同州における義務化につい
て、2005年7月1日から段階的に実施することを発表した。焦点になっていたと畜場直行牛などに
対する電子耳標装着を免除する例外措置については、最終的にこれを盛り込まないことを基本にし
たものとなっている。NLISについては、連邦および州政府による第一次産業大臣会議で2005年
7月から全国的な義務化が合意されていた。


5.豪州連邦政府、生体家畜輸出規制を見直しへ
 
  連邦政府トラス農相は3月30日、今年1月初めに生体家畜輸出問題を検討する委員会からなされ
た生体家畜輸出規制の見直しに関する勧告「ケニリーレポート」を受けて、生体輸出規制の改革案
を発表した。改革案の内容は、おおむね勧告に沿ったものであるが、いくつかの点で重要な修正が
なされている。政府による生体家畜輸出規制の規則の制定や輸出業者に対する輸出許可権限の政府
への一元化、豪州検疫検査局(AQIS)による検査、監視の強化などは勧告のとおり改革案に盛
り込まれたが、勧告で禁止されていた冬季の豪州南部の港からの出荷は条件付きで認められた。


6.豪州酪農業、依然干ばつの影響から回復できず

 デイリー・オーストラリア(DA)は6月21日、本年4月に実施した全国酪農家調査の結果を発
表した。この調査は、2002年から2003年にかけて発生した干ばつの影響に関する酪農家の意識調査
を目的として行われた。調査結果によると、現時点では、多くの酪農家が干ばつの影響から立ち直
っておらず、また、今後も、積極的な投資などには慎重であり、離農率は減少せず、将来を悲観的
に考える酪農家の数が楽観的に考える数を上回るとしている。


7. 豪州、豚肉製品の規制緩和方針に業界が反発、提訴へ
 
  豪州連邦政府農漁林業省下で輸入リスク分析を実施するバイオセキュリティー・オーストラリア
(BA)は2月19日、豚肉製品輸入に関するリスク分析の最終報告を発表した。昨年8月に発表され
た草案通り輸出国の家畜疾病の清浄状況に応じて、実質的には加工・調理済みや骨抜き製品などに
限り輸入を認可する内容である。この報告に対して豚肉業界は、重大な家畜疾病の侵入や輸入増加
の可能性に対する懸念を表明し、連邦裁判所へ提訴している。


8. 豪州の各州政府、GMカノーラ解禁に依然慎重姿勢
 
  2003年、連邦政府は食用としては豪州で初めて遺伝子組み換え(GM)カノーラの商用栽培を許
可したが、実際の栽培に当たっては、許可権限を持つ各州政府がそろって栽培禁止期間を設け、栽
培解禁に慎重な姿勢を示していた。2004年栽培禁止の期限が到来する州もあることから今後の対応
が注目されていたが、乳製品や穀物などの輸出企業からの反対もあり、各州ともおおむね栽培禁止
期間の延長や試験栽培の縮小を取り決め、解禁には依然慎重な姿勢をみせている。


9.豪州およびNZ、WTO交渉枠組み合意を歓迎
 
  2004年8月1日に世界貿易機関(WTO)一般理事会で今後のWTO交渉の枠組みが合意された。
豪州およびニュージーランド(NZ)の政府や農業団体は、輸出補助金の撤廃などが含まれた合意
内容についておおむね歓迎の意向を示すものの、農業団体はセンシティブ品目を含む市場アクセス
の具体的内容が今後の交渉に委ねられたことから、政府に対し今後の交渉に関して一層の努力を要
求している。


10.フォンテラ、減収にもかかわらず、乳価は前年度を上回る(NZ)
 
  ニュージーランド(NZ)の巨大乳業メーカー、フォンテラは7月21日、2003/04年度の決算結果
を発表した。これによると、一部地域での事業の縮小やNZドル高の影響により、売上高は前年度
比5.2%減の118億3千万NZドル(8,991億円、1NZドル=76円)となった。しかし、人員削減な
どのコスト削減努力の結果、生産者への支払い乳価は4.25NZドル(乳固形分ベース)と前年度の
3.63NZドルを上回った。税引き後の利益は前年度比94%減の1,600万NZドル(約12億円)となっ
た。なお、2004/05年度の暫定支払い乳価は3.85NZドルとしている。



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