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ヒルトン枠の新配分方法が決定(アルゼンチン)


 
配分方法の決定が遅れる

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は決議第113/2004号(2004年1月22日付け)により、
2004年7月1日〜2008年6月30日までの4期間にわたって適用されるヒルトン枠の新配分方法を
制定した。
 
  アルゼンチンはEUから、一定基準を満たす骨なし高級生鮮牛肉に関する関税割当制度(通称
ヒルトン枠)により、当年7月1日〜翌年6月30日の1年間に28,000トンが割り当てられ、国内
の食肉パッカーへの配分はSAGPyAが行い、その配分方法は2〜3年ごとに改定されてきた。前回
の配分方法は決議第914/2001号(2001年11月7日付け)により2004年6月30日までが対象期間と
なっており(本紙通巻第514号を参照)、本来ならば2003年12月末日までに新たな配分方法を決
定するか、決議第914/2001号を延長するかを決めなければならなかった。しかしヒルトン枠は牛
肉の全輸出量に占める割合が約10%にもかかわらず、輸出単価が高いため全輸出額に占める割合
が約30%となっており、パッカーは利幅の大きいヒルトン枠を得ることに躍起で司法問題等にも
なっていたため(本紙通巻第604号を参照)、SAGPyAは各業界の代表者や地方行政機関との話し
合いをするなど決定までに慎重なプロセスを踏み、今回の決定に及んだようである(具体的な配
分方法は下記に紹介)。



配分方針は、ヒルトン枠以外の輸出を促進し、地方の産業を発展させること
 
 1月22日に公表したSAGPyAのプレスリリースによれば、「中期にわたる投資および生産・輸出
戦略を保証するため、新決議は今後4年間に係る指標と要件を定めた。また新配分方法の主な目
的は、生鮮牛肉、加工牛肉、内臓の輸出増加を誘導することと同時に、平等の要求を満足させる
こと、雇用を拡大させること、新規パッカーの育成や地方産業を発展させること(経済の地方分
散の支援)、関連分野における投資を増大させることである」と説明している。

  なお、決議第914/2001号にはなかった@ヒルトン枠とそれ以外のものの輸出量比率(参考の4)
A配分量の上限設定(同6)B配分された枠の譲渡禁止(同8)―を定めるなど、ヒルトン枠配
分に係る管理は厳しくなっている。



◎ 亜国ミッション、3月3日から日本訪問

 1月28日、SAGPyAのカンポス長官が永井大使に生鮮鶏肉の輸出拡大について要請した旨のプレ
スリリースが公表され、その中で2月下旬または3月に日本にミッションを送りたいとしていた
ところ、2月16日当事務所に対する連絡によると、3月3日に東京に到着し、牛肉および鶏肉に
関するセミナーを開催する予定等とのことであった。



(参考)具体的な配分方法

1 総枠から後述の2、3、6、7を差し引いた枠(SAGPyAによれば、1期目はおおよそ85%)
   の配分方法

   @この枠に該当する75%は、過去3年間の骨なし冷蔵・冷凍牛肉の各企業の輸出実績(FOBベ
     ース。ヒルトン枠に該当する実績を除く)に基づき配分する。ただし輸出実績の勘案比率は、
     3年前を20%、2年前を30%、前年を50%とする。

  A残る25%は、(@)骨の有無に関係なく冷蔵・冷凍牛肉(ヒルトン枠に該当する実績を除く)
   、(A)加工牛肉やコーンビーフなどの加工製品、(B)内臓の輸出実績合計(FOBベース)に
     @と同様の計算方法によって配分する。ただし、(A) (B)の合計金額は、1期目は75%、
     2期目は50%、3期目は25%、4期目はカウントされない。
     
2 輸出パッカーとブリーダー協会や生産者団体の共同プロジェクトに対しSAGPyAが別途定める
  規定に基づき配分する枠は、1期目が7%、2期目が8%、3期目が9%、4期目が10%で
  ある。

3 総枠の7%は、各州におけるEUへの輸出許可を持つパッカー数および肥育牛などの飼育頭
  数を考慮して配分される。ただし、他の条項の規定によるものと合わせ、1施設当たり200
  トン以上の追加はあり得ない。

4 各企業とも始めの2期間中、直前の期間にヒルトン枠以外で輸出した量と当決議で割り当て
  られる量は、2:1の比率を維持すること。なおその後は3:1の比率とする。

5 ヒルトン枠申請の最低条件として、ヒルトン枠の年対象期間の直前の期間に、ヒルトン枠以
  外のものを1期目申請時には200トン、それ以降は400トン輸出していること。ただし、新規
  申請者は、申請の直前期間にヒルトン枠以外のものを200トン以上輸出していること。

6 いかなる施設も総枠の6%を超えることはできず、それを超える場合は削減される。またい
  かなる企業も100トン以下の配分がされることはなく、もし100トン以下の場合は100トンの
  枠が与えられるが、同一企業に対してこの措置は2年間のみとする。

7 新規のパッカーとして新たに認可された施設のうちサイクル1(と畜を含む処理加工工程対
  応)に200トン、サイクル2(加工工程のみ対応)に100トンを2年間与えるが、2年目を申
  請するためには、1年目にヒルトン枠以外のものを、2倍以上の輸出実績が必要である。な
  お1の規定により本規定の割当量を超える場合は、1のみに従う。

8 企業間の枠の譲渡を禁じる。

9 ひとつの期間で与えられた枠の最低50%を12月31日までに履行しない場合は、残りの枠は没
  収され、他の資格者に再配分される。なお、SAGPyAは同一期間を7月1日〜12月31日、1月
  1日〜6月30日に分け、それぞれ50%ずつ配分することができるが、この場合は各期毎にす
  べての量を輸出しなければいけない。 




【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成16年2月18日発】 


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