ALIC/WEEKLY


米国内で初のBSE発生(その3)


カナダ政府、BSEサーベイランスの強化策などを発表
  カナダのスペラー農業・農産食料大臣は1月9日、米国でのBSE発生牛がD
NA鑑定によりカナダ産とほぼ断定されたことなどを踏まえ、BSEサーベイラ
ンスの強化などの追加的な対策を講ずると発表した。
 
  BSEサーベイランスの強化では、BSEに感染している可能性が高いとされ
る起立不能(ダウナー)牛、病牛および農場死亡牛を中心として今後1年間で少
なくとも8,000頭のBSEサーベイランスを実施するとともに、最終的にはサー
ベイランス頭数を30,000頭以上とすることを挙げている。なお、最終的なサーベ
イランス頭数は今後1〜2年で引き上げられると考えられる国際的な基準を反映
するものであるとしている。

 サーベイランスは、食品の安全のための措置ではなく、と畜段階での特定危険
部位(SRM)の除去がBSE感染性を有する原材料が食品システムに侵入する
ことを防止するとしている。併せて、増加する検査頭数に対応するため、迅速検
査をスクリーニングテストとして用いるとしている。また、牛個体識別(ID)
については、昨年5月のBSE発生時に発生牛の経歴に関する貴重な情報をもた
らしたことやその後招へいしたBSEの国際的な専門家からもID強化の勧告が
なされたことから、新たな技術を導入した制度の強化を図るとしている。



米国、カナダ、メキシコの3カ国農業大臣がBSEに関する共同声明発表

  ベネマン米農務長官、カナダのスペラー農業・農産食料大臣、メキシコのウサ
ビアガ農務長官は1月16日、米国、カナダでのBSE発生を踏まえた今後の北米
3カ国での協力などについての共同声明を発表した。3カ国の農相は、@北米地
域の食料供給における安全性の確保を継続することを目標に北米地域で発生した
BSEに対しBSEに関する規制の調和や同等のための努力を促進させること
A牛肉に対する消費者の信頼を確保すること  B北米地域の牛肉産業が緊密な関
係を持つこと認識し、BSEへの規制と貿易の双方の観点から協調する必要があ
ること  C国際獣疫事務局(OIE)のガイドラインを科学に基づいたものに改
定し、国際貿易において適用されることを目標にした意見交換を進めること D
副大臣クラスによる牛肉の輸出再開に向けた調整を行うこと −について同意し
たとしている。また、メキシコのウサビアガ農務長官は会見で、「米国がBSE
に対する追加的な対策を実施し、これらがわれわれを満足させるものであれば、
すぐに米国からの輸入を再開する予定である」と述べた。




米国下院農業委員会がBSE発生に関する公聴会を実施 

  米国下院農業委員会は1月21日、BSEに関する米農務省(USDA)に対す
る公聴会を実施しベネマン農務長官からBSE調査の状況などを聴取した。公聴
会では、初めに下院議長からクリスマスや年末年始を返上してBSE発生後の疫
学調査やBSE対策のための規則の改正等にUSDAが鋭意取り組んできたこと
に対する感謝の意が述べられた。その後の各委員との主な質疑回答は次のとおり。

(質問)日本を始めとする貿易相手国に対し、適時の輸入再開を求めないのか。

(回答)日本からの技術調査団を受入れ、米国の調査をレビューしてもらった。
       また、輸入再開に向けた協議のため現在日本に交渉団を派遣している。
       日本は米国産の輸入再開の条件として全頭検査を求めているが、これは
       科学に基づかないものである。むしろ消費者の安心(consumer satisfaction)
     に対応するものである。貿易相手国に対する米国産牛肉の輸出再開は、
       最優先事項である。

(質問)米国にBSE発生牛とともに輸入された牛の追跡調査の状況いかん。

(回答)BSE発生牛を含む81頭が米国に輸入され、現在23頭については追跡
       調査が終了している。残りの調査ついては数週間のうちに終了したい意
       向である。

(質問)カナダからの生体の輸入再開のための規則案の状況いかん。

(回答)1月2日の時点で今回のBSE発生に関する調査が終了するまで制定の
       プロセスを停止することを発表している。
      
  このほかサーベイランスの強化や起立不能牛等の食用の禁止等について、具体
的な手法や確実性の担保に関する質疑がなされた。

ワシントン駐在員 道免 昭仁 平成16年1月21日発

元のページに戻る