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好調なスタートを示す農業生産(フィリピン)


成長率は過去15年で最高

 フィリピン農務省農業統計局(BAS)は今月中旬、2004年第1四半期の農業統計を公表した。
同国農業部門全体の85年の価格に換算した生産額では主として作物生産と、水産養殖部門の好
調な伸びを受けて過去15年の中では最大の成長率となる前年同期比8.16%の成長を示している。

  全体の成長率を引き上げている主な要因として、農業生産額の約半分を占める作物部門が好
調であったことが挙げられる。特にかんがい施設の整備が進んだことにより、米の生産が前年
同期比13%増と好調だったことや、ミンダナオ地域を中心として育種改良を行った種子の使用
が増加し、良好な気候条件と重なってトウモロコシの収穫面積が増加したことが大きく影響し
たとされている。なお、トウモロコシの生産額は同様に13%の増加となっており、これら2品
目が作目により状況のばらつく作物生産全体を底上げする形となっている。また、農業生産額
全体の成長率を押し上げる要因として、農業生産額の約2割を占めた水産は、特に養殖部門の
伸びが大きく、前年同期比41%の増加となっている。



畜産部門はわずかに減速

  一方、家きん部門を併せた畜産部門の農業生産額全体に占める割合は約3割で、2002、2003
年同期の成長率と比べると、わずかに減速した結果となった。家きんを除く畜産部門全体の生
産額は前年同期比3.3%増と堅調に推移しているものの、牛肉生産は同1.3%減と低調に推移し
ている。

 農家販売価格についても豚肉以外はマイナス成長となっており、唯一豚肉だけが鳥インフル
エンザによる代替需要などの影響で前年同期に比べ14.9ペソ(33円:1ペソ=2.2円)価格が
上昇して生体重1キログラム当たり65.4ペソ(144円)となっている。

  家きん部門は3.4%増加しているもののアヒル卵の生産額を除き軒並み成長率は前年同期比
で減少しており、この時期にアジア各地を中心に発生した鳥インフルエンザによる需要減少な
どが影響していると考えられる。



肉牛生産振興計画

  同国政府は年間およそ3万5千トンに相当する輸入牛肉によって低迷する国内牛肉生産を振
興することを目的とした肉牛振興計画を発表しており、この財源としては農村開発の為の政府
系金融保証機関であるケダン社(QRCGC)を通じて貸し付けられるもののほかに、フィリピン
開発銀行からの融資、米国からの食料援助資金、農業開発促進基金(ACEF)などの利用による
とされている。

  同国農務省畜産局の家畜振興担当者によると、肉牛の増頭を図るため以下のような対策を行
うとしている。

○融資事業による拠点農場整備

  同国で牛を飼養する農家のうち、93%はバックヤードファームと呼ばれる小規模農家である
 ため、繁殖経営の繁殖雌牛飼養頭数10頭未満の零細農家に純粋種のまき牛を使用する資金を貸
 し付け、15〜30頭規模の中核的経営体の育成を図る。

○出荷時体重の向上

  現在の肉用牛出荷時体重は通常300キログラム未満であるが、給与飼料の改善などにより350
 〜400キログラムでの出荷を推進する。

○育種改良による産肉能力向上

  まき牛にネローレ、ブラーマン、シンメンタールなどの品種を使用することで牛群の育種改
 良を行い生産性の向上を図る。
 
○放牧地の拡充
  
  現在12万ヘクタール以下である放牧地を57万ヘクタールまで拡大する。

  



 
【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成16年5月18日発】 

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