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2005年予算を発表 マレーシア政府は、9月10日、2005年予算を発表した。今回の予算は昨年、前マハティール首相から政 権を移譲されたアブドラ首相の初めての予算編成となった。ただし、2005年は「持続可能な成長」などの 目標を掲げる第8次マレーシアプラン(2001〜2005)の最終年となっており、基本的には従前の政策を踏 襲したものとなっている。この予算の全体額は、1,174億リンギ(3兆4,046億円:1リンギ=29円)で、 2004年の1,125億リンギ(3兆2,625億円)とほぼ同水準である。 農業は第3のエンジン 予算の中での農業の位置付けは、工業およびサービス業に続き、経済発展を推進する第3のエンジンと されている。マレーシアはヤシ油やゴムなど世界でも有数の生産を誇る農産品があるものの、その他の農 産物の開発は不十分であり、2003年の食品輸入額は139億リンギ(4,031億)に上っており、2005年につい てもこの額を減少させたいとしている。そのための取組として、農産品の商品化を進め、高品質で安全な 国際基準を満足させる競争力のある製品を作ることとし、@バイオ技術を含む技術の研究開発と農業分野 への応用、Aマレーシアを国際食品市場での加工センター化、B農業大学としての歴史をもつプトラマレ ーシア大学の農業専門家教育センター化、C農業の商業化に伴う民間企業と政府関連企業への助成基金3 億リンギ(87億円)の創設―を行うとしている。 このほか小規模経営者対策としては、技術と経営の近代化を通じて対応するとともに、生産の拡大は種 子と家畜の改良によるものとし、これには15億リンギ(435億円)を準備している。 また、2001年から政府は減税を政策の誘導策として採用しており、2005年では141事業で9億4千万リ ンギ(273億円)規模の減税を計画している。これは耕種、水産そして畜産のそれぞれの部門において、 新規の投資に対して5年間、再投資には15年間の減税期間を設定している。この措置は2005年で終了する が、その後は減税率を引き下げての実施を検討している。 ハラルハブ構想 また政府は、2005年には全世界のハラル(イスラム教にのっとり処理した)食品の需要が2兆リンギ (58兆円)になると見込んでおり、マレーシアが生産と輸出面において世界をリードしたいとしている。 養鶏関係者の厳しい評価 今回の予算に関して、畜産農家協会連合(FLFAM)の養鶏部門の責任者は、マレーシアの養鶏産業は多 くの問題を抱えており、政府の減税による政策の誘導に対しての反応は低く、目標の達成は困難である とした。これは、国内で高病原性鳥インフルエンザが発生していることに加えて密輸による鶏肉が市場 での供給過剰を引き起こしている一方で、鶏肉と鶏卵の価格は政府の厳しい監視下にあるため、十分な 利益を上げ得ないことを理由としている。このため、政策目的が正しいとしても、養鶏産業の経営者は 新たな投資を行う環境にないというものであり、政府の実効性のある政策運営を望んでいる。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成16年9月22日発】
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