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2006年の家畜疾病対策予算総額は、1億8,534万6千ユーロ 欧州委員会は11月30日、2006年の家畜疾病対策予算を承認した。EUの家畜疾病対策は、伝達性海綿 状脳症(TSE)や家畜および人間の健康に影響のあるそのほかの家畜疾病に取り組むものであり、そ の予算総額は1億8,534万6千ユーロ(266億9千万円、1ユーロ=144円)となっている。これは、2005 年予算に比べ、289万4千ユーロ(4億2千万円)の減額となっている。 全体の約7割はTSE対策 TSEの監視および撲滅対策の予算は、全体の約7割に相当する1億3,115万3千ユーロ(188億9千 万円)であり、これは、2005年予算に比べ27万8千ユーロ(4千万円)の増額となっている。内訳を見 ると、TSE検査については、同615万ユーロ(8億9千万円)増の8,830万5千ユーロ(127億2千万 円)、BSEの撲滅対策に871万ユーロ(12億5千万円)、スクレイピーの撲滅対策に3,413万8千ユー ロ(49億2千万円)となっている。 TSE検査については、24カ月齢を超えるリスクのある牛(死亡牛、緊急と畜牛、と畜前検査で臨床 症状がある牛)および30カ月齢超の通常にと畜される牛および18カ月齢超の通常にと畜される羊やヤギ などのTSE検査の実施について、各加盟国が負担した額の100%を助成するものである(付加価値税 を除く)。2006年の牛および羊でのTSE検査1件当たりの助成額の上限は、7ユーロ(1,008円)、 ヤギでの同検査では、同30ユーロ(4,320円)などとなっている。 BSE撲滅については、BSE患畜の子牛、同居牛、同一飼料を与えられた牛などをとうたした牛の 飼養者への補償として、各加盟国が負担した額の50%を助成するものである。2006年のとうたした動物 1頭当たりの助成額の上限は、500ユーロ(7万2千円)である。 また、スクレイピー撲滅については、同病撲滅のために羊、ヤギをとうたした飼養者への補償として、 各加盟国が負担した額の50%の助成および同目的のため実施した遺伝形質の分析検査に、各加盟国が負 担した額の100%を助成するものである(付加価値税を除く)。2006年のとうたした動物1頭当たりの助 成額の上限は、50ユーロ(7,200円)、遺伝形質検査の1件当たりの助成額の上限は10ユーロ(1,440円) である。 TSE以外ではブルセラ病の予算が最大 TSE対策以外の予算としては、人畜共通感染症であるサルモネラに対する予算額は、446万3千ユ ーロ(6億4千万円)となっている。TSE対策およびサルモネラ以外の家畜疾病に対しては、ブルセ ラ病や牛結核など10種類の重要な家畜疾病のモニタリングおよび撲滅対策として、535万5千ユーロ減 額され総額4,973万ユーロ(71億6千万円)が計上された。特にブルセラ病(人間のマルタ熱の原因と なる。)対策の予算が最も多く、その予算額は2,667万ユーロ(38億4千万円)となっている。 ◎EU議長国、2007〜13年の予算の枠組みを提案 EUの2005年後半の議長国であるイギリスは12月2日、2007〜13年までのEUの予算の枠組みを提案 した。 今回提案された予算では、2007〜13年までの予算総額を約8,467億ユーロ(121兆9千億円)とし、こ の予算を執行するためには、各加盟国からの分担金を国民総所得(GNI)比の1.03%としている。こ れは、前回の議長国の提案を下回り、また、欧州委員会の提案を17%下回るレベルであるとしている。 また、前回からの議論の対象となっているイギリスのEUへの財源拠出額の払い戻し措置については、 共通農業政策(CAP)の根本的な改革がない限り、同措置の基本的な変更はできないとしている。 この提案に対して、欧州委員会バローゾ委員長は、「この提案は、簡単ではあるが、現実的ではない。 これは、われわれが必要とする強い欧州のためではなく、小型欧州(Mini Europe)のためのものであ る」とコメントしている。今後、15〜16日に開催される欧州首脳会議での合意に向け、各加盟国間での 議論が進んでいくこととなる。【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成17年12月7日発】
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