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2005年の10大ニュース  ブエノスアイレス駐在員事務所【 犬塚 明伸、横打 友恵】


1.アルゼンチン、牛肉などのインフレ抑制に躍起@:国内価格の値下げに係る協定

 アルゼンチン政府は2005年、インフレを抑制するため、特に生活基本食料品のうち輸出需要が顕著で国内
への供給懸念があり、小売価格が上昇傾向にある牛肉、鶏肉、乳製品に対し多くの価格抑制策を講じてきた。

 まず3月には各関係団体と協議し、@牛肉5部位の小売価格を最低10%値引き、A丸鶏の卸売価格を2.70
ペソ(105円:1ペソ=39円、付加価値税を含まない)に値下げ、B乳製品の小売価格(牛乳を1.5%、軟質
チーズ2種類を5%など)を値引き−させる協定を結んだ。


2.アルゼンチン、牛肉などのインフレ抑制に躍起A:輸出抑制による国内価格の抑制

 アルゼンチン政府は各関係団体と前述の価格協定を結んできたが、7月には乳製品に係る輸出税を5%か
ら10または15%に引き上げた。これは乳業メーカー側が「3月の合意価格を維持することは無理である」と
したことに端を発した。続いて8月、牛肉の輸出需要と国内消費の増加に対応するため、これまで設けてい
なかった若齢去勢牛および未経産牛のと畜重量の下限を300キログラムとし、9月には牛肉枝肉価格などを
前月後半(15日間)の平均価格に維持固定させる協定を畜産関係団体および小売業界と結んだ。

 しかし11月には、輸出振興を図るために実施してきた輸出業者に対する税の還付を、牛肉や乳製品など関
税番号上200項目の食料品について停止し、さらに生鮮牛肉に対する輸出税を5%から15%に変更した。続く
12月にはスーパーマーケット業界と228品目について、15%値引きする協定を結んだが牛肉は含まれておらず、
その後政府と畜産関係団体の値下げ交渉が続いた。


3.ブラジル中西部、マットグロッソドスル州などで口蹄疫発生

 ブラジル農務省(MAPA)は10月10日、口蹄疫ワクチン接種清浄地域であるマットグロッソドスル(M
S)州南部のエルドラド郡において口蹄疫(血清型O)発生が確認されたことを公表した。国際獣疫事務局
(OIE)はこれを受け、MS州に与えていたワクチン接種清浄地域のステータスを9月30日から保留して
いる。

 このような中MAPAは10月26日、口蹄疫発生地域に対し3千300万レアル(約17億1千600万円:1レア
ル=52円)を補償金などとして投入することを発表している。

 なお12月6日にはパラナ州においても1件の口蹄疫発生が確認され、12月13日現在、全部で33件となった。


4.アルゼンチン、OIEの口蹄疫に関する国際衛生ステータスを回復
 
  アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)は1月18日、国際獣疫事務局(OIE)の動物疾病科学委
員会が、2003年9月に北部のサルタ州において発生した口蹄疫のため、南緯42度以北に対して保留していた
口蹄疫ワクチン接種清浄地域のステータス回復を承認したと発表した。なおステータスの回復は、1月19日
から有効となっている前。


5.ブラジル、遺伝子組み換え体の解禁に向けバイオ安全法が成立

 ブラジル連邦議会下院は3月2日、遺伝子組み換え体(GMO)に関連したすべての活動に係る安全規定
および監視の仕組みを定めたバイオ安全法案を可決した。本法案は2003年10月から審議され2004年2月に下
院を通過し、同年10月に修正された法案が上院で可決されたため、再び下院で審議されていた。

 なお3月24日に大統領がいくつかの条項を拒否して署名し同月28日公布されている。またその施行規則で
ある大統領令は第5591号として11月22日に制定された。


6.チリ、自由貿易協定(FTA)を拡大

 チリは7月18日、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイの太平洋4カ国(P4)と「戦略的経済連
携協定(Trans-Pacific SEP)」に署名し(2006年1月1日発効予定)、さらに11月18日にはアジア太平
洋経済協力会議(APEC)に出席していたチリのラゴス大統領は、中国の胡錦濤国家主席とFTAに調印
した(2006年中発効予定)。

 またチリは11月15日、米国がチリ産牛肉・羊肉・豚肉の輸入を許可したことを、米国農務省食品安全検査
局(USDA/FSIS)から通報されたと発表した。2004年1月から実行している両国のFTAにおいて、
チリが輸出する場合、牛肉では関税割当(2004年1,000トン、2005年1,100トン)を、豚肉では無税となって
いたが衛生条件が整わず、それらをうまく活用できていなかった。


7.アラブ−メルコスル、FTAに向けた交渉開始

 5月9日、アラブおよび南米の合計34カ国の外相などがブラジリアに集まり、続く10〜11日には17カ国の
首脳が参加してアラブ諸国・南米サミットが開催された。

 このような中5月10日には、メルコスル(4カ国)および湾岸協力会議(6カ国)間で、二地域における
自由貿易などを推進するための経済協力枠組協定が結ばれ、経済、通商、技術、投資に関する合同委員会を
設置することとなった。


8.ブラジルとアルゼンチンの乳製品価格協定が決着

 ブラジル開発商工省は、アルゼンチンの輸出乳業メーカー8社と2001年2月から3年間、粉乳について価
格協定を実施してきたが、その協定期間が終了する2004年2月に12カ月間の見直し期間を設け再検討するこ
とを発表していた。

 この件について2005年2月18日、ブラジル貿易審議会(CAMEX)は決議第2号(2005年2月17日付け)
により、前回の価格協定と同じ乳業メーカー、同じ品目を対象に、有効期限を公布日から3年以内などとす
る合意内容を公布した。

 なお、ブラジルはウルグアイの輸出乳業メーカーとも同様の協定を結び、CAMEX決議第9号(同年4
月4日付け、同月5日公布)により合意内容を公布している。


9.ブラジル、初めて養鶏・養豚のコスト調査を実施

 ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)とブラジル農牧研究公社(Embrapa)は、養鶏・養豚の主
要生産州10州における生産コスト調査(固定費および変動費)を初めて実施し、その結果を9月22日に公表
した。

 なお養鶏の場合、インテグレーション下にある肉用鶏の生産について、温度などの調整システム別に、@
手動型(給餌・給水、温度調整などを人力で実施)、A自動型(給餌・給水、温度調節などを機械・動力を
用いて実施)、B全天候型(給餌・給水、温度・湿度調整などを全自動で実施)の3つのタイプに分け調査
している。


10.アルゼンチン食品表示マークを創設

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は5月19日、国内で生産・製造される食品について、@品
質の向上、A市場における位置付けの確立、B製品の生産、製造、加工段階における差別化−などを図るた
め決議第392/05号を制定し、「自然の選択、アルゼンチン食品」という表示マークおよび「アルゼンチン食
品賞」を創設した。


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