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2005年の10大ニュース       シドニー駐在員事務所【井上 敦司、横田 徹】


1.肉牛市場取引価格、過去最高水準に(豪州)
 
  豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が発表した肉牛市場取引価格によると、7月19日の東部地区若齢
牛指標価格(EYCI)は、キログラム当たり404豪セント(372円:1豪セント=0.92円)と2004年9月
に記録した同398豪セント(366円)を上回る過去最高水準の高値となった。この要因についてMLAは、
肉牛供給頭数の減少と高まる肉牛需要を挙げている。また、MLAは7月11日、2004/05年度(7〜6月)
の牛肉輸出量(船積みベース)を前年度比10%増の94万8千トンと発表した。これは、2000/01年度の95
万9千トンに次ぐ実績となる。仕向け別では、日本、米国、韓国の3カ国で輸出量全体の92%を占めた。


2.フィードロット飼養頭数、記録更新続く(豪州)
 
  豪州フィードロット協会(ALFA)は7月27日、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)との共同調査
による四半期ごとの全国フィードロット飼養頭数調査結果を発表した。これによると、2005年6月末時点
の総飼養頭数は87万9千頭と、前回調査(2005年3月末)に引き続き過去最高の飼養頭数を記録した。
  また、フィードロットの収容可能頭数は、全体で102万9千頭と初めて100万頭台を突破し、稼働率も前
回調査に引き続き85%の高水準を維持するなど全体的に好調な結果となった。飼養頭数増加の要因につい
てALFAは、通常の季節的要因と併せ国内外の需要が依然として高かったことを挙げている。


3.NLIS、7月1日から全国的に義務化実施(豪州)
 
  豪州では7月1日から、電子耳標を利用した牛の個体識別制度である全国家畜個体識別制度(NLIS)
が、全国的に義務化された。これにより、いくつかの例外措置があるものの、農場から移動するすべての
牛にNLISのタグが装着されるとともに、家畜市場やと畜場では、そのタグを読み取る機器の導入が図
られ、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が管理するNLISのデータベースに移動履歴が記録される
こととなった。NLISの全国的な義務化は、2002年にビクトリア州で初めて実施されて以来、その経費
負担や既存のテールタグの取扱方法など、さまざまな問題について議論がなされ、ようやく実現の運びと
なった。


4.豪州・NZとも活発化するFTA交渉
 
  豪州、ニュージーランド(NZ)両国では、今年に入り自由貿易協定(FTA)に関する動きが活発化
してきている。両国とも、2月に東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国とFTA交渉を開始したが、
豪州政府は3月に入り、中国とのFTAの実現に向けての研究会の結果取りまとめを4月に行うと発表、
さらに、アラブ首長国連邦とのFTA交渉を開始すると発表した。豪州から中国への輸出額は、過去10年
間で4倍に伸びており、畜産分野では、乳製品、生体牛の輸出が目立っている。一方、NZ政府も、マレ
ーシアとのFTA交渉に向けた予備調査の結果を発表し、次の段階へと進みつつある。


5.NZフォンテラ、生産者の株取得義務をより柔軟化
 
  ニュージーランド農林業省は、同省発行のニュージーランド(NZ)の農業および林業の現状と将来展望
(SONZAF)2005年版の中で、NZの巨大乳業メーカーであるフォンテラの資本構成の見直しやNZ
の乳業動向などについて新たな政策方針を打ち出した。これによると、フォンテラは生産者からの生乳の
確保を容易化するため、生産者の株取得義務の緩和や生乳生産ピーク時対策として価格政策を導入するこ
となどとしている。NZ農林業省は、2006年6月からの実施を予定している。


6.肉牛取引課徴金の引き上げが決定(豪州)
 
  豪州連邦政府は9月8日、豪州産牛肉の輸出競争力強化を目的に牛肉産業資金拠出運営委員会(BIF
SC)から申請のあった肉牛取引課徴金の引き上げについて、2006年1月から1頭当たり5豪ドル(460
円:1豪ドル=92円)に引き上げることでの実施を承認した。承認に際し連邦政府のマクゴーラン農相
は、BIFSCが実施した課徴金引き上げの賛否を問う投票率の低さを問題としたものの、最終的には大
多数の意見を反映しているとのコメントを発表し、引き上げの正当性を訴えた。なお、承認の条件として
連邦政府は、2010年末に再度、課徴金額の見直しを求めており、これが行われない場合、現行水準に再び
戻すことを言及している。


7.豪州政府、米国向け牛肉の関税割当枠配分方法を変更
 
  豪州連邦政府のマクゴーラン農相は8月3日、米国向け牛肉輸出に関する関税割当数量分の配分方法に
ついて、過去の実績を基礎とするものから先着順にするとの変更を発表した。過去、豪州の米国向け牛肉
輸出について関税割当枠に達したのは、2001年と2002年の2カ年にしかすぎない。同農相は、すべての牛
肉輸出業者に輸出機会を与えることによって輸出量の増加を図ることが目的としている。しかし、早くも
業界からは、新たな配分方法は、過去の実績に基づかず、米国への輸出意欲が減退する恐れがあるとの懸
念も出ている。この新しいシステムの変更については、2006年1月からの実施を予定している。


8.2005/06年度の生産予測、牛肉、乳製品で明暗(豪州)
 
  豪州農業資源経済局(ABARE)は9月19日、最新の第一次産品生産予測を発表した。この中で2005
/06年度の牛肉生産について、豪州国内での牛群再構築に伴うと畜頭数の減少から生産量は前年度を下回
り、また、主要輸出国での米国産牛肉の輸入再開などが影響し、肉牛市場取引価格、輸出単価ともに下落
に転じるとみている。一方、乳製品については、2002/03年度の干ばつの影響から回復が進むことで生乳
生産は増加するとみており、また、世界的な需要は鈍化するものの、全体的な供給量の停滞により価格は
高水準での推移が予想され、豪州の酪農産業は好調を維持できると報告している。


9.豪州連邦政府委員会、豚肉産業に関する報告書を公表

 豪州連邦政府の経済政策諮問機関である生産性委員会は8月17日、豪州の豚肉生産および産業に関する
報告書「豪州の豚肉産業」を公表した。報告書では、豪州の豚肉産業について、引き続き深刻な構造改革
に直面することは避けられず、さらなる努力が必要としている。一方、同日付けで連邦政府のマクゴーラ
ン農相は、豚肉産業が直面する課題として生産コスト上昇などの問題を認識しているとした上で、連邦政
府は直接、間接的に豚肉産業に対する支援を行っており、豚肉産業は自助努力で問題を克服できると信じ
ているとして、追加支援の必要性を感じていないとの政府見解を発表した。


10.豪州の牛乳消費、カフェ文化の浸透などで回復

 デイリー・オーストラリア(DA)は9月29日、2004/05年度の国内の牛乳消費量について、初めて200
万キロリットル台に達したことを発表した。また、国民1人当たりの年間消費量も100リットル台に回復
し、前年度比1.5%の増加となった。DAでは、牛乳消費が回復した要因の一つとして、豪州に深く浸透
しつつある「カフェ文化」を挙げており、カフェと呼ばれるコーヒーショップで提供される牛乳を用いた
カフェオレやカプチーノなどの消費の増加が、牛乳全体の消費量を押し上げたと分析している。また、朝
食スタイルの変化や機能性牛乳の投入もこれを後押ししたとみている。



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