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2005年の10大ニュース  ワシントン駐在員事務所【犬飼 史郎、唐澤 哲也】


1.北米産牛肉の対日輸出再開(米、カナダ)   カナダ産牛肉については2003年5月20日、米国産牛肉については同年12月23日にそれぞれにおいて BSEの発生が確認されたことから、日本への輸出が停止していたが、本年12月12日の両国政府との 牛肉などの輸入条件合意を踏まえ、一定の条件で管理された米・カナダ両国産の牛肉および牛肉製品 の日本向け輸出が再開されることとなった。ジョハンズ米農務長官は同日、本件が農務長官就任以来 の最優先事項であったとし、当該決定を賞賛する声明を公表した。 2.米・中米自由貿易協定の発効  ブッシュ米大統領は8月2日、米・中米自由貿易協定(CAFTA−DR)実施法に署名を行い、 同協定が発効した。しかし、同協定の承認をめぐっては国内農業者団体において賛否両論に分かれた のみならず、6月30日に行われた米上院の信認投票でも賛成54票、反対45票と近年締結された貿易協 定の中で最も僅差の結果となり、同協定を取り巻く状況の厳しさを印象付けた。 3.米国産牛でのBSEの発生   米国農務省は6月24日、2004年11月のスクリーニング検査で陽性となり、確定診断の結果陰性とさ れた牛について再検査を実施した結果、BSE陽性との最終結果を得たことを公表した。当該牛は、 その後の疫学的調査の実施によりテキサス州で生産されたものと特定され、米国初の土着のBSE症 例となった。 4.カナダ産生体牛をめぐる動き(米、カナダ)    米国農務省は7月14日、30カ月齢未満のカナダ産生体牛の輸入を再開するための措置を公表した上 で同18日、同国からの生体牛の輸入を条件付きで再開した。この再開をめぐっては、本年初めUSD Aが公表した本件に係る最終規則の実施について、米国牧場主・肉用牛生産者行動法律財団(R-Ca lf)がモンタナ連邦地裁に同規則の差し止めの申請を行い、その後、USDAがカリフォルニア連 邦控訴裁に同地裁の仮処分決定を不服として控訴するなど複雑な司法上の争いが繰り広げられた。 5.相次ぐハリケーンの影響を受けた米国農業  本年、米国は記録的なハリケーンによる被害を受けた。特に8月下旬に米南部を襲ったカトリーナ による被害は甚大で、当地における物流の拠点であり、多くの輸出用大型穀物倉庫を擁するルイジア ナ州ニューオリンズ周辺地域では、港湾機能が1週間程度停止するなど穀物産業に対しても多大な影 響を及ぼした。カトリーナによる農産物損害額は8億8,200万ドル(1,067億2千万円:1ドル=121 円)、うち畜産物に対する損害額は2,600万ドル(31億5千万円)と試算された。 6.米国連邦控訴審、食肉パッカーの牛肉販売合意を合法と判断   米国連邦控訴裁判所における陪審団は8月16日、タイソン生鮮食肉会社が、肥育牛の調達において 実施している食肉パッカーと肉牛生産者とが交わす販売合意に基づく取引が米国における肥育牛価格 を不当に操作しているなどとする訴訟について、先に連邦地裁が下した決定を支持し、同社の販売合 意は合法であるとの判決を満場一致で下した。 7.米国連邦最高裁、牛肉チェックオフ制度支持の裁定  米国連邦最高裁判所は5月23日、肉牛生産者牛肉振興調査ボード(CBB)が、肉牛生産者などか ら販売時に生体1頭当たり1ドルを賦課金として徴収した原資を基に制度の運営を行っており、牛肉 関連団体などに対し牛肉の販売促進、調査・研究および各種の情報活動を行うための資金を提供して いる牛肉チェックオフ制度に対するサウスダコタ連邦地裁および第8連邦控訴裁の制度違憲判決を支 持しないとする裁定を下した。 8.米国、新たな食生活ガイドラインを公表  ベネマン米農務長官とトンプソン米保健社会福祉長官は1月12日、「国民のための食生活ガイドラ イン(2005年版)」を公表した。今回公表された第6次の改訂版は、国民の約3分の2が体重過多ま たは肥満であり、約半数が運動不足であるとの実態を踏まえ、摂取カロリーの低減と運動量の増加に 主眼を置くものとなっている。 9.米国、高病原性鳥インフルエンザ対策予算を要求   米国農務省は11月1日、鳥インフルエンザまん延の制御のための国際的、国内的な役割を強化する ため、高病原性鳥インフルエンザ対策予算として9,100万ドル(110億1千万円:1ドル=121円)の 追加予算を要求したことを明らかにした。この予算要求は、ブッシュ大統領が先に公表した総額71億 ドル(8,591億円)の世界的なインフルエンザの流行に伴う危機に対する全国防衛対策の一環である。 10.日墨経済連携協定の発効(メキシコ)   既に米国やEUなどと経済連携協定(EPA)を締結しているメキシコは本年4月1日、日本との EPAを発効した。本協定は、日本にとって農業分野を含む初の本格的なEPA締結でもあり、畜産 分野においては豚肉、牛肉、鶏肉の3品目において関税の削減などを実施した広範囲なものである。 メキシコでは本協定を踏まえ、多くの農産物輸出が増加しているところであるが、特に牛肉について は日本の牛肉需要のひっ迫を背景に、4〜10月の日本向け牛肉輸出量は、前年比312%増の4,734トン と増加傾向が顕著である。

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