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2005年度畜産開発計画を公表(タイ)


2005年度畜産開発計画

  タイ農業協同組合省畜産開発局(DLD)局長は12月、2005年度(タイでの予算年度は10月1日〜9月
30日)畜産開発計画を公表し、下記の3項目に対し重点的に対策を行うとした。内容は次のとおり。

1 行政組織の再編

 中央政府はより一層政策立案に注力し、各県の行政機関ごとに郡単位で地方事務所を設け、地方獣医事
務所単位で各地域のリサーチや実績評価のためのフォローアップを自ら行うことを検討する。これにより
地域毎の特定品目の生産性を強化する。なお鳥インフルエンザ重点対策のため、現畜産局長を鳥インフル
エンザ対策専門とし、2人の局次長が食品安全性強化対策や酪農振興などその他の対策を分掌することと
された。

2 国際競争力の強化

 各国とのFTA協議の進展により国内生産者は現在以上に品質や安全性の面で競合を強いられることと
なる。現在DLDは、チュラロンコン大学と共同で国内生産者および全国4,000カ所に及ぶと畜場の登録
制度を推進しており、毎年、適正製造基準(GMP)やHACCP、ハラル(イスラム教の教義に沿った
食品処理)などの認証に関する品質評価を行うこととしている。
 
  鳥インフルエンザ対策として行政組織再編により、中央政府は周辺各国との連絡体制の整備と対策立案
能力の強化を図るとしている。地方政府段階では関係機関の連絡体制を密にして特定生産地域ごとの区分
化(*)に対応するとしている。

3 人材育成

  酪農振興対策としては、現在酪農に従事している農家に対し15日間の人工授精講習会を開催し生産段階
の技術レベル向上を図るとしているほか、従来から計画が出されながら、採算性の問題などで実現が見送
られている粉乳生産工場建設計画が挙げられている。

  貧困の削減として南部3県へは、これら地域に住むイスラム系住民の間で嗜好性が高く牛乳に比べ高値
で取引されるヤギ乳生産を振興することにより地域経済基盤の安定を目指し社会不安の軽減につなげたい
としている。

  その他、稲作から飼料用草地への転換のための実証展示計画、国境周辺各県での畜産振興計画などが挙
げられている。



開発計画における畜産分野の評価

  また、DLDは同月、内閣直属機関である国家社会経済開発委員会が規定した第9次国家社会経済開発
計画(2002〜2006年度)の中で畜産分野の中間評価を行い、畜産物の輸出に関しては、アセアン地域内各
国に比べ畜産、特にブロイラーや豚肉などの輸出余力が高いとし、関連して周辺国への育種用素畜(ひな)
や精液の輸出拡大が期待できるとされた。
 
  なお輸出振興に関しては12月21日に産業省・農業協同組合省、保健省の3省が、輸出食品検査を統合し
て行う新たな検査施設の承認に関し合意しており、従来の省ごとの重複する検査によるコスト増加を削減
できるとしている。

 食肉の国内消費に関しては先進国に比べ低水準となっており、消費拡大策が必要であるとしている。

  生産効率向上のためには育種改良・経営管理・疾病対策・生産者認定制度などの分野でより一層の政府
と民間の協力が必要であるとした。
 
  多くを輸入に頼っている畜産物の生産振興についても今後の検討に加えるべきとした。
 
  また、中東地域での鶏肉、ヤギ肉の需要にみられる、ハラル製品市場の開拓についても検討すべきとさ
れた。

 畜産分野での問題点としては常在する口蹄疫問題、生産段階での安全性確保、大豆かす、魚粉、トウモ
ロコシなど主要な飼料原料の輸入依存体質などが挙げられる。そのほか近年牛肉などで高まりつつある高
品質な畜産品への国内需要への対応も課題とされている。


*区分化:コンパートメンタライゼーション。生産から加工・流通までの全ての段階で疾病伝達因子(鳥
          インフルエンザウイルスなど)から隔離することを可能とするため、生産段階ではウインドウ
          レス鶏舎化による外界との隔離、流通・加工段階では一定範囲の生産地毎に施設を区分し、危
          害分散を図る。タイでは現在、国内を5カ所の生産地域に区分し、生産地域毎にもいくつかの
          生産団地に区分することで区分化を達成するとしている。




【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成17年1月12日発】 

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