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干ばつなどの影響で農業生産に打撃(フィリピン)


過去4年で最低の成長率 

  フィリピン農務省農業統計局(BAS)は5月12日、2005年第1四半期の農業統計を公表した。農業部門全体
では、昨年11月前後に起きた干ばつや台風による被害と、その影響による第1四半期の作付けが遅れたことなど
の影響により、成長率は前年同期比0.6%と過去4年の中では最も低い値となった。

 全体成長率を下げている主な要因として、農業生産額の約半分を占める作物部門が気候不順により不調であっ
たことが挙げられる。特に、マレー半島の各国を含む広範囲の地域で発生した干ばつの影響が大きいとされる。
同国では近年、改良種子の導入や作付面積の拡大などによりトウモロコシの生産拡大に力を入れているが、第1
四半期の生産量は前年同期比18.4%減の125万トンにとどまっており、同13%増を記録した昨年とは対照的であ
る。

 トウモロコシと並んで同国で生産量の多い米については前年同期比1.5%減の338万トンで、同様に昨年同期の
13%増からは落ち込んでいるものの、かんがい施設整備の進展などにより比較的軽い被害にとどまっている。

 作物部門はこの時期、ココナッツやバナナなど、一部の品目を除いて大部分の生産量が減少している。

 また、農業生産額の約2割を占める水産部門は、昨年に比べて成長率が下がったとはいえ相変わらず好調で、
前年同期比6%の増加となっている。


明暗の分かれた畜産部門

 家きん部門を併せた畜産部門の農業生産額全体に占める割合は3割弱で、この時期、反すう家畜と養豚部門
ではともにマイナス成長になる一方、養鶏・養鴨など家きん部門の好調が目立っている。

 家きんを除く畜産部門全体の生産額は前年同期比2.4%減と低迷しており、ヤギ肉と乳製品生産が前年同期に
比べ増加しているものの、同国で消費の多い豚肉が同2.0%減、牛肉生産は同6.4%減となるなど低調に推移し
ている。

 一方これとは対照的に家きん部門の生産額は全体で7.5%増加しており、特に鶏卵と鶏肉生産は好調でそれぞ
れ生産額は前年同期比9.3%、7.7%の成長率を示し、生産量では鶏卵が同6,520トン増加の約7万7千トン、鶏
肉が同2万3,830トン増加の約33万5千トンとなっている。昨年の同時期はアジア各地を中心に鳥インフルエン
ザが発生した影響によって需要が減少したことなどから家きん部門の成長率は全体で2.6%にとどまった。



畜産物価格は全般的に上昇

 またこの時期、畜産物の農家販売価格は軒並み高騰しており、特に生産量が減少している豚、牛・水牛の価
格の上昇が大きく、豚がキログラム当たり73.3ペソ(144円:1ペソ=1.97円)で前年同期比12.2%増加し、牛
が同65.4ペソ(129円:同28.9%増)、水牛が同49.4ペソ(97円:同32.7%増)などとなっている。

 一方生産が好調な鶏卵、鶏肉でも、鶏卵がキログラム当たり72.9ペソ(144円:同9.3%増)、鶏肉が同77.2
ペソ(152円:同8.3%増)とかなりの程度値上がりしている。

 首都マニラ市内の5月中旬の畜産物小売価格(インフレ補正なし)を昨年同時期と比較した場合、牛肉(ラ
ンプ)がキログラム当たり平均10ペソ上昇し200ペソ(394)円、以下同じく豚肉(ハム)が昨年と同じ140ペソ
(276円:ただし最高値及び最低値は共に上昇)、鶏肉が10ペソ低下して100ペソ(197円)、鶏卵1個当たり
0.1ペソ上昇して3.3ペソ(6.5円)で、鶏肉以外はおおむね値上がり傾向となっている。

 なおフィリピン統計局(NSO)が発表した2000年を基準とした4月の消費者物価指数(CPI)は、食品が
前年同月比で7.1%上昇、全体で8.5%の上昇となっている。




【シンガポール駐在員 木田 秀一郎 平成17年5月24日発】

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