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順調に推移するヤギ生産 フィリピンのヤギの飼養頭数は、2005年1月現在で、前年比5.3%増の354万頭となっており、2004年 の同2.7%増を大きく上回り、順調な伸びを示している。これに伴うヤギ肉の生産は、生体重ベースで、 2003年の7万3千トンが2004年では7万5千トンと増加している。 この背景には、ヤギ肉価格が高値で安定して推移したことと、政府の生産振興策が一定の効果を上げ ているためとされている。 また、政府は、ヤギ肉を牛肉や鶏肉などとともにハラル製品としてイスラム諸国への輸出を視野に入 れた構想を進めている。 ヤギ価格は高値で推移 ヤギの農家販売価格の推移を見ると、2003年の平均がキログラム当たり59ペソ(124円:1ペソ=2.1 円)、2004年は大幅に上昇して67ペソ(141円)となっている。なお、牛の2003年の農家販売価格は同 52ペソ(109円)、2004年は同59ペソ(124円)となっており、ヤギよりも供給の多い牛に比べて高価格 となっている。 その一方で、生産コストが政府の試算では生体キログラム当たり43ペソ(90円)とされており、飼養 農家に十分な利益が見込めるとし、政府は貧困対策の一環としてヤギの飼養を推進している。 なお、同国ではヤギは一般に、「貧しい者の雌牛」とも呼ばれ、ヤギ乳は牛乳に対して安価であり、 主に農村部で飲用されているとしている。 生産率の改善などが課題 近年、商業的なヤギの多頭飼養形態も増えているものの、政府の統計によれば、飼養されるヤギの99 %は農家の庭先での飼養となっている。 このため、家畜衛生や飼料栄養への配慮などが不十分な条件下での飼養となる場合が多く、疾病など により、発育不全やへい死が多く発生しているとされている。 このため、政府は、生産率の向上と枝肉重量の増加などを主眼としたプロジェクトを実施し、貧困農 家の所得対策とするとともに食肉供給の増加につなげようとしている。 ヤギ生産振興対策の事例 9月中旬、同国の環境天然資源局(DENR)は、ルソン島南部のカマリネス州のシガモト地区での ヤギ生産振興プロジェクトの事例を紹介した。 それによると、DENR、フィリピン環境協会(PFEC)、比独開発基金(PGF)の指導の下、 723ヘクタールの林野でプロジェクトが行われ、ヤギ生産が順調に行われているとされている。 このプロジェクトは2004年9月にPGFの基金18万1千ペソ(38万円)を原資に開始された。10戸の 農家が選抜され、50頭の雌ヤギと5頭の雄ヤギが農家に分配され、約1年後の8月初旬に子ヤギが71頭 増加しており、プロジェクトが順調に推移していることが確認された。 ただし、参加者はヤギ用の小屋、清浄な飲用水などの準備のほか、飼養管理とその記録を行うなどの 条件を付けられた。一方、PGFは繁殖用のヤギのほかに寄生虫駆除剤、ビタミン剤などの獣医薬や飼 料添加物などの提供を行っている。 このプロジェクトは、辺境地域での住民が環境とのバランスの上で持続的な収入を確保することのほ か、モデル展示として他の農家への普及を目的に実施されている。【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成17年10月27日発】
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