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2005/06年度の主要穀物生産状況調査を発表(ブラジル)


作付面積は8年ぶりに減少

 ブラジル農務省は11月3日、管轄下にある国家食糧供給公社(CONAB)が10月17〜21日に実施し
た2005/06年度第1回主要穀物生産状況調査の結果を発表した。調査対象地域は、中西部、南東部、南部、
北東部のうちバイア・マラニョン・ピアウイの各州、北部のトカンチンス州を対象とし、地元農協、公
共・民間の諸機関および約2,400人の生産者から作付けの意向を聴取したものである。

 なお、生産状況調査は、一農年期の作付けから収穫に至る間に5〜6回程度実施され、第1回調査は
当該農年度の生産状況を推測する上で基礎となる。

 調査結果によると作付面積は前年度の 4,888万へクタールより3.4〜5.7%減少する4,608〜4,721万へ
クタールと予測され、97/98年度以降増加してきた面積が久しぶりに前年度を下回る予測となった。これ
は生産資材価格の上昇※、レアル高ドル安による輸出作物、特に大豆の収益の低下などが原因と分析さ
れている(※:CONABは具体的に記述していないが、おそらく石油価格の上昇に伴い価格が上昇した
化学肥料などを指すと思われる)。


生産量は増加を期待

  一方生産量は、前年度の1億1,350万トンを7.1〜10.0%上回る1億2,153万トン〜1億2,485万トンが
期待されている。これは作付時期において、例年並みに降雨があり天候に恵まれたため作付けが順調に
行われ、かつ1へクタール当たり生産量が長期の乾燥被害を受けた前年度を大きく上回る可能性から見
込まれている。

 ただし、調査時点において作付作物の選定をまだ行っていない農家があったことや、例年の予測と同
様、異常気象の可能性の有無、来年に作付けを開始する第2期作(冬期作)の作付面積を2004/05年度と
同じ数値としていること、さらには1へクタール当たり生産量を長期乾燥の影響があった前年度よりも
多く見積もっていることなど不確定要素が多いため、あくまで期待値と言えよう。


作付面積はトウモロコシで増加、大豆で減少

 近年、大豆の国際取引が盛んであったことからブラジルでは、トウモロコシなどの作付けを減らし大
豆面積を増やしてきた。この傾向は前年度も同様で、かつ南部地方の長期乾燥で大きな被害を受けたト
ウモロコシは、かなり大幅な減産となっていた。

 しかし今年度は大豆およびトウモロコシの作付け前に、米国産大豆の生育が順調との予測がなされた
ため国際価格が下落傾向で推移し、かつ前述のとおり生産資材価格の上昇による生産コストの増加、大
豆連作の限界による作物転換の必要性、そしてトウモロコシ価格上昇の見通し(CONABの見通し根
拠の記述なし)から、第1期作トウモロコシの作付面積は、前年度の902万ヘクタールから34〜54万ヘク
タール増の936〜956万ヘクタールと見込まれた。

 一方大豆の作付面積は、前年度の2,330万ヘクタールから112〜182万ヘクタール減の2,148〜2,218万
ヘクタールと予測された。主要穀物の全作付面積は166〜279万ヘクタール減少し、大豆のほかは綿実と
米が合計約80〜100万ヘクタール減少していることから一概には言えないが、単純に見て大豆減少分の
約3割がトウモロコシ増加に貢献したことになる。

 なおトウモロコシ主要生産地帯の南部地方を中心に良好な気象条件が予想されており、第1期作と第
2期作を合わせた生産量は前年度3,498万トンを15.8〜18.2%上回る4,051〜4,135万トンと見込んでい
る。これによってCONABは、「トウモロコシの生産が予測通りになった場合、2005/06年度の期末
在庫(2007年1月末)は 、前年度の330万トンから380万トンになる。しかしトウモロコシ消費の65%
を占める鶏、豚、乳牛の家畜飼料としての需要量見通しにより、今後期末在庫量は変更され得る」とし
ている(筆者補足:CONABはトウモロコシの全消費量を2004/05年度が3,910万トン、2005/06年度
を4,000万トンとしており、各々1カ月平均326万トン、333万トンが必要となる)。


◎米州首脳会議、アルゼンチンで開催

  11月4〜5日、アルゼンチンのマルデルプラタ市において、キューバを除く米州34カ国の首脳が集ま
り米州首脳会議が開催された。注目された1つのテーマとして、米州自由貿易地域(FTAA)に関す
る交渉再開があったが、メルコスル4カ国とベネズエラが交渉再開に合意しないまま終わったことは、
既に報じられているとおりである。なおメキシコのフォックス大統領はFTAAの交渉再開を強く望ん
でいたようで、帰国時の記者インタビューに対し「アルゼンチンはホスト国として、サミットの成功に
責任があった」と不満を述べている。

 なお記述的な分量はかなり少ないが、飢餓の撲滅、食料の安全確保のほか、エイズ・SARS・マラ
リア・結核・鳥インフルエンザなどに対処するための協力と情報交換の推進、さらに鳥インフルエンザ
のような世界的な疫病に対する国家予防計画の策定促進などもマルデルプラタ宣言に盛り込まれている。


 
【ブエノスアイレス駐在員 犬塚明伸 平成17年11月9日発】 

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