ALIC/WEEKLY
APECでのAI対策 11月中旬に韓国で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、関係国の喫緊の課題とし ているテロ対策や貿易問題のほかに世界的な広がりを見せている鳥インフルエンザ(AI)の人への感 染に備えて対応方針が取りまとめられた。 この対応方針は個別国と各国共同での対応とに区分され、個別国の対応としては、@来年11月までに 対応計画の策定と実施、A人への感染に関する監視体制などの強化、Bワクチンなど薬剤の開発と供給 体制の支援−などで、各国共同では、@公衆衛生・災害管理専門家リストの作成による早期対応の強化、 A渡航者に関する情報交換、B来年初頭に模擬訓練を実施−などとなっている。 アセアン加盟国の多くがAPECのメンバーでもあり、特にベトナム、タイそしてインドネシアなど で感染者の死亡が報告されるとともに、大量の家きんを処分し、畜産のみならず、社会的にも大きな影 響が出ている。また、マレーシアやフィリピンでは発生が確認された後、終息した状態が継続している ものの、渡り鳥などへの警戒を強化している。 アセアン各国のAIの状況 今回のAPECに先立ち、9月末にアセアン農相会議が開催され、AIに対する地域連携などが討議 されたが、各国の最近におけるAIに関する状況は、次のとおりとなっている。 ○タイ 今年の4月以降6月まで小康状態が継続したものの、7月に入って再び発生報告がなされるようにな った。これはAI発生の第三波とされている。10月末時点では34県が当局の監視下に置かれ、11月上旬 には11の県での発生が確認されている。そのうち10県は中央平原部となっている。 9月に今年最初の死亡者が発生し、11月にはバンコク市内で1歳の幼児が13人目の犠牲者となり、大 消費地での鶏肉消費への影響が懸念されている。 ○ベトナム 政府は8月から開始した家きんへのワクチン接種を64の県と市のうちの48に対して進めている。一方、 AIの発生は各地で散発的に継続している。これまでに42人の死亡が確認されており、発生国中でも最 悪となっている。 政府は都市部における家きんの取引を禁止するなどの追加措置を採っている。 ○インドネシア 今年7月に初めてAIでの死亡者が確認され、11月中旬までに7人の死亡が確認されている。同国 はAIに対しては早期から家きんへのワクチンの接種を行っている。大規模な発生は報告されてない が、人への感染は深刻化している。 ○フィリピン 今年7月に弱毒性のAIウイルスの検出が報告され、日本などへの鶏肉輸出が停止された。その後 のAI発生の報告はないものの、同国には多くの渡り鳥の休息地があり、監視体制の強化を図るとさ れている。日本への鶏肉輸出に関しては防疫体制の確認中で、再開には至っていない。 ○マレーシア 昨年8月にAIの発生が確認されたが、今年の1月に政府は終息したと発表した。その後、新たな 発生の報告はなされていないが、野鳥の監視が強化されている。 ○シンガポール 現在までAIの発生は確認されていない。11月時点で、インドネシアとAIの監視や急激な感染拡 大に対する早期対応計画の策定を進めている。2004年には、有事を想定して5千羽の鶏を処分する訓 練を行った。 ○ブルネイ 現在までAIの発生は確認されていない。 ○ミャンマー 現在までAIの発生は確認されていない。 ○カンボジア 今年の3月以降、AIの発生は報告されていないが、これまでに4人の死亡が確認されている。 ○ラオス 2004年1月以降、AIの発生は報告されていない。【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成17年11月24日発】
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