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アルゼンチン農牧庁、農業生産者と和解の方向へ


牛のと畜重量制限は段階的に実行

 アルゼンチン政府はインフレを抑制するため、生活基本食料品の値下げについて、3月から各業界団体
と交渉し、3月15日に牛肉の、同17日には鶏肉の、そして同22日には乳製品の小売価格を下げることで合
意した(「畜産の情報 海外編」2005年5月号p21〜22参照)。

  その後アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)は対策の一環として、牛肉の輸出需要と国内消費の
zoukani対応するため、これまで設定されていなかった若齢去勢牛および未経産牛のと畜生体重量の下限
を300キログラムなどと定めた決議第645/2005号を8月24日に制定し、11月1日から180日間実施すること
とした。しかし、生産者団体などからは強い非難の声が上がっていた(本紙通巻第687号参照)。

  そこでSAGPyAは、同決議実施まで1カ月を切った10月5日、決議第729/2005号(2005年10月4日
付け)を公布し、11月1日からと畜を制限する生体重量を260キログラム以下に修正することを決定した。

  SAGPyAは変更理由について新決議の前文で、@家畜のと畜重量を増加させるためには、家畜をよ
り長期に農場に保留することになるが、生産面で計画しても現時点では入手できない飼料を追加利用する
必要が生ずること、A期待される重量増加を達成するために、必要な期間が勘案されるべきであること、
Bこのと畜禁止の暫定措置は、家畜1頭当たり300キログラムに達するまで段階的に実施することにより、
当初の目的がより効率的に達成されると考えられること−を挙げている。

  なお新決議の具体的内容としては、ほ乳子牛および子牛のと畜停止は変更せず、生体重量制限について
以下のように変更し、当制度のソフトランディングを図ったものとなっている。

11月1日〜 300キログラム以下のもの
                  →11月1日〜 260キログラム以下のもの
                    12月15日〜 280キログラム以下のもの
                    1月31日〜 300キログラム以下のもの

  一方アルゼンチン農牧協会(SRA)などはプレスリリースにおいて、9月27日に会合を持ってから10
日もしないうちに決議が公布されたことを批判しつつ、「消費と輸出の増加に対する唯一の方法は生産の
増加である。そしてその目的の達成は、国家畜産計画の枠組みの中で模索すべきであり、軽量級の家畜の
一時的なと畜禁止では目的を達成できない」と、国家畜産計画の不在を継続して非難している。



乳製品に係る輸出税、生乳生産の増加助成に

 また前述のとおり、3月22日には乳製品の小売価格に関する協定が結ばれていたが、乳業メーカー側が
6月下旬から7月上旬にかけて「3月の合意価格を維持することは困難である」としたため、政府は「価
格を維持しないのであれば、国内供給量を増加させるため輸出税を引き上げる」とし、実際にアルゼンチ
ン経済生産省は7月22日、決議第406/2005号(7月25日公布)により、乳製品に係る輸出税の引き上げを
決定した(本紙通巻第683号参照)。

  しかし、生産者側から「輸出税の引き上げにより生乳取引価格が引き下げられ(5%下がったという報
道がある)、問題が生じている」などの声が上がっていた。

  このような中SAGPyAは「政府は乳製品の輸出税で得られた基金の使途を決定」というプレスリリ
ースを10月5日に発表した。

  これによれば、連邦乳業委員会を構成するSAGPyAと酪農生産5州の生産大臣が会談し、生産部門
や輸出部門などの意見を考慮して合意された案として、当該輸出税により創設された基金の85%を生産部
門に還元し、使途目的は搾乳や生乳の冷却保存を改善するための機械設備の導入、牧草のは種、妊娠牛の
購入または保留、インフラ整備などに対して投資した生産者に利子助成するものとなっている。また残り
の15%は、衛生計画への支援、酪農乳業部門の構造的問題の研究に充てられるとされている。

  なお、実行に際しては銀行などとの最終協議が残っていると報じており、詳細の決定は今後になる見通
しである。


なお、10月10日にブラジル農務省が公表した口蹄疫発生情報は、海外駐在員トピックス

http://lin.alic.go.jp/alic/week/2005/oct/(http:/www.alic.go.jp/livestock/repnews/repnews.html) を参照のこと。
 
 
【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成17年10月12日発】 

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