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EU近隣における鳥インフルエンザの発生を受けての欧州委員会の対応 欧州委員会は、トルコとルーマニアにおいてH5型ウイルスによる鳥インフルエンザの発生が確認 されたことを受け、両国からのすべての生きた鳥、家きん肉、家きん肉製品などのEU域内への輸入 を一時停止した(トルコは10日より、ルーマニアは13日より。なお、その後の検査で、両国の感染が H5N1型のウイルスによるものと特定された。) フードチェーン・家畜衛生常設委員会は10月14日、農場での鳥インフルエンザ拡大防止の強化策を 承認した。これは、加盟国に対し、湿地や渡り鳥の飛行経路などのリスクが高い地域において、野鳥 と家きんの接触によるリスクの低減を求めるものである。このため、各加盟国は、リスクのある地域 を特定し、野鳥から家きんを隔離するための手段を講じる必要が出てくる。今後、各加盟国は、各国 の講じる対策について11月5日までに欧州委員会に対し報告することが求められている。 鳥インフルエンザがEUに拡大の可能性 EU近隣での鳥インフルエンザ発生で欧州委員会が各種対策を協議・実施している最中の10月17日 には、加盟国のギリシャにおいて鳥インフルエンザを疑う事例が確認された。19日時点では正式なコ メントは出されていないものの、仮に、これがH5N1型ウイルスによる感染であることが確認され れば、ついにEUに感染が拡大したこととなる。 なお、欧州委員会は、鳥インフルエンザの拡大防止に努める一方、あくまで鳥インフルエンザは家 畜疾病であり、これまでのアジアでの人への感染例もヨーロッパでは通常見られない緊密な接触によ る結果であるとも説明している。同様に、欧州疾病予防管理センター(2005年設立の感染症予防の強 化を任務とするEUの機関)もH5N1型ウイルスの人への危険性は非常に低いとしている。 特別外相理事会の概要 EUの特別外相理事会が10月18日、対外政策について協議するため、ルクセンブルクで開催された。 今回議論となった4つの課題のうち一つは鳥インフルエンザに関するものであった。今回の理事会に おける決定事項の概要は次のとおりである。 ・インフルエンザは世界的な脅威となっており、国際的な協力が必要である。また、欧州委員会のト ルコとルーマニアに対する対応は評価でき、また、これら2カ国のEUに対する協力には感謝する。 ・鳥インフルエンザへの対応は、EUと発生地域が同時に対処する必要がある。このようなことから、 世界保健機関(WHO)などの国際機関や関係国が集まって対応を協議する11月7〜9日のジュネ ーブでの国連会合は意義のあるものである。 ・10月の早い段階で、EUレベルでの人および鳥でのインフルエンザに対するEUレベルでの戦略に ついて情報の共有が可能となる閣僚理事会の開催を予定できたことは評価できる。 ・各加盟国の対策が有効に機能するには、EUによる効果的な調整が重要である。そのため、欧州委 員会や理事会の専門家レベルでの各種会合の開催を歓迎する。 なお、10月20〜21日には、イギリスで非公式の保健相理事会の開催も予定されており、その会合に おいてもインフルエンザの拡大防止に関する議論が行われる予定となっている。【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成17年10月19日発】
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