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ブラジル、RS州のみGM自家増殖種子を解禁


 
天候不順の影響が大きかったRS州が対象

 ブラジル農務省は9月6日、大統領令第5534号(2005年9月6日付け、同月8日公布)により、リオ
グランデドスル(RS)州の農業生産者が2004/05年度に生産した遺伝子組み換え(GM)大豆種子を、
2005/06年度の作付けに利用することを許可したことを公表した。これによってRS州の生産者は、自
身で利用するために保有していた除草剤グリホサート耐性のGM大豆種子を利用することが許される。

 ブラジルでは、新バイオ安全法(2005年3月24日付け法第11105号、同月28日公布)が制定され、国
家バイオ安全技術委員会(CTNBio)がGM作物について肯定的な技術見解を出し、農務省などが
所要の手続きをすればGM作物の栽培や販売の可能性はある。GM大豆の場合(この場合はラウンドア
ップ・レディ大豆)、証明書付きの正規流通GM種子(以下「証明種子」)であれば、本制度に基づき
栽培が許可されかつ公的融資が受けられることになるが、アルゼンチンから流入してきた不正規種子を
自家増殖した者に対しては、融資が受けられない状況となっていた。

 よって今回、大統領令を出すに当たりロドリゲス農相は、「長期乾燥により過去数年間において最大
の被害を記録したRS州の生産現状を緩和するためのもの」であると説明している。



2006年の収穫大豆の種子利用は禁止

 しかし大統領令では、今回許可された種子による作付けで、2006年に収穫される大豆を種子として利
用してはいけないこととなっており、違反した場合には全国種子システム法(2003年8月5日付け法第
10711号)とこれを規定する2004年6月23日付け大統領令5153号、また新バイオ安全法の適用により罰
せられることになる。



民間部門、証明書付きGM大豆種子の不足が問題点と指摘

 一方現地では、「大統領令によりRS州の生産者が保有する種子の利用が再度許可されたが、2006/
07年度にも同様の措置が必要になるであろう」と、RS州農業労働者連盟(FETAG)のピニェーロ会
長の談を報じている。

 ピニェーロ会長によると、連邦政府が解禁するに至った要因は、干ばつ以外に証明種子の不足である
という。証明種子の量は、本年度作付けに必要な15%程度しかなく、来年度も必要量の50%にしか及ば
ないと思われるため、再度大統領令が必要となるであろうと話している。

 また同会長によると、現在RS州の大豆栽培面積の90%はGM大豆であり、需要を満たす量の証明種
子が準備できるのは、2007/08年度になると推測されている。よって「FETAGは2年後に証明種子
を購入するが、それ以後は同種子を増殖する権利を得て、毎年種子生産会社に依存することは避けたい」
と考えている。

 さらに会長の話によれば、「テクノロジー料(=ここではロイヤルティーの意味)は種子販売時にの
み課せられるべきものであり、2005/06年度モンサント社は証明種子キログラム当たり0.50〜0.78※
レアル、それ以外で自家増殖GM種子を利用して生産した場合は、大豆粒の販売価格に対し2%を請求
している」とのことで、制度上は栽培が解禁されたGM大豆であるが、まだ解決されない問題点は残っ
ているところである。

※ 他に0.50〜0.88レアルとの情報もある。



【ブエノスアイレス駐在員 犬塚 明伸 平成17年9月21日発】


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