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豚肉の生産量は減少、鶏肉は増加 豪州農業資源経済局(ABARE)は先般、豪州の農産物の中期需給見通しに関する報告書を発表 した。 豪州の豚肉や鶏肉産業は、牛肉産業と異なり国内向け供給が中心である。報告書によると、豚肉に ついては、国内消費量は安定的に推移するものの、生産量は徐々に減少し、輸出量も減少するが、そ の分輸入量が増加するとみている。また、鶏肉については、国内消費が好調で、生産量は増加し、輸 出量も生産量全体からみるとわずかながら、徐々に増加するとみている。 豚肉の需給状況 豚肉生産量は、2003/04年度の40万6千トンから2010/11年度には36万5千トンにまで減少すると予 測している。 豪州の豚肉産業は、飼料コストが全体のコストの50〜60%を占めている。このため、飼料価格の変 動が豚肉生産量に大きな影響を及ぼす。2004/05年度は、飼料穀物価格が高騰し、飼料コストが大幅 に上昇した。2005/06年度は、小麦などの冬穀物が豊作で飼料穀物価格が低下したことから、肉豚の 市場取引価格の回復とともに、収入の回復をもたらした。しかし、中期的にみると、世界の豚肉生産 量の増加から、飼料穀物価格の低下以上に肉豚の市場取引価格が低下し、結果的に飼料コスト負担は 増すとみている。 豚肉輸入については、近年増加傾向にある。輸入相手国はカナダやデンマークが中心であるが、検 疫制度の緩和により2004年後半には米国からの輸入も行われている。中期的に見ると、2010/11年度の 輸入量は8万4千トンと、2005/06年度の7万トンと比べると20%増加することが予測されている。 豚肉輸出量については、豪ドル高や日本やシンガポールなどの主要輸出先市場での競争の激化によ り、近年低下してきている。2005/06年度の豚肉輸出量は、4万2千トンの見込みである。中期的に見 ると、アジア市場での競争の激化から、輸出量はさらに低下すると見込まれ、2010/11年度では、3万 3千トンと2005/06年度に比べ21%低下するとみられている。 鶏肉の需給状況 2005/06年度の鶏肉生産量は、飼料穀物価格の低下により、前年度比2%増の81万トンと見込まれる。 中期的に見ると、鶏肉生産量は、堅調な国内需要や輸出需要と飼料コストの減少により増加が見込ま れ、2010/11年度には88万トンとなると予測している。鶏肉の一人当たりの年間消費量は年々増加し、 2010/11年度には2005/06年度に比べ2.6%増の39キログラムとなり、牛肉の37.8キログラムを上回ると みている。鶏肉輸出については、飼料穀物価格の低下と豪ドル高の緩和により、輸出量が増加すると 見込まれ、2010/11年度は2万8千トン(生産量全体の3.2%)になる見込みである。【シドニー駐在員 井上 敦司 平成18年3月29日発】
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