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米国農務省、新農業法フォーラムにおける意見を集約(2)


 
 米国農務省(USDA)は3月29日、同省が2005年に開催した2007年農業法に関するフォーラムで、農業
関係者から出された意見などの要約作業を完了し、4,000件以上に及ぶ意見を41の課題ごとに集約した意見
概要を公表した。
 
 今回は、当該公表された意見概要のうち、畜産に関連する以下の課題に対する主な意見について紹介する。


1.酪農政策

 ・現行の酪農政策に関しては、特に加工原料乳価格支持制度(MPSP)など、制度があまりに複雑過ぎ
  るので簡素化が必要

 ・乳価があまりに不安定であるため、支持価格を上回った場合の生産計画や資金調達が困難

 ・MPSPは、今日の市場や技術に適合するよう最新のものとする必要

 ・南東地域では、MPSPは良く機能しているが、支持水準の引き上げが必要

 ・特に、米環境保護庁(EPA)による規制や市場価格の変動を妨げるMPSPによる乳製品の買い上げ
  など、成長や革新に対する規制障壁の緩和が必要

 ・生乳所得損失契約プログラム(MILC)に対する意見は、一般的に反対の立場の米国西部の生産者と、
  継続を支持する他の地域で異なった
    □特に、西部州以外の多くの小規模な酪農家は、MILCは簡略で公正な制度であるとの意見

 ・特に、中西部の生産者から事前契約の中止といったリスクマネージメント措置の要望があった一方、南
  西部では、事前契約は不要との意見

 ・東部、中西部、南東部からは、他地域からの低価格の牛乳により、これら地域での生乳生産の促進を損
  なうことのないよう、地域間での生産バランスの維持が必要との意見

 ・MPSPに対する継続を支持


2.国際貿易

 ・世界貿易の拡大に伴い、農業市場の活力が増加

 ・米国の貿易政策は、他国との農業貿易を推進し増加させるべき

 ・NAFTA、米・中米自由貿易協定(CAFTA)をはじめとする自由貿易協定は不要

 ・多くの豚肉生産者が、CAFTAの議会承認についてUSDAに対し感謝

 ・数人の牛肉生産者は、CAFTAについて懸念を示し、また、米国はブラジル、アルゼンチン、豪州か
  らの牛肉輸入を管理可能か疑問視

 ・国際貿易に関し、米国は、自由貿易ではなく、公正な貿易を必要

 ・乳製品の輸出のために、乳製品輸出奨励プログラム(DEIP)を積極的に活用すべき

 ・国内の支持価格の引き下げにより、国際競争力を増加させ得るとする意見があったが、ブラジルのよう
  な地価や労賃の安い国とは競争は困難とのより多くの意見

 ・すべての輸入農産物は、米国内の生産者に要求される水準と同じ安全基準を満たすよう要求されるべき

 ・輸入農産物に対する全品検査を実施し、検査代を輸入品の価格に添加すべき

 ・海外市場の要求に合致する製品を供給する生産者への奨励金について、肉牛生産者がと畜解体業者に対
  し、特定の家畜について食卓から草地まで追跡出来る証拠を提供した場合、この生産者は奨励金を与え
  られるべき

 ・米国は、WTOのドーハラウンドが終了するまで次期農業法を成立させるべきではないとする意見が出
  た一方、農業法は、WTOの要求に適合するため十分柔軟であるべき

 ・WTOや貿易協定は、米国の農業政策に影響してはならない

 ・米国の輸送構造は、国際競争に対応するため大幅に改善が必要


3.環境保全政策

 ・環境保全政策への十分な財政支援および2007年農業法においても当該政策が引き続き認可されることを
  支持
 
 ・強化された環境基準に適合する者に対し、USDAはより高額の農業プログラムによる支払いを行うべ
  き

 ・次期農業法において、誰もが農業プログラムによる利益を受けられるようにする以前に、USDAは環
  境基準の順守の厳格化を図るべき

 ・地域の必要に適合するよう、低いレベルの決定権および権限の付与と柔軟性について一般的な支持

 ・長期的な環境の持続的なプログラムに参加している地権者を重要視すべき

 ・大規模農場や牛の飼養によって起きる環境汚染への多くの懸念

 ・農業に寄与する土壌や水などの環境要素について、より良い知識が必要

 ・環境改善奨励計画(EQIP)に対し、新農業法における継続実施および技術的、財政的支援の拡大が
  必要

 ・EQIP上、家族経営を優先すべき

 ・養豚農家は、養豚についてはごくわずかのEQIPの契約しか結ばれていないとの懸念。また、寡占化
  した畜産の増加について、EQIPの参加に対するセーフガードが必要

 ジョハンズ米農務長官は、今回の意見概要の公表に当たり、2007年農業法の立案に向けたUSDAの次な
るステップは、今回要約された意見概要から、さらなる分析が必要ないくつかのテーマを収集することであ
るとした。今後、USDAのコリンズ首席エコノミストを中心に各課題ごとの分析が進められることとなる。

【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成18年4月12日発】




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