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国民の畜産部門に対する認識不足が明らかに アルゼンチン牛肉振興機関(IPCVA)はこのほど、一般消費者を対象に実施した畜産部門に関する調査 結果を公表した。これによると、「1人当たりの牛肉年間消費量が70キログラムであること」が裏付けてい るように、牛肉の消費とその評価に関してアルゼンチン人が「第一人者」であることはおそらく間違いとは ならないが、畜産部門の各段階での作業に対しての認識不足であることが明らかとなったとしている。調査 結果の概要は以下のとおりである。 牛肉産業の重要性は広く認識 「牛肉生産」と聞いて思い浮かべることとして、「雇用」との回答が54%と最も高く、次いで「産業」(29 %)、「零細農家または生産者」(25%)、「国家的誇り」(24%)、「外貨獲得」(19%)に結び付けている。 また、アルゼンチン経済にとって、牛肉産業がいかに重要であるかは95%が認めている。しかし、牛肉生産 に関連する数値(畜産農家戸数、食肉処理施設数、畜産に従事する雇用人数)についての設問では、約80%が 無回答または「知らない」と回答しており、牛肉生産の重要性は認識されているものの、具体的な現状につ いては認知されていないという結果となった。 国内消費向けと輸出向けに関する認識 最近のマスコミの報道を考慮した上で調査から得られた最も憂慮すべきデータとして、10人のうち7人ま でが、輸出向け牛肉は国内消費向けより品質が良いと信じていることが挙げられている。(筆者注:これは アルゼンチン国内では、若齢肥育牛が好まれる一方、牛肉輸入国では長期肥育された牛が好まれるといった し好の違いがあることから、この違いを品質の良し悪しとアルゼンチンの消費者が考えることは憂慮すべき データであるとIPCVAでは見ているようである) 輸出向け牛肉の比率に関する問いに対しては、アルゼンチン国内で生産される牛肉の約80%が国内消費向 けであるにもかかわらず、20%が26〜50%が輸出されると回答し、以下、25%が50〜75%、12%が75%以上 輸出されるとし、輸出される数量が国内消費量を大幅に上回ると考えている。 認識不足に関するもう一つの象徴的なデータは、肉の品質に関する家畜のカテゴリーに関係している。前 述のアルゼンチン人の「好み」での指摘で予期されたように、子牛が最も高く評価され(39%)、次いで若齢 去勢牛(27%)、去勢牛(20%)と続き、未経産牛(4%)は経産牛(3%)とともに評価の最後尾に位置した。 また、畜産部門での労働の厳しさは、そのほかの農業部門と比較して、消費に向けられる肉用牛が生産さ れるまでの長い時間に起因しているが、このような状況は大部分の消費者に認識されておらず、このため、 生産者および加工業者の作業が過小評価される結果となっている。肉用牛の妊娠から牛肉が食卓に届くまで の時間に関する問いについては、回答者の50%が数値を挙げることができず、牛の妊娠、離乳、肥育の期間 を合計すると3年に近いにもかかわらず、数値を挙げた中での平均値は2年に達していない。 国民への正しい情報提供が重要 IPCVAは今回の調査で、最近の牛肉問題にあったように牛肉に関する話題が大きく取り上げられた場 合、国民の認識不足は直接世論を混乱させることを示しており、国民が判断するための具体的な要素や裏付 けを持たない場合、客観的な情報不足のため、世論は新聞の一面の見出しやコラムに影響されることを指摘 している。最近の牛肉の国内価格の上昇に対して何らかの重要性を認めたとした回答はわずか10%であり、 数カ月来のインフレの起爆剤となった牛肉の国内供給不足に関連付けたのは8%にすぎないことを一例に挙 げている。 なおIPCVAは、これらの調査項目について、都市とそれを取り巻く産業地帯および農村を含むいわゆ る「地方」で得られた見解にはほとんど差異がないことが極めて興味深いと指摘しており、この結果を受け て、国民、報道関係者やオピニオンリーダーに対し畜産部門の各段階における作業に関する明確かつ正しい 情報提供が重要と結論付けている。 【ブエノスアイレス駐在員 横打 友恵 平成18年8月23日発】
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