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オランダ政府は発生原因を地球温暖化によるものと認識 欧州委員会は8月18日、オランダ南部でブルータングに感染した羊が発見された旨の報告が同国よりあっ たことを公表した。同疾病は、吸血昆虫が媒介するウイルスが反すう動物に感染することにより起こる疾病 で、牛やヤギでは症状が現れない場合が多いが、羊では、発熱、舌・口腔のチアノーゼ、死流産などの症状 が現れ、死に至る場合もある。なお、本疾病はヒトには感染せず、また、肉や牛乳などの畜産物により感染 が拡大することはない。 これまで、EUでは、イタリアやスペインなどの比較的緯度の低い国々でその発生が確認されていたが、 北緯50度以北での感染確認は初めてとなる。オランダ政府は、今回の感染確認について、ウイルスを媒介す る吸血昆虫の生息域が最近の地球温暖化により北に移動してきた結果とみている。 オランダ政府の対応 オランダ政府は、イタリアなどの専門家と現地の状況調査を進めるとともに、EUのブルータングに関す る委託研究所であるイギリスのパーブライトにある動物衛生研究所にサンプルを送付し、ウイルスの系統の 確認を進めている。 また、今回の確認を受け、ブルータングのまん延防止・撲滅に関する理事会指令(2000/75/EC)に基づき、 発生を確認した農場から半径20キロメートル以内を移動停止区域とし、すべての家畜の移動の禁止、すべて の反すう動物の夜間の屋外飼育の禁止、感染拡大防止のための殺虫作業の実施などの措置を講じている。 さらに同100キロメートル以内に防疫区域、同150キロメートル以内に監視区域を設定し、反すう動物や精 液などの区域外への移動制限などを課している。 なお、オランダは、監視区域だけではなく、国全域を対象に、生きた反すう動物、精液、未受精卵および 受精卵の輸出の一時停止措置を講じている。 ベルギーおよびドイツでも感染を確認 今回、ブルータングが発生したオランダ南部の地区は、ベルギーおよびドイツ国境にかなり近く、8月21 日には、オランダの発生農場から半径50キロメートル以内に位置する、ベルギーの11農場の羊、ドイツの8 農場の牛と1農場の羊で、相次いで感染が確認された。このため、両国政府は、オランダ政府と同様の防疫 区域などの設定を行い感染拡大の防止に努めている。 この結果、オランダおよびベルギーの大部分、ルクセンブルクの全域、ドイツの西部地域が監視区域とな り、自国内のと畜場に直接出荷する場合を除き、区域外への反すう動物などの移動は、ウイルスの撲滅およ び疾病の沈静化まで制限されることとなった。 【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成18年8月23日発】
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