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豪州、NZ政府とも、交渉は前進と評価 2005年12月に香港で行われた世界貿易機関(WTO)閣僚会議の結果について、豪州やニュージーラン ド(NZ)の政府や産業界は、輸出補助金を2013年までに撤廃することや関税削減方式などの貿易自由化ル ール(モダリティ)の確立の合意期限を2006年4月末までとすることの合意がなされたことなどから、一 応「交渉は前進した」と評価した。しかし、具体的な市場参入機会の拡大の中身については、何ら決定さ れなかったことから、残された交渉期間に市場の一層の自由化に向け、引き続き努力していくとしている。 農産物輸出補助金撤廃期限の決定などを歓迎 ○豪州政府の反応 ベール貿易相は、これまで行われたWTO交渉がいずれも失敗に終わったため、香港会議には「失敗の 選択肢はない」との決意で望み、結果的にいくつかの成果を得たことから、交渉は進展したと評価してい る。 ベール貿易相が示した今回の交渉の具体的な成果は以下のとおりであるが、今後も引き続き、輸出機会 の拡大に努力していくとしている。 @輸出補助金の撤廃期限の決定 これは、豪州農業従事者が50年間にわたり望んできたものであり、「すべての輸出補助金が2013年まで に撤廃されることは大きな成果」と述べている。 A2006年4月末までにモダリティを確立することの合意 「豪州の農業従事者にとって市場参入機会の改善は優先事項の一つであり、この期限は必ず守られなけ ればならない」と述べ、その重要性を強調している。 B豪州小麦輸出公社(AWB)の一元輸出体制の堅持 ベール貿易相によれば、AWBは政府から財政的支援を受けておらず、EUが廃止を主張している貿易 わい曲的な団体に当てはまらないとしている。 C後発開発途上国(LDC)に対し、市場参入時の無税無枠制度の授与 WTOのメンバーの中で多数を占めるLDCを支援し、貧困に苦しむLDCの人々の助けとなると評価。 ○NZ政府の反応 NZのサットン貿易相も豪州政府と同様に、交渉の成果として、輸出補助金の撤廃期限の決定やモダリ ティの確立期限の決定、LDCへの配慮を挙げ、不完全ながらも交渉は前進したと評価し、今後の交渉の 進展に期待している。 民間団体の反応:市場参入機会の改善を要望 ○豪州全国農民連盟 豪州の農業者団体である全国農民連盟(NFF)は、連邦政府と同様な輸出補助金の撤廃期限の決定な どを評価するものの、EUやG10グループが市場参入機会の改善を行わなかったことに失望すると述べ、 今後はこの点での改善を要求していくとしている。 ○豪州酪農協議会(ADIC) 豪州の酪農団体の上部組織で政策的意思決定の役割を負う豪州酪農協議会(ADIC)によると、EU 輸出補助金の撤廃よりも重要なことは、市場参入機会の拡大と国内支持の削減であると述べた。ADIC の説明によると、輸出補助金の撤廃問題は、EUや米国が余剰乳製品を持ち、それを国際市場に放出して いる間は重要な意味を持っていた。しかし、需要が供給を上回っている現状では、豪州にとっては、市場 参入問題の方が重要であると指摘している。障害を設けている国や地域として、EUや日本、韓国、米国 を挙げている。ADICでは、市場参入問題が解決されれば、10〜15%の乳製品価格の上昇が見込まれ、 豪州の乳業界にとって大きな利益になることから、「この6カ月の交渉がわれわれの試練になるが実りも 大きい」と述べ、今後の交渉の中で要求実現に向け努力していくとしている。 【シドニー駐在員 井上 敦司 平成18年1月12日発】
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