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米国議会、WTO交渉に関するバランスの取れた結果を要求


米上院議員、ブッシュ大統領へWTOに関する懸念の書簡を送付

 米上院農業委員会の超党派の議員57人は6月23日、ブッシュ大統領に対し、WTO農業交渉の大枠合意
の期限が迫る中、農業交渉の今後の方向性に関する深い懸念を表明した書簡を送付した。

  当該書簡は、他の加盟国などからの国内支持の追加的削減および市場アクセスの要求引き下げの要請を
拒否し、野心の高いバランスの取れた結果を求めるものであり、コンラッド、クレイグ両議員のほか、チ
ャンブリス米上院農業委員長やボーカス財政委員会民主党筆頭理事らが署名している。

  米国では、同月初めにもファームビューローなど11の生産者団体が連名で同大統領へ今次交渉に関する
懸念の書簡を送付しており、追加的な譲歩の要求の高まりを受け、米国農業関係者の強い抵抗がうかがえ
る。

  当該書簡の概要は以下のとおり。


野心の高いバランスの取れた結果を要求

 今次ラウンドに関する議論を開始した時、われわれの交渉者は、米国農業にとって効果的な結果を産出
することに集中すべきであるとの両党の一致した見解があった。

  合意に対するわれわれの支持は、貿易わい曲的な国内支持の削減と比較して、米国農業にとって利益を
もたらす新たな市場アクセスおよび輸出補助金の撤廃により獲得し得る公平かつ野心的な成果次第である。

  米国は昨年10月、他国が農産品に係る関税の大幅な削減、また、市場アクセスの改善に合意した場合、
米国内の農業プログラムのかなりの削減を盛り込んだ野心的な提案を打ち出した。

  多くの農業者たちは、市場アクセスの改善が不透明と考えると同時に、農業プログラムの削減が、彼ら
の収入を直ちに減少させることになるのではないかとの懸念を抱いている。

  しかしながら、米国政府は、当該提案が、仮に市場アクセスの改善が実現しなければ、不均衡な国内支
持の削減には合意しないとの条件付きであることを主張した。

  残念ながら、多くの貿易相手国は、市場アクセスの実質的な改善に向けたいかなる進展さえも拒否する
一方で、米国の農業プログラムの大幅な削減を要求し続けている。

  これらの国々は、大幅な関税削減を拒否し、さらに、彼らが提案したわずかな関税削減の意味をなさな
いものとする、重要品目および特別品目の除外を主張している。

  食料および農業貿易における関税削減や、市場アクセスの改善が利益を生ずることを主張しているのは、
米国農業だけではない。ほとんどの経済調査においても、貿易協定による利益の大半は、農産品などに係
る関税の大幅な削減により産出されると結論付けている。

  このように、今次交渉において市場アクセスに関する野心的な成果が達成されていないことは、米国農
業のみならず、世界経済などへも損害を与えることとなるだろう。

  われわれは、同大統領に対し、いかなる不均衡な提案をも拒否し、米国農業のため競争の場を公平にし、
米国農業者にとって利益を増加させる野心の高いバランスの取れた結果を主張するよう米国の交渉者へ指
示することを要求する。


上下両院農業委員長、追加的な譲歩の拒否を強調

  シュワブ米通商代表は同月27日、29日からスイス・ジュネーブで始まる閣僚会合を目前に控え、ジョハ
ンズ米農務長官およびチャンブリス、グッドラテ米上下両院の農業委員長をはじめ、ボーカス、ハーキン
両上院議員らとともにワシントンDCで合同記者会見を行った。

  当該会見の中で、チャンブリス上院農業委員長は、「昨年10月の米国提案の後、EUからは、意味をな
さない非包括的な提案しか出されていない」と交渉相手国に対し譲歩を促すとともに、今次交渉が合意に
達するため全力を尽くすことを確認した。

  また、グッドラテ下院農業委員長は、「われわれは、この重要な局面で目的を見失わないことが重要で
ある。他の加盟国は、これまで米国提案に近付く提案さえも申し出ず、われわれは現在、譲歩することの
みを要求されている。しかし、米国議会には、市場アクセスおよび国内支持における譲歩を含め、追加的
な譲歩に対する支持は皆無である。他の加盟国にとって、まさに今が挑戦を開始する時である」と述べ、
従来通り追加的な譲歩については拒否する姿勢であることを強調した。

  一方、シュワブ代表は、「われわれは、包括的かつ有意義な合意を熱望し、米国の労働者、製造業者、
農業者などにとって有益となる最終協定を産出することを決心している。貿易相手国が、市場アクセスに
関する厳しい決断を下すことによってのみ、われわれは、貿易を通じた世界経済の発展を促進し、歴史的
な進歩を遂げることが可能となる」と今回会合に向けた意欲を述べた。



【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成18年6月28日発】




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