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欧州委員会は6月7日、鳥インフルエンザに対する予防対策として、野鳥から、家きんなどへの感染を減 少させる対策や、高病原性鳥インフルエンザが発生した第三国からの家きん製品などの輸入の一時停止措置 など、いくつかの鳥インフルエンザ対策の適用期間を延長した。 適用期間を12月31日まで延長 EU域内で最初の野鳥における高病原性鳥インフルエンザの感染が確認された2月から5月21日までの間、 野鳥における同疾病の感染は、13カ国、741羽で確認され、この大部分はH5N1型のウイルスによるものと 同定されている(詳細は6月1日付け海外駐在員トピックス参照)。野鳥での同疾病の確認事例は、3月以 降急速に減少している。最近も、数例が野鳥で確認され、まだ特定の地域にウイルスが残っており、完全に ウイルスが排除された状況ではない。 そこで、欧州委員会は6月7日、フードチェーン・家畜衛生常設委員会の合意を得、鳥インフルエンザの 予防対策を実施しているもののうち、5月31日に適用期間の終了を迎えたものを延長することとした。 これには、野鳥から家きんへのH5N1型のウイルスによる高病原性鳥インフルエンザの感染のリスクを 減らすために実施している対策のうち、同疾病の侵入のリスクが高い地域において屋外での家きんの飼育を 禁止するなどの対策、また、ルーマニア、ブルガリア、スイスからの家きん肉製品などの輸入の一時停止措 置があり、それぞれの適用期間を12月31日まで延長した。 ハンガリーの家きん農場で高病原性鳥インフルエンザを確認 野鳥での高病原性鳥インフルエンザが減少している中、欧州委員会は6月9日、ハンガリー当局より、同 国南部バーチュ・キシュクン(Bcs-Kiskun)県の家きん(ガチョウ)農場から、H5型の高病原性鳥インフ ルエンザウイルスが検出された報告を受けたことを発表した。ウイルスの同定を行うため、EUの鳥インフ ルエンザに関する委託研究所であるイギリスのウェイブリッジの獣医研究所(VLA)にサンプルを送付し た。現在のところ、調査中ではあるが、本ウイルスが、H5N1型と同定された場合、EU域内の商業用の 家きんへの感染が、フランス、スウェーデン、ドイツ、デンマークに続き5件目の事例となる。 今回ウイルスが検出された農場は、2,300羽のガチョウを飼養する農場である。この農場は本年2月に同 国の野鳥で確認された県に位置し、この野鳥での確認により実施された対策はすでに解除されていたが、同 県では、その後も強化された監視が持続されていたため、早期発見が可能となった。 水浴によるH5N1型の鳥インフルエンザに感染するリスクはほとんどなし 野鳥、特に水鳥でのH5N1型の高病原性鳥インフルエンザが多数確認されたことを受け、感染症予防の 強化を任務とするEUの機関である欧州疾病予防管理センター(ECDC)は6月9日、今夏、欧州の湖、 川、海での水浴により、同型の疾病に感染するリスクを評価し、そのリスクはほとんどないことを発表した。 ECDCは、2003年以降東南アジアから拡大してきた事例を含めたH5N1型についての再調査に加え、人 への感染症に関する知見も考慮して評価を行った。これによると、同型の疾病は、鳥のウイルスによるもの ではあるが、ごくまれに人に感染する。しかし、いったん大量の水で薄められた場合、人がウイルスに感染 するリスクは限りなくゼロに近づくとしている。
【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成18年6月15日発】
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