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米国農業者団体、追加的な国内支持の削減は市場アクセスが条件 全国生乳生産者連盟(NMPF)は6月1日、WTO農業交渉が今月末のモダリティ(保護削減の基準)の 合意に向け大詰めを迎える中、米国に対し他の加盟国などから一層の国内補助金の削減が要求されていること を踏まえ、ブッシュ大統領に、他の加盟国などから追加的な農業政策に関する譲歩が示されない限り、米国は いかなる譲歩もすべきではないとする書簡を送付したことを公表した。 当該書簡は、NMPFのほか500万人を超える会員を有する全米最大の農業者団体であるファームビューロー (AFBF)およびトウモロコシ、大豆、小麦、綿、砂糖、米など米国内の11の生産者団体との連名となって いる。NMPFが今回公表した当該書簡およびこれら農業者団体の声明の概要は以下のとおり。 ・国内の農業プログラムの縮小を盛り込んだ非常に寛大な米国提案が2005年10月に提唱されたが、一方で当該 提案は、乳製品を含む米国農産物の世界市場におけるさらなる市場アクセスの拡大を条件としていた ・先進国および開発途上国ともに、市場アクセスの拡大に関しては、米国提案に近づく準備をすることもなく、 他の加盟国が米国の提案を握りつぶしたことは明らかである ・現在、EUをはじめ他の加盟国は、自国のいかなる譲歩も申し出ることなく、米国の国内支持に対しより一 層大きな譲歩を要求している ・このような状況の下、米国の農業者団体は、既に提案された以上の国内支持における大幅な削減はとても支 持出来ないことを明確にすることが重要であると考える ・仮に、米国の交渉者が、今次交渉の合意のため農業の市場アクセスについて野心のレベルの縮小を強いられ るならば、貿易わい曲的な国内支持の削減についても、相応して野心のレベルは米国提案より縮小されなけ ればならない ・ポートマン前米通商代表は昨年9月の米上院農業委員会において、「われわれは、他のWTO加盟国が、彼 らの市場を米国の商品のために開放することを確約し、さらに、彼ら自身の補助金や貿易わい曲的なプログ ラムの削減に合意しなければ、われわれ自身のプログラムの変更を考慮するつもりはない」と述べていた このように、米国農業者団体は、WTOドーハラウンドを世界的に競争の場を公平にし、また、世界の農業 市場における多くの不均衡に対処する手段として位置付け、強く支持してきた。一方で、米国によるさらなる 譲歩は、貿易相手国が市場アクセスの改善と貿易わい曲的な政策を削減することを確約し、米国の農業者およ び牧場主に重要な利益がもたらされる場合のみ容認可能であることを当該書簡で強調している。 ラミー事務局長に対し市場アクセスの改善を強調 このような中、全国トウモロコシ生産者協会(NCGA)は同月12日、AFBFやNMPFなどの農業者団 体の代表者とともに、ワシントンDC市内でラミーWTO事務局長と会談したことを公表した。 当会談において農業者団体は、同事務局長に対し、WTOに対する米国提案が重要であったこと、また、米 国農業は、今次交渉において米国が要求した市場アクセスの譲歩が示されていないことに懸念を抱いているこ とを強調した。 コルジンNCGA会長は、同事務局長に対し、今回の会談の機会を設けたことに感謝の意を表すとともに、 「われわれの黄の政策における60%の支持削減は、市場アクセスを条件としたものである。われわれは、この 市場アクセスの実質的な改善なしに、提案された国内支持の削減を支持出来ない」と述べた。 米上院、シュワブUSTR代表を承認 米上院は同月8日、去る4月18日にブッシュ大統領から米国通商代表部(USTR)の次期代表に指名され たシュワブUSTR次席代表を第15代代表に承認した。 同代表は、本件について、「ドーハラウンドの農業交渉における既存の提案は条件を含むものであり、貿易 相手国の新たな譲歩を望む意思に従い改善または縮小され得る。ドーハラウンドの成功のため、彼らの市場ア クセスの提案は改善されなければならない」と明言した。 次回のジュネーブでのWTO閣僚会合は、6月29日に予定され、19日の週には農業分野のモダリティの合意 案が示されることとなっている。【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成18年6月14日発】
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