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EUの家きん肉・鶏卵管理委員会は21日、欧州委員会から提出されていた鳥インフルエンザ発生による家きん 肉および卵の需要の低迷に対処するための加盟国が実施する対策について承認した。今回の承認された対策は、 生産者が実施した一時的な生産抑制対策に対する加盟国の補償を対象とし、民間在庫補助といった流通段階にお ける在庫対策は対象外とした。 対象を一時的な生産抑制対策に限定 EUの消費者の鳥インフルエンザに対する不安の拡大により、家きん肉および卵の価格やそれらの需要が低迷 する中、4月25日に開催された農相理事会において、それまでの規則を改正し、公衆衛生または動物衛生リスク に端を発した消費減退による深刻な市場の混乱に対処するため、各加盟国が実施する特別の市場対策についても、 EUが50%の財政負担を行えるようにした(海外駐在員情報通巻718号参照)。 今回の市場対策については、加盟国でそれぞれの状況に応じて講じられた対策についてEUの補助を申請する こととなっており、これまで14カ国(チェコ、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリ ア、キプロス、ハンガリー、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、スロバキア)から欧州委員会 に補助申請が提出されていた。これらについては、21日の家きん肉・鶏卵管理委員会でEUの補助対象となるか が最終的に決定されることとなっていた。 しかし、6月19日に開催された農相理事会において、フランス、ギリシャ、イタリアより、今回の市場対策の 対象に、消費低迷により生産者が実施した生産抑制対策だけではなく、過剰な在庫を解消するために食鳥処理場 や問屋などが実施した保管や在庫処分対策についても対象とすべきであるとの要望が最終決定前に出されていた。 これに対し、フィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は、家きん肉・鶏卵管理委員会で最終決定さ れるものであると前置きをした上で、今回の家きん市場の混乱で問題となったのは、流通段階よりむしろ生産段 階であり、また、現状では家きん肉などの在庫は増加していないとして、流通段階の在庫対策を対象とすること は適当ではないとしていた。 また、今回の対策の対象期間について、本年4月末までとする欧州委員会案に対し、複数の加盟国から、対象 期間を7月末まで延長すべきとの要望が出されていた。 これについても、フィッシャー・ボエル委員からは、家きん肉や卵の消費は回復しており、市場がもはや深刻 な状況にないことから、生産者の損失を補償する期間を延長する正当な理由がないとして要望を受け入れなかっ た。 加盟国が生産者へ補償する一時的な生産抑制対策の概要 今回承認されたEUの補助を受け、各加盟国が生産者に補償する一時的な生産抑制対策は以下のとおり。 ・種卵の廃棄 ・種卵の加工処理 ・ひなの処分 ・繁殖に供する鳥の更新予定前の処分 ・3週間を超える家きん肉や卵の生産の一時的な休止 ・ひな導入の抑制による自主的な家きん肉や卵の生産の減少 ・採卵鶏の更新予定前の処分 以上の対策について、EUの補助対象となる国ごとに補償の上限単価、上限数量、対象期間が定められ、この 結果、加盟国に対するEUの補助総額は5千万ユーロ(72億5千万円:1ユーロ=145円)から6千5百万ユーロ (94億3千万円)になると見込まれている。
【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成18年6月21日発】
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