ALIC/WEEKLY
欧州委員会は先ごろ、2006〜13年のEUにおける主要農産物の需給に関する中期見通しを公表した。家きん肉 および食用卵については、消費の増加と同調し、生産も増加を続けると予測している。 世界の約14%を占めるEUの家きん肉生産 国連食糧農業機関(FAO)による2004年のEUの家きん肉生産量は、世界の家きん肉生産量の約14%を占め ている。欧州委員会によれば、家きん肉生産量は1,099万6千トン(骨付き肉ベース)で、日本の約9倍となって いる。これを国別に見ると、フランス(184万3千トン)が最も多く、イギリス(157万4千トン)、スペイン (131万トン)、イタリア(112万8千トン)、ドイツ(101万7千トン)と続く。 欧州委員会の中期見通しによれば、2005年まで安定的に推移した家きん肉生産であるが、2006年はEUでのH 5N1型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生により、生産量はいったん、わずかに減少すると見ら れている。しかし、家きん肉は、ほかの食肉と比べ価格面で優位であり、また、加工品としての利用が増加して いることから、家きん肉の生産量は中期的には増加傾向で推移し、2013年は2005年と比べ5%増の1,152万8千ト ン(骨付き肉ベース)になると予測されている。 新規加盟国でより消費拡大が見込まれる家きん肉 2005年のEUの家きん肉の一人当たり消費量は23.2キログラムで、これは、日本(10.5キログラム)の2.2倍 に相当する。2013年の消費量は、2005年と比べ、0.9キログラム増加の24.1キログラムになると予測されている。 このうち、EU15カ国では0.8キログラム増加の23.7キログラム、2004年5月にEUに加盟した新規加盟国(10 カ国)では1.6キログラム増加の26.2キログラムになると予測されており、EU15カ国よりも、新規加盟国にお いて、より消費が拡大すると見込まれている。 家きん肉の輸入は増加傾向で推移する見込み 2005年の家きん肉の輸出は、前年比6.3%減の91万3千トンとなった。欧州委員会は、この減少について、世 界の市場で低コスト製品と競合したこと、また、米ドルおよびブラジルレアルに対するユーロ高によるものとし ている。また、2006年の輸出量も、前年と比べ、4.4%減少すると予測しているが、これは、家きん肉の主要な 輸出国であるフランスがHPAI発生に伴い、世界の約40カ国以上へ輸出できなくなったことによるものとして いる。 一方、2005年の家きん肉の輸入は、前年比11.4%増の57万8千トンとなった。これは、東南アジア、特にEU の家きん肉の第2位の輸入相手国であるタイにおいて2004年にHPAIが発生し、同国からの家きん肉の輸入が 一時停止したことが影響しているとしている。2013年の家きん肉の輸入は、2005年に比べ11.4%増の64万4千ト ンになると予測されているが、欧州委員会は、この中期的な増加について、冷凍むね肉や調製品の輸入が増加す ることによるものとしている。なお、EUの家きん肉の輸入は、ドイツ、オランダ、イギリスで全体の約85%を 占めている。 需要増により、食用卵生産も増加の見込み FAOによる2004年のEUの食用卵生産量は、世界の食用卵生産量の約10%を占めている。欧州委員会によれ ば、EUの食用卵の生産量は710万4千トンで、これを国別に見ると、フランス(102万7千トン)が最も多く、 スペイン(89万3千トン)、ドイツ(80万3千トン)、イギリス(78万9千トン)、イタリア(78万3千トン) と続く。 2013年の食用卵の生産量は、需要の増加により、2005年に比べ4.8%増の660万トンになると予測されている。 また、2005年の食用卵の一人当たり消費量は、日本(16.5キログラム)の約8割に相当する13.6キログラムで、 2013年の消費量は、需要増が見込まれることから、2005年と比べ0.4キログラム増加して14.0キログラムになる と予測されている。 【ブリュッセル駐在員 山ア 良人 平成18年8月30日発】
元のページに戻る