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アセアンの各地でAIが再発し、懸念される定着化 2003年後半にベトナムで発生したアセアン地域の高病原性鳥インフルエンザ(AI)は、インドネシアで 継続して発生が確認されているが、最近発生が確認されたミャンマーを除いて、これまでAI発生国におい ていったんは発生が沈静化していたものの、7月以降各国で再発が確認されている。再発生の順で示すと、 ラオスでは2004年1月以来7月中旬に再発を確認、タイでも昨年11月以来7月中旬に再発を確認、カンボジ アでは3月下旬以来8月初旬に再発を確認、ベトナムでは昨年12月中旬以来8月上旬に再発が確認されてい る。これらのほかにマレーシアでは2月に再発しているが、その後、未発生のまま所定の期間が経過し、既 に政府は終息を宣言している。一連の再発の要因については、ウイルスが池などに常駐化しているとの見方 をする専門家がいる一方、各国政府の担当者は、外国からのウイルスの侵入を指摘するとともに国境管理の 困難性を訴えている。 困難な国境での家きんの流通管理 アセアン地域の中でも、特にインドシナ半島における国境線の大部分は、自然の河川沿いや山岳地域など に定められている。そのため、厳格な監視が困難で、徒歩や車両、船舶による交通によって容易に越境可能 な部分が多く存在し、盛んに密貿易が行われているとされている。このため、政府はAIや口蹄疫の発生を 理由として家きんなどの輸入を禁止するものの実効性が疑問視されている。 特にタイはメコン川をラオスとの国境としているが、両岸の交通は国境の税関のある橋のほかに舟で渡河 が可能であり、密貿易が容易な状態となっている。 8月下旬、タイ農業協同組合省畜産開発局(DLD)は、9月にラオス国境のあるノンカイ県で、ラオス と国境における家きんの流通管理に関する情報交換会議を開催すると発表した。これは、国内および国境に おける家きんの移動に関してより厳しい管理が必要であるとする国連食糧農業機関(FAO)の意向に沿っ たものとしている。 死亡者数でベトナムを上回ったインドネシア アセアンの中でもインドネシアにおけるAIの人への感染状況は最悪とされている。8月23日現在、世界 保健機関(WHO)のデータによれば、これまでAIによる死亡者の数で最高であったベトナムの42人を超 す46人となった。 同国におけるAIの状況について、AIの危険性に関する情報が国民に正しく伝わっていないことと、予 算不足によって殺処分がスムーズに行われないことが指摘されている。特に衛生面での広報に関しては、一 部に宗教的な因習に基づく行動、例えば、「人の寿命は神が決めたもの」として衛生面における感染拡大防 止の取り組みを積極的に支持しない人もおり、防疫上の障害となっている。 また、予算の制約が殺処分実施の障害となっている。殺処分に対する補償額は、成鳥1羽当たり10,000〜 12,500ルピア(100〜125円:1ルピア=0.01円)となっているが、相場が35,000ルピア(350円)のため、 生産者の協力が得られにくい状況となっている。 【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成18年8月31日発】
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