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欧州委員会は9月8日、12カ月齢以下でと畜される牛から生産される牛肉について、8カ月齢を境に、表示を 区分する新たな規則を提案した。今回の提案によれば、「子牛肉」と表示できるのは8カ月齢以下の牛から生産 される牛肉のみとなる。 子牛肉の表示に関する提案の背景 EUでは、12カ月齢以下でと畜される牛の飼養方法は、大きく2種類に分かれる。第一の飼養方法は、飼料と して主に乳製品などを与え、8カ月齢未満でと畜されるものでEUで広く行われているものである。第二の飼養 方法は、飼料として主にトウモロコシなどの穀物を与え、10カ月齢以上でと畜されるもので、主にオランダ、デ ンマーク、スペインなどの限られた国で行われているものである。 実際には、この二つの飼養方法の牛から生産される牛肉には、価格差が存在するなどから区分する必要があっ たにもかかわらず、これまで表示に関する定義が定められていなかったことから、公正な市場競争が阻害され、 また消費者に誤った情報を与えかねない状況となっていた。 そこで、欧州委員会は2005年3月より「子牛肉」に対する消費者の認識調査を実施したが、この結果では、牛 肉の購入に当たっては「柔らかさ」と「香り」が主な判断基準となっており、国によっては「色合い」も重視し ているとの結果が出た。これらの要素は、給与した飼料やと畜月齢により大きな差が出るが、どのような飼料を 給与して生産されたかを管理することは困難なことから、より確認の容易な月齢の違いによる表示の区分を提案 したものである。 「子牛肉」の表示は、と畜月齢8カ月以下の牛から生産される牛肉 今回の提案では、12カ月齢以下の牛について、まず、と畜段階で、各々の牛が携行しているパスポートに記録 された生年月日の情報に基づき、8カ月齢以下の牛(カテゴリーX)および8カ月齢超で12カ月齢以下の牛(カ テゴリーY)に区分することとしている。 このカテゴリー区分に従い、牛肉の販売段階においては、英語を公用語とするイギリスおよびアイルランドの 場合であれば、カテゴリーXの牛から生産される牛肉については子牛肉を意味する「veal」、カテゴリーYの牛 から生産される牛肉については「beef」と表示することとしている。ただし、カテゴリーYについて、フランス 語やドイツ語を公用語とする国においては、単なる「牛肉」の表示とは異なる「若い牛から生産された牛肉」に 相当する表示が提案されている。 これらの表示を確実にするための措置としては、各加盟国の主管当局による現地調査が盛り込まれている。 また、この表示区分の適用の対象はEU域内で流通する牛肉で、公正な市場競争を行う観点から、EU域外か ら輸入される12カ月齢以下の牛から生産された牛肉も対象とすることとしている。 新たな区分の導入による影響 欧州委員会は、今回の表示の区分の導入により、カテゴリーXの牛から生産される牛肉については影響はない としている。 一方、カテゴリーYの牛から生産される牛肉については、少数の国の特定の地域で行われていること、この区 分の牛肉価格は低下傾向で推移しているなどの現状にあることから、仮に生産が何らかの影響を受けるケースが 生じても、その原因はこの提案によるものではないとしている。 また、EUには、動物福祉に関連して、子牛の飼養管理の基準を定めた規則があり、この規則の対象とする 「子牛」は「6カ月齢までの育成または肥育用の子牛」となっている。ただし、今回の提案はあくまで牛肉の表 示に関するものであり、この動物福祉の規則に影響を与えるものではないとしている。 欧州委員会が提案したこの理事会規則案については、今後、欧州議会および農相理事会での議論を経て、2007 年7月1日以降にと畜される12カ月齢以下のすべての牛への適用を目指している。 【ブリュッセル駐在員 和田 剛 平成18年9月20日発】
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