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急速な豪ドル高の進行が、豪州肉牛・牛肉産業にとって懸念材料に 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は8月6日、2007年肉牛・牛肉産業需給予測の期中改訂版を公表した。 今年2月の公表(「海外駐在員情報」通巻第755号参照)では、豪州産牛肉の需給に影響を及ぼす要因として、 干ばつの状況や米国産牛肉の日本、韓国市場への輸出状況を踏まえ需給予測を行った。改訂版では、当初の見 込みより干ばつが長期化し2007年春に終息する見込みであること、また、米国産牛肉の日本、韓国市場への輸 出の回復が遅れていることに加え、円や米ドルに対する急速な豪ドル高の進行(年初以来10〜14%上昇)が、 短期的に見て牛肉輸出価格や肉牛価格に大きな影響を及ぼすと指摘している。 この結果、2007年における豪州の肉牛生産者、フィードロット業者、牛肉処理業者および牛肉輸出業者の経 営環境は、当初の予測よりさらに厳しくなるとしている。 2007年後半から2008年にかけて肉牛・牛肉価格は低下するものの、急速な下落は回避 豪州の肉牛・牛肉価格は、2007年後半から2008年にかけて前年を下回る水準で推移すると見ている。これは、 豪ドル高に加えて、日本および韓国市場において米国産牛肉との競合が激しくなるためである。 しかしながら、肉牛・牛肉価格の急激な下落は回避されるとしている。これは、干ばつの終息に伴い、肉牛 生産者が牛群再構築に動く結果、牛肉生産量が減少に転じること、日本および韓国市場において競合する米国 産牛肉の価格が記録的高水準にあること、さらに、豪州国内市場における牛肉需要が引き続き強いことなどが その理由として挙げられている。 牛肉生産量は、2007、08年度前年をわずかに下回るものの、その後、順調に回復 現在の干ばつが2007年春に終息するとした場合、終息後から2008年にかけて肉牛供給量が減少するとみてい る。一方、枝肉重量の増加が見込まれている。この結果、2007年および2008年の牛肉生産量は、214万8千トン (前年比1.8%減)、212万4千トン(同1.7%減)といずれも前年をわずかに下回る。しかしながら、2009年に は223万9千トンと2006年の実績を上回るまでに回復し、2011年まで増加傾向が続くと見ている。 2007年後半から2008年にかけて牛肉輸出量は減少傾向へ 2007年の牛肉輸出量は、今年2月の予測値91万トン(船積重量ベース)よりも3万トン増加し、94万トン(前 年比1.5%減)を見込んでいる。上方修正した理由としては、2007年上半期の国内生産量が当初の見込みを上回 ったこと、米国産牛肉の日本および韓国市場への輸出量が当初の見込みを下回ったことを挙げている。 2007年上半期の牛肉輸出量実績は、前年同期を4.5%上回ったものの、2007年後半から2008年にかけて牛肉 輸出量は急速に減少すると見ている。これは、豪州における牛肉生産量の減少、豪ドル高および日本、韓国市 場における米国産牛肉との競合が激しくなるためである。このため、2008年の牛肉輸出量は、90万5千トン (同3.7%減)とさらに前年を下回ると予測している。 【シドニー駐在員 井田 俊二 平成19年8月16日発】
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