(1) 消費 やや鈍化から堅調な伸びへ ・ 牛肉の消費(推定出回り量)は、元年度には前年度比2.4%増と伸びが鈍化し たものの、2年度に入り、再び高い伸びを示しており、3年3月は、「自由化セー ル」等による販売促進により、輸入牛肉の消費(推定出回り量)が増え、前年同 月比7.4%増と引き続き好調に推移している。この結果、2年度計でみた場合、9. 7%増と前年水準を大きく上回っている(図1)。 ・ 牛肉消費の約5割を占める家計消費は、63年度後半以降はわずかに前年水準を 下回って推移していたが、元年の8月以降おおむね前年水準を上回り堅調に推移 している(3年2月105.3%、4〜2月102.9%)(図2)。 ・ 加工仕向け量は、2年1月以降ハンバーガーパティ等の生産が落ち込んでいるこ とから前年を下回って推移しており(4〜2月88.7%)、3年2月も対前年同月比93 .2%と落ち込んだ(図2)。 (2) 生産 低水準にあった生産は、回復へ ・ 生産は元年度に入って以降前年を下回って推移してきたが、2年7月以降おおむ ね前年水準を上回っており(3年3月前年同月比101.5%)、2年度に入って着実に 回復した(図3)。この結果、2年度計では、前年度比102.7%となった。 ・ 種類別にみると、2年度に入って、和牛のと畜頭数は去勢和牛を中心に前年水 準を大きく上回って推移しており(3年3月前年同月比106.9%、2年度計では、前 年度比107.9%となった。一方、乳牛のと畜頭数は、10月以降毎月前年を上回っ てきたが、3年2月、3月ともに前年同月を下回り、2年度計では前年度比99.1%と なった(図4)。 (3) 飼養動向 4%増の2,796千頭、北海道が大幅増 ・ 平成3年2月1日現在の肉用牛の飼養頭数は、肉用種が対前年比4%の増、乳用種 が同2%の増となり全体では同4%の増で2,796千頭となった。 飼養戸数は、対前年比5%の減で221.4千戸となった。 ・ 規模拡大は着実に進み、100頭以上の階層では、飼養戸数(3%増)、飼養頭数 (8%増)とも増加した。 ・ 地域別にみると、全国の飼養頭数の約12%を占める北海道の伸びが大きく(対 前年比115%)、特に肉用おす牛の伸びが著しい(対前年比142%)。 また、その他の地域においても、北海道ほどではないが着実に増加している。 (4) 輸入 一時停滞していた輸入も回復へ ・ 輸入実績は、2年度に入って前半はおおむね前年水準を下回っていたものの、 2年10月以降3年2月までは前年を大きく上回って推移した。しかし、3月は前年同 月を下回った(前年同月比97.5%)。2年度計では前年度比105.3%と前年水準を 上回った(図5)。 なお、2年度までの輸入枠及び3年度以降の関税率は表1のとおりである。 表1 牛肉輸入割当量の推移
昭和61年度 | 168千トン | 平成3年度 | 70% |
62 | 214 | 4 | 60 |
63 | 274 | 5 | 50 |
平成元年度 | 334 | ||
2 | 394 |
牛肉の3年3月の推定期末在庫は、117千トンと前月に比べ約2,800トン減少し た。その内訳をみると、畜産振興事業団在庫は前月に比べ約2,300トン増加し、 民間在庫は約4,400トン減少した(図6)。なお、畜産振興事業団の品目別在庫は 巻末資料に掲げるとおりである。 畜産振興事業団の売買状況 ・ 平成3年度からの牛肉の輸入数量制限の撤廃に伴い、事業団の牛肉輸入業務は2 年度をもって終了し、平成3年度以降は、事業団が保有する輸入牛肉(56,357ト ン)の売渡しのみを行うこととなっている。 ・ 4月の売渡しの概要は次のとおりである。
上場日 | 上場数量 | 落札数量 | 落札率 | |
一斉せり売り | 4月9日 | 4,951トン | 3,827トン | 77.3% |
任意せり売り | 4月23日 | 2,032 | 682 | 33.6 |
計 | − | 6,000※ | 4,509 | 75.2 |
※印は4月上場全体計画の数量 この結果平成3年4月末の在庫量は51,849トンとなった。 ・ 5月売渡しの概要は次のとおりである。
上場日 | 上場数量 | 落札数量 | 落札率 | |
一斉せり売り | 5月9日 | 4,860トン | 2,695トン | 55.5% |
任意せり売り | (5月23日) | |||
計 | − | 6,000※ |
※印は5月上場全体計画の数量 ( )は予定である。 (5) 価格動向 @国産牛枝肉卸売価格 4月に入って弱含みへ ・ 価格安定対象牛肉(「B−2・B−3」規格の去勢牛)についてみると、2年7月、 8月と価格は安定上位価格を突破し、9月以降も安定上位価格付近で堅調に推移し てきた。その後、3年2月に入って卸売価格は弱含みとなり、中心価格付近(1,16 8円/kg)まで低下したものの、3月に入ってからは再び持ち直した(1,269円/ kg)。しかし、4月の速報値では1,167円/kgとまた2月水準に戻ってきている (図7)。 ・ 最近の4ヵ月間の東京市場の規格別卸売価格の動きは表2のとおりである。 なお、63年4月以降の規格別卸売価格の推移は図8、同じく種類別卸売価格の推 移は図9のとおりである。 表2 (単位:円/kg)
区 分 | 3年1月 | 2月 | 3月 | 4月 (速報値) |
去勢和牛 A5 | 2,675 | 2,599 | 2,690 | 2,707 |
去勢和牛 A4 | 2,220 | 2,110 | 2,193 | 2,222 |
乳おす B3 | 1,249 | 1,217 | 1,219 | 1,200 |
乳おす B2 | 1,039 | 911 | 898 | 862 |
乳めす C1 | 405 | 368 | 331 | 359 |
資料:農林水産省「食肉流通統計」、東京食肉市場 ・ 国内の仲間相場は、このような卸売相場の動きを反映して推移してきている (図10)。 A輸入牛肉卸売価格 総じて弱含み傾向 ・ 市場せり状況をみると以下のとおり 5月の上場数量は、6,000トンとし、うち一斉せり売り上場数量は、4,860トン とした。(残りの数量は月末のせり売りに上場される。) せり結果は、2,695トンで55.5%の落札率となった。 品目別に落札率を見ると、「No.120ブリスケット」86.5%と落札率が高かった のに対し、他の品目は落札率が低く、特に「No.180ストリップロイン」38.6%及 び「No.116スクェアカットチャック」40.9%が低かった。 東京食肉市場の一斉せり結果は、品目全体の落札率は44.5%(4月68.5%)で あり、「No.120ブリスケット」84.9%及び「No.121Bショートプレート」78.5% は高かったが、「No.189フルテンダーロイン」5.3%、「フルブリスケット」8.0 %、「トップサイド」14.2%、「No.116Aチャックロール」15.5%及び「シック フランク」15.9%は特に低かった。 一方、価格の動きは、前月に比べ全般的に値を下げた。 輸入牛肉の市況(仲間相場) 事業団調査による3月31日及び4月15日の輸入牛肉の市況は、北米産冷凍品は全般 に値を下げており、オセアニア産ではロイン系の部位が、若干値上りを示したが、 他は保合ないし値を下げた。 なお、主要部位の価格の動向は図11のとおりである。
輸入牛肉の市況(畜産振興事業団調べ)
産地 |
品 目 | 価 格 円/kg |
比 率 | |||||
前月同期比% | 前年同期比% | |||||||
3月31日 | 4月15日 | 3月31日 | 4月15日 | 3月31日 | 4月15日 | |||
北米産 | 冷凍品 | No.112A リブアイロールリップオン |
2,109 | 2,076 | 97.5 | 93.1 | 99.2 | 97.1 |
No.116 スクエアカットチャック |
824 | 778 | 96.9 | 77.0 | 92.9 | 94.6 | ||
No.121B ショートプレート |
680 | 670 | 96.3 | 89.0 | 92.4 | 97.7 | ||
No.180 ストリップロイン |
1,722 | 1,661 | 96.3 | 90.8 | 97.0 | 95.0 | ||
No.189 テンダーロイン |
2,363 | 2,236 | 101.5 | 92.9 | 101.5 | 98.5 | ||
チャックリブ | 1,171 | 1,368 | 95.5 | 87.4 | 75.9 | 116.7 | ||
オセアニア産 | 冷凍品 | チャック & ブレード | 725 | 719 | 101.3 | 72.0 | 85.8 | 100.6 |
フルブリスケット | 586 | 566 | 86.4 | 69.8 | 71.6 | 92.8 | ||
ポイントエンドブリスケット | 629 | 618 | 84.9 | 71.4 | 72.9 | 92.7 | ||
ナーベルエンドブリスケット | 540 | 521 | 86.3 | 66.8 | 67.8 | 90.6 | ||
キューブロール | 1,685 | 1,803 | 104.3 | 89.8 | 88.1 | 109.7 | ||
ストリップロイン | 1,490 | 1,553 | 96.6 | 98.9 | 99.4 | 103.4 | ||
テンダーロイン | 2,660 | 2,703 | 101.2 | 89.7 | 92.4 | 102.1 | ||
トップサイド | 883 | 858 | 98.7 | 80.4 | 82.7 | 97.7 | ||
カウミート | 673 | 674 | 100.0 | 95.1 | 94.4 | 100.7 | ||
エージドビーフフルセット | 1,027 | 1,038 | 100.5 | 88.0 | 92.4 | 100.0 | ||
冷蔵品 | キューブロール | 2,019 | 1,961 | 107.9 | 88.4 | 100.8 | 95.6 | |
トップサイド | 899 | 954 | 96.5 | 78.6 | 72.6 | 103.8 | ||
フルセット | 1,059 | 1,047 | 99.9 | 84.6 | 87.7 | 99.2 |
注:価格は、単純平均である。消費税額分は含まない。 B小売価格 国産牛肉、輸入牛肉ともおおむね横ばい ・ 国産牛肉(かた、東京)の小売価格は、2年秋に若干低下したものの、3年に入 って再び2年夏の水準にまで戻し、390円台で推移している(3年4月391円/100g)。 輸入牛肉(冷凍かた、東京)は、2年夏に一時弱含みとなったものの、おおむ ね横ばいで推移している(図12)。 C子牛価格 一時の低迷から回復した後やや弱含みへ ・ 和子牛価格は、和めすは元年12月、和去勢は2年1月に過去最高価格を記録した 後、昨年3月にかけて5〜6万円の低落をみせ、その後、短角種の出荷が集中した 10月を除き横ばいから回復基調で推移してきた。3年1月に入り、価格は弱含みに 転じ、3月は和めすは406千円、和去勢雄は495千円に低下した(図13)。 なお、主要市場の価格動向は図14のとおりとなっている。 ・ 乳用雄子牛は、2年1月に、235千円と過去最高値を記録した。その後次第に価 格を下げ、8月には188千円となった後、横ばいで推移し、1月以降弱含みとなっ ている(3年3月176千円)。 ・ また、生後7日程度のヌレ子の農家販売価格も6月以降急落し、8月には74千円 となった。その後9月以降2月まで持ち直したが、3月には、72千円となった(図 15)。 ・ 子牛の不足払いの対象となる品種別の第4四半期の平均売買価格をみると、 「黒毛及び褐毛和種」は依然として保証基準価格を大幅に上回る水準で推移した ものの、「その他の肉専用種(日本短角種、無角和種等)」が大幅に下回ったた め、第3四半期に引き続き第4四半期においても生産者補給金の交付が行われるこ ととなった。 また、「乳用種」の平均売買価格は、第3四半期からみるとかなりの低下傾向 がみられるが、保証基準価格を下まわるには至っていない(表4)。 表4 平成2年度第4四半期の指定肉用子牛の平均売買価格について (単位:円/頭)
品種区分 |
黒毛和種及 び褐毛和種 |
その他の肉専用種 (日本短角種、 無角和種等) |
乳用種 |
価格 |
|||
保証基準価格 | 304,000 | 214,000 | 165,000 |
合理化目標価格 | 267,000 | 188,000 | 142,000 |
平均売買価格 第1四半期 第2四半期 第3四半期 第4四半期 |
446,200 463,000 495,900 468,300 |
225,300 214,200 181,000 172,900 |
222,700 187,000 200,600 178,900 |
資料:農林水産省畜産局 ・ なお、昨年4月から当事業団が全国107の指定市場を対象に子牛の価格調査を実 施しており(巻末資料)、当調査による3年4月の価格は、表5のとおりとなって いる。 表5 3年4月の肉用子牛価格 (雄雌平均価格、速報値)
品 種 | 価 格 | 対前年同月比 | 対前月比 |
千円/頭 | % | % | |
黒毛和種 | 456 | 99.1 | 98.1 |
褐毛和種 | 337 | 91.1 | 100.9 |
ホルスタイン | 170 | 74.2 | 104.9 |
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