(1) 生乳生産 低迷していた生産はようやく増産に ・ 63年度、平成元年度と高い伸びを記録した生乳生産の伸び率は、平成2年に入 り次第に鈍化し、8月以降11月まで前年同月を下回って推移した。その後、伸び 率(前年同月比)はプラスに転じ、月を追って上昇し、3年3月も前年水準を上回 ったが(前年同月比101.1%)、2年度計では前年度比0.8%の伸びにとどまった (図28)。 これを北海道、都府県別にみてみると、年度前半までは同様な傾向がみられる が、後半の生産動向に大きな違いがみられる。北海道の生乳生産の伸びは2年10 月にプラスに転じた後、毎月上昇し、3年3月には104.9%と大きな伸びとなった。 一方、都府県は、2年10月以降、前年水準を下回っており、3月も前年同月比99.0 %にとどまった。 ・ これを季節調整値でみると、都府県の生産は、2年8月を境に回復に転じている ものの、回復の足取りは重く、10月以降おおむね横ばいで維持している。一方、 6月以降ほぼ横ばいで推移してきた北海道の生乳生産は10月に入って上昇に転じ、 3年3月には年間生産量319万トンの水準に達している。 この結果、全国ベースの生乳生産量は、季節調整値では2年9月以降着実に回復 しており、3年3月は2年春のピーク時より高水準となっている(図29、30、31)。 ・ 乳用めす牛のと畜頭数は、2年6月まで前年同月水準を下回ったが、10月以降前 年同月比で高い伸びを示し、3年3月は、3.3%増となった。この結果、2年度計で は、前年度とほぼ同水準となった(前年度比99.8%)。 一方、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では30%程度となり(3年3月26.2%)、 逆に、経産牛の割合は、55%から70%程度と大きく上昇している(3年3月73.8%) (巻末統計参照)。 (2) 飼養動向 頭数は前年並み、地域別には北海道増加、都府県わずかに減少 ・ 平成3年2月1日の乳用牛飼養頭数は2,067千頭(前年同期比100.1%)、また経 産牛頭数は1,284千頭(前年同期比99.7%)とほぼ前年並みであった。 ・ 地域別にみると、飼養頭数、経産牛頭数とも北海道は増加しており(それぞれ 前年同期比102.7%及び103.2%)、反対に都府県はわずかながら減少している (それぞれ前年同期比98.9%及び98.2%)。 (3) 飲用牛乳等の需給 高い伸びを続けていた需要は3月に伸び鈍化へ ・ 飲用等向け処理量は、2年5月以降前年同月比で高い伸びを示しており、3年3月 にはわずかに伸びが鈍化した(前年同月比101.6%)ものの、2年度計では前年度 比2.7%の伸びとなった(図33)。 ・ これを季節調整値でみると、2年5月から8月にかけて順調に伸びた1日当たり飲 用等向け処理量は、9月以降おおむね横ばい傾向で推移している(図34)。 ・ 飲用牛乳の生産は、前年同月比で2年5月以降高い伸びを示し、10月に6.3%増 を記録したが、その後伸び率は鈍化の傾向にあり、3年3月には伸び率がマイナス となり前年同月比0.3%減となった(図35)。この結果、2年度計では前年度比3. 2%の伸びとなった。季節調整値でみると、9月以降横ばいもしくは減少傾向で推 移している(図36)。 ・ その内訳をみると、比較的高い伸び率を示していた牛乳の伸び率については3 年3月に2年4月以来はじめて減少を示した(前年同月比99.0%)。季節調整値で みると最近は横ばいもしくは減少傾向で推移しているものとみられる。加工乳に ついては3年3月に前年同月比4.1%増と高い伸びを維持しているが、季節調整値 でみると2年末以降は横ばいで推移している(図37)。 ・ 醗酵乳の生産は2年6月まで前年同月比で高い伸びを示したが、7月以降伸び悩 んでおり、3年3月は前年同月比95.4%と前月に続き前年水準を割り込んだ(図 35)。この結果、2年度計では前年度比103.5%となった。 一方、乳飲料の生産は、6月以降高い伸びを続けており、3年3月も前年同月比 6.3%増と大きな伸びを示し、2年度計では、前年度比107.9%と高い伸びを示し た(図35)。 (4) 乳製品の需給、価格動向 飲用需要の回復に伴い生産は急減、事業団はバター・脱脂粉乳を輸入・放出 ・ 2年5月以降の飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩みに伴い乳製品向け生乳 処理量の伸びは5月に大きく鈍化したのに続き、6月にはほぼ2年ぶりに前年同月 を下回り、夏から秋口にかけては前年同月を10%近く下回った。その後、低落率 は徐々に縮小し、3年3月は10ヵ月振りにわずかながら前年同月を上回り、前年同 月比100.6%となった(図33)。しかしながら2年度計では3年ぶりに伸び率が減 少した(前年度比97.7%)。 これを季節調整値でみると、2年8月を境に回復に転じ、3年1、2月に伸びが鈍 化したものの、3年3月まで順調な回復をみせている(図38)。 ・ これに伴い、2年6月以降前年同月を下回っているバター、脱脂粉乳の生産量は、 11月から減少率(前年同月比)縮小の傾向にあるが、3年3月の生産は、乳製品向 け生乳処理量がプラスに転じたにもかかわらず、クリーム、全粉乳の生産が伸び た(前年同月比クリーム115.4%、全粉乳111.4%、巻末統計参照)ため、引き続 き前年水準を下回った(前年同月比バター94.6%、脱脂粉乳96.8%)(図39、 40)。 また、2年度計では、バター、脱脂粉乳の生産は、それぞれ前年度比92.8%、 96.5%となった。 ・ バター及び脱脂粉乳生産の季節調整値は、1日当たり乳製品向け処理量とおお むね同様の動きを示し、夏を境に回復に転じており、3年に入って横ばい傾向が みられるもののバターは年間生産量換算77千トン、脱脂粉乳で182千トンの水準 まで回復している(図41、42)。 ・ こうした乳製品の需給動向を反映して、バターの卸売価格は2年10月以降、脱 脂粉乳も9月以降上昇に転じ、3年3月には、バターは1,152円/kg、脱脂粉乳13,5 59円/25kgと上昇した(図39、40)。このような状況にあって、畜産振興事業団 は、平成2年度中に、バター7,500トン、脱脂粉乳5,000トンの輸入手当を行うと ともにバター6,000トン、脱脂粉乳3,962トンを放出した。また、平成3年度に入 って、バター2,000トン、脱脂粉乳11,991トンの輸入手当を行うとともにバター 1,456トン、脱脂粉乳3,934トンを放出した。 輸入手当(買入れ入札) [平成2年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
2年 9月12日 11月 1日 12月27日 3年 2月 5日 |
2,992 1,008 2,000 1,500 |
− − 4,000 1,000 |
計 | 7,500 | 5,000 |
[平成3年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
3年 4月10日 | 2,000 | 11,991 |
計 | 2,000 | 11,991 |
放出(売渡し入札) [平成2年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
2年11月 6日 11月21日 12月26日 3年 2月 7日 2月15日 |
2,342 549 1,109 895 1,105 |
− − − 2,163 1,799 |
計 | 6,000 | 3,962 |
[平成3年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
3年 4月11日 4月25日 |
1,456 − |
1,027 2,906 |
計 | 1,456 | 3,934 |
注 これら表の数値は四捨五入してあるのでそれぞれの合計の値は必ずしも 計の値と一致しない。
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