−食肉消費構成実態調査事業報告書より−
(食肉生産流通部)
この調査は、事業団が(財)外食産業総合調査研究センターに委託して実施した 「食肉消費構成実態調査」の成果をとりまとめたものです。今回は、社員食堂の概 要と、そこでの牛肉の仕入状況等について報告します。 第1章 調査の概要 1 調査の目的 食肉の消費構成については、近年、家計消費及び加工仕向け以外の需要が伸びて いる。しかし、その中身は外食産業への仕向けとみられているものの、仕向け先が 多岐にわたっていることもあってその実態がこれまで明らかになっていなかったの が現実である。 この調査は、社員食堂における食肉消費実態を調査分析することによって、食肉 需要特性と、課題を明らかにすることを目的として実施し、また、そこで得られた 需要特性を基として、食肉の消費構成についても、あわせて分析を行った。 2 調査の方法 (1) アンケート調査 調査票は、東証1部・2部上場企業本社事務所、及び全国工場通覧に掲載される 従業員規模 300人以上の工場、あわせて1万箇所に配付した。有効回収票数は 1,6 91票(回収率16.9%)であり、そのうち調査分析の対象となる社員食堂設置件数は 906ヶ所であった。この他、社員食堂における食肉消費の実態、メニュー構成に対 する考え方など、随時、関連企業関係者に対して聞き取り調査を実施した。 (2) 調査期間 平成4年11月1日から5年3月31日の間に実施した。 第2章 社員食堂における喫食サービスの提供状況とメニュー実態 1 社員食堂の有無 本調査に回答した1,691事業所(本社ないしは工場)の中で、なんらかのかたち で社員食堂を設けているのは906事業所であり、全体の53.6%であった。従業員規 模別にみると、規模が大きくなるほど実施率は高まる。従業員規模100人未満のと ころでの実施率が34.4%、100〜300人未満では30.9%であるのに対して、300人以 上の事業所になると実施率は急激に高まる。 社員食堂の実施にあたっては、そこで働く人数が300人を超える規模であるか否 かが、1つの目安となる。 2 社員食堂の経営形態 社員食堂といっても、運営の仕方は様々である。最も多いものは「1つの会社が 1つの給食会社に委託した専用食堂」であり、社員食堂を設置している会社906社 のうち707社(78.0%)がこの形態のものである。 3 社員食堂の事業規模と事業内容 (1) 社員食堂の事業規模 ア 従業員規模 社員食堂での調理事業を受託している給食会社(事業所)の従業員規模は、全体 では「5〜10人未満」の会社が20.8%と最も多く、以下、「10〜30人未満」(18.7 %)、「5人未満」(10.2%)、「50人以上」(3.6%)の順となっている。 これを従業員規模別にみると、「社員数3,000人以上」の会社に入っている給食 会社(事業者)での従業員数が平均53.7人と最も多く、次いで「1,000〜2,000人未 満」(45.6人)、「500〜1,000人未満」(32.7)人、「300〜500人未満」(30.2人) の順であった。一方、従業員規模の小さな会社(事業所)では8〜12人程度が平均 となっている。 イ 1日あたり平均提供食数 社員食堂の事業規模をみるもう1つの指標として「1日あたりの平均提供食数」 をみると、「500〜1,000食未満」が全体の20.3%と最も多く、次いで「200〜300食 未満」が18.7%、「100〜200食未満」15.1%、「300〜400食未満」12.7%、「400 〜500食未満」10.8%の順であった。 委託会社の従業員規模別に、1日あたり平均提供食数をみると、従業員規模が大 きくなるに従い、提供食数も増加するという傾向はみられる。 (2) 喫食サービスの提供状況 ア 事業内容 社員食堂を設けている906社での実態をみると、「昼食」を提供している食堂は 全体の97.7%であり、従業員規模の大小に関係なく広く分布している。「夕食」を 提供しているのは60.8%であり、「朝食」は43.4%であった。なお、夜食を提供し ているのは32.9%の会社で、喫茶は15.6%にとどまる。なお、役員、接待用として は18.8%が実施しており、予想以上に高い実施率となっている。 イ 稼動日 食材需要量を規定する要因としての「稼動日」は、「土曜・日曜・祝日を除く毎 日」とする事業所が490事業所で全体の54.1%を占める。次いで「毎日」が22.2%、 「日曜・祝日を除く毎日」が20.4%であった。 4 社員食堂におけるメニュー実態 (1) 登録献立数 906社の登録献立数をみると、最も多いのが「30種類未満」(47.0%)であり、 次いで「50〜100種類未満」(8.8%)、「100〜200種類未満」(7.5%)、「30〜 50種類未満」(5.1%)の順であった。 またこれを委託会社の規模の大小からみると、一般的には従業員規模が大きくな るに伴い登録献立数も増える傾向がある。例えば従業員100人未満の会社における 社員食堂では、平均95.2種類のレシピが登録されているが、従業員3,000人以上の 会社における社員食堂では平均313.0種類と3.3倍の量のレシピが登録されている。 (2) 登録献立の主要食材別内訳 献立を主要食材別にみると、「豚肉」を使った献立数の平均が28.9メニューで最 も多く、次いで「魚介類メニュー」27.2、「鶏肉メニュー」25.8、及び「牛肉メニ ュー」15.7の順であった。 回答した906社の食材別献立数が、全献立数の中で何割ぐらいを占めているのか をみる。 まず牛肉を使った献立の全体に占める割合をみると、「1割」とする企業が全体 の58.7%で最も多く、次いで「2割」(13.8%)、「3割」(2.6%)の順になっ ている。これに対して豚肉を使った献立は、「1割」とする企業は13.5%にとどま り、「2割」(35.8%)、及び「3割」(31.7%)が主流となっている。他の食材 に比べて「4割」「5割」と答える企業比率も高い。鶏肉を使った献立数では、 「2割」とする企業の比率がさらに高まり全体の41.9%に達する。「3割」も24.0 %と多い(図)。 第3章 社員食堂における牛肉の仕入状況等 1 仕入状況 社員食堂を設置している906社のうち、牛肉を仕入れているのは718社(79.2%) であった。 1日あたり平均提供食数の規模別に仕入状況をみると、提供食数が多い社員食堂 ほど牛肉を仕入れている比率が高く、1日50食未満の社員食堂で牛肉を仕入れてい るのは33.3%にとどまるのに対して、300〜400食規模になるとその比率は80.9%に なり、3,000食以上では90.9%に達している。 次いで、回答した507社について、年間仕入量をより具体的にみると、 ア 国産牛肉を仕入れたのは303社(59.8%)であり、1社あたりの平均仕入量は 407.3s/年であった。 イ 輸入牛肉を仕入れたのは401社(79.1%)であり、1社あたりの平均仕入量は 498.9s/年であった。 ウ 国産品か輸入品か不明ながら牛肉を仕入れたのは123社(24.3%)であり、1 社当たりの平均仕入量は356.1s/年であった。 エ この結果、回答した507社全体の牛肉総仕入量は372.2トン、1社あたりの平均 仕入量は552.2s/年であった。 2 輸入品の仕入量に対する比率(輸入品比率) 牛肉を仕入れている社員食堂のうち、仕入量に占める輸入品の比率を求めること ができた401社についてその分布をみると、「100%」と答えた社員食堂が257社で 全体の64.1%を占めている。次いで「70〜80%未満」(5.7%)、「80〜90%未満」 (5.7%)、「90〜100%未満」(5.5%)の順であり、全体の4分の3にあたる社 員食堂では、牛肉仕入量に占める輸入品割合が80%以上となっている。 3 仕入量の増減と輸入比率の上昇・低下の関係 3年前(平成元年)に比べて、牛肉の仕入量が増えたか否かについての問いに回 答した486社のうち、「10%以上の増加」は81社(16.7%)、「10%未満の増加」 127社(26.1%)で、増加店比率は42.8%であった。 牛肉の仕入量が増加している208社のうち、無回答の143社を除いた65社について、 最近の輸入比率の変化との関係をみると、輸入比率が「低下している」とする食堂 が38社(58.4%)で最も多く、次いで「変化なし」(24.6%)、「上昇している」 (16.9%)であった。仕入量が増加している中で輸入比率が「低下」ないしは「変 化なし」であるため、仕入量の増加は、国産牛肉の使用増加をあらわしている。 この点は、牛肉仕入量が3年前に比べて変化していないという93社についてもみ られ、輸入比率が「低下している」とする食堂が63社(67.7%)を占めており、国 産牛肉の使用増加をあらわしている。一方仕入量が変化していない中で輸入比率が 上昇している17社(18.3%)は、輸入牛肉の増加を表している(表1)。 いずれにしても、牛肉の使用にあたっては国産牛肉によって牛肉総体の使用量を 伸ばしている食堂と、牛肉総体の使用量は現状維持でも国産牛肉を志向している食 堂が業界の主流を形成しているといえよう。 表1 仕入量変化と輸入比率変化との関係(牛肉) (単位:社、%)
輸入比率の変化 | |||||
全体 | 上昇 | 変化なし | 低下 | ||
仕入量の変化 | 全体 | 167 (100.0) |
31 (18.16) |
30 (18.0) |
106 (63.5) |
増加 | 65 (100.0) |
11 (16.9) |
16 (24.6) |
38 (58.4) |
|
変化なし | 93 (100.0) |
17 (18.3) |
13 (14.0) |
63 (67.7) |
|
減少 | 9 (100.0) |
3 (33.3) |
1 (11.1) |
5 (55.6) |
4 輸入品比率の水準と輸入品比率の上昇・低下との関係 牛肉を仕入れた給食企業のうち、輸入比率の水準と輸入品の増減との関係をみる ことができる135社についてみると、最近輸入品が「増加している」は20.0%であ った。 これを輸入比率の水準別にその傾向をみると、@輸入比率の低いところでは増々 輸入牛肉を減らしており、比較的増やしているのは輸入比率が中位水準の給食企業 であること、及びA輸入比率の高い給食企業でも牛肉使用絶対量の使用状況からみ れば減らす傾向のところが主流となっていること、などがみてとれる(表2)。 表2 輸入品の増減と輸入比率水準との関係(牛肉・数量) (単位:社、%)
輸入品の増減 | |||||
全体 | 上昇 | 変化なし | 低下 | ||
仕入量の変化 | 全体 | 135 (100.0) |
27 (20.0) |
22 (16.3) |
86 (63.7) |
40%未満 | 12 (100.0) |
1 (8.3) |
1 (8.3) |
10 (83.3) |
|
40〜70%未満 | 13 (9.6) |
5 (38.5) |
1 (7.7) |
7 (53.8) |
|
70〜100% | 110 (81.5) |
21 (19.1) |
20 (18.2) |
69 (62.7) |
5 牛肉の部位別仕入状況 牛肉を仕入れた給食企業718社のうち部位別仕入状況が分かる451社について、部 位別仕入状況をみると、まず国産牛肉は451社で仕入れた仕入総量は119,082sであ り、1社あたり仕入量は264.0sであった。 このうち最も仕入量が多い部位は、「かた・ばら」で、仕入量61,396sは国産牛 肉仕入量全体の51.6%にあたる。次いで多いのは「挽き肉」、「かたロース・リブ ロース」の順になっている(表3)。 次に輸入牛肉についての部位別仕入状況が分かる509社について、仕入総量をみ ると143,508sであり、1社あたりの仕入量は281.9sであった。 輸入牛肉の中で最も仕入量が多い部位は「ばら」で、仕入量66,765sは輸入牛肉 仕入量全体の46.5%にあたる。次いで「もも」、「かた」の順となっている(表4)。 表3 最近1年間における国産牛肉部位別仕入状況(回答企業合計値)
部 位 | 仕 入 量 | ||
仕入量(kg) | 構成比(%) | 1社あたり 仕入量/年(kg) |
|
枝 肉 | 8,099 | 6.8 | 18.0 |
かたばら | 61,396 | 51.6 | 136.1 |
かたロース リブロース |
10,783 | 9.1 | 23.9 |
サーロイン ヒ レ |
5,093 | 4.3 | 11.3 |
ランプ も も |
7,592 | 6.4 | 16.8 |
そともも | 5,863 | 4.9 | 13.0 |
挽き肉 | 20,256 | 17.0 | 44.9 |
合 計 | 119,082 | 100.0 | 264.0 |
表4 最近1年間における輸入牛肉部位別仕入状況(回答企業合計値)
部 位 | 仕入量 | ||
仕入量(kg) | 構成比(%) | 1社あたり 仕入量/年(kg) |
|
枝 肉 | 8,719 | 6.1 | 17.1 |
フルセット | 2,929 | 2.0 | 5.8 |
か た | 27,206 | 19.0 | 53.4 |
ば ら | 66,765 | 46.5 | 131.2 |
ロイン | 5,786 | 4.0 | 11.4 |
も も | 28,223 | 19.7 | 55.4 |
バルク | 3,880 | 2.7 | 7.6 |
合 計 | 143,508 | 100.0 | 281.9 |
第4章 食肉類に対する今後の取り組み方針 1 牛肉のメニュー数についての意向 今後、牛肉を使ったメニューに対してどのように取り組んでいくかをみると、 「従来通り」が54.7%で最も多く、次いで「少し増やす」(27.4%)、「増やす」 (6.6%)であった。増やす方向を考えている給食企業は全体の34.0%である(表 5)。 表5 1日あたり平均提供食数規模別、今後の牛肉メニューへの取り組み意向 (単位:社、%)
合計 | 増やす | 少し 増やす |
従来 通り |
少し 減らす |
減らす | 無回答 | |
全体 | 906 100.0 |
60 6.6 |
248 27.4 |
496 54.7 |
15 1.7 |
5 0.6 |
82 9.1 |
50食未満 | 9 100.0 |
1 11.1 |
2 22.2 |
5 55.6 |
− − |
− − |
1 11.1 |
50〜100 食未満 |
30 100.0 |
3 10.3 |
5 16.7 |
15 50.0 |
1 3.3 |
1 3.3 |
5 16.7 |
100〜200 食未満 |
137 100.0 |
6 4.4 |
26 19.0 |
83 60.6 |
3 2.2 |
2 1.5 |
17 12.4 |
200〜300 食未満 |
169 100.0 |
11 6.5 |
43 25.4 |
95 56.2 |
2 1.2 |
− − |
18 10.7 |
300〜400 食未満 |
115 100.0 |
8 7.0 |
35 30.4 |
57 49.6 |
3 2.6 |
2 1.7 |
10 8.7 |
400〜500 食未満 |
98 100.0 |
4 4.1 |
26 26.5 |
59 60.2 |
2 2.0 |
− − |
7 7.7 |
500〜1000 食未満 |
184 100.0 |
15 8.2 |
61 33.2 |
96 52.2 |
1 0.5 |
− − |
11 6.0 |
1000〜2000 食未満 |
96 100.0 |
7 7.3 |
35 36.5 |
47 49.0 |
3 3.1 |
− − |
4 4.2 |
2000〜3000 食未満 |
29 100.0 |
2 6.9 |
8 27.6 |
18 62.1 |
− − |
− − |
1 3.4 |
3000食以上 | 22 100.0 |
2 9.1 |
3 13.6 |
17 77.3 |
− − |
− − |
− − |
無回答 | 17 100.0 |
1 5.9 |
4 23.5 |
4 23.5 |
− − |
− − |
8 47.1 |
2 牛肉仕入量に対する将来見通し 社員食堂施設を有する 906社について、今後の仕入に対する意向を聞くと、増え るとみている企業は全体の44.8%であり、豚肉や鶏肉に比べて指摘比率は高めであ った。そのうち、「かなり増える」とみている企業は 3.6%であった。 これを年間仕入数量規模からみると、増えるとみている企業(「かなり増える」 +「少し増える」)の比率が最も高いのは、現在牛肉を年間にして「600〜700s未 満」の規模で仕入れている企業であった(71.4%)。次いで多かったのは、「500 〜600s未満」(66.6%)、「300〜400s未満」(55.8%)、「400〜500s未満」 (51.3%)などである。牛肉仕入規模が中位以上の給食会社において高めとなって いるのが特徴である(表6)。 表6 年間仕入数量規模別、今後の仕入意向別企業数(牛肉) (単位:社、%)
合計 | かなり増える | 少し 増える |
変化なし | 少し 減る |
かなり減る | 無回答 | ||
全体 | 906 100.0 |
33 3.6 |
373 41.2 |
361 39.8 |
56 6.2 |
4 0.4 |
79 8.7 |
|
年間仕入数量規模 | 300kg未満 | 372 100.0 |
13 3.5 |
156 41.9 |
164 44.1 |
27 7.3 |
2 0.5 |
10 2.7 |
300〜400kg未満 | 77 100.0 |
4 5.2 |
39 50.6 |
26 33.8 |
6 7.8 |
− − |
2 2.6 |
|
400〜500kg未満 | 37 100.0 |
2 5.4 |
17 45.9 |
12 32.4 |
5 13.5 |
− − |
1 2.7 |
|
500〜600kg未満 | 27 100.0 |
5 18.5 |
13 48.1 |
5 18.5 |
2 7.4 |
1 3.7 |
1 3.7 |
|
600〜700kg未満 | 21 100.0 |
2 9.5 |
13 61.9 |
6 28.6 |
− − |
− − |
10 8 |
|
700kg以上 | 140 100.0 |
3 2.1 |
63 45.0 |
63 45.0 |
7 5.0 |
− − |
4 2.9 |
|
無回答 | 44 100.0 |
− − |
24 54.5 |
14 31.8 |
5 11.4 |
− − |
1 2.3 |