多岐にわたる鶏卵の利用
−キューピー鰍ノ聞く−


 平成4年度の鶏卵の生産量は、3年度に引き続き増加基調にあります。一方、需
要は景気後退のあおりを受けて、業務用及び加工用需要が減少したことや、家計消
費が伸び悩んだことにより、4年1月から卵価の低迷が続いています。

 こうした状況の中で、鶏卵利用食品の需給動向と今後の見通しについて、実際に
鶏卵利用食品の製造・販売に携わっておられる、キユーピー株式会社タマゴ営業本
部商品一部高橋稔部長と広報室中村輝夫課長にお話を伺う機会を得ました。


マヨネーズ等ドレッシング類は売上高の4割

 我が社は、大正14年に日本で初めてマヨネーズの製造販売を開始しました。この
ため、一般にはマヨネーズのメーカーとして名が通っていますが、卵加工品や瓶缶
詰類をはじめとした各種食料品の製造、加工、販売を行っているほか、医薬品等に
使用されるリゾチームなどの生理活性物質を鶏卵等から抽出するファインケミカル
部門や、立体水耕栽培パネルに養液を噴霧して工業的に野菜栽培を行うTSファー
ムの販売など、マヨネーズを柱とした総合食品メーカーとしての道を歩んでいます。
 11月決算がまもなく出ますが、売上高は約2, 168億円になる見込みです。そのう
ち、マヨネーズに代表されるドレッシング類は約40%、アヲハタ印のジャム、スイ
ートコーンやベビーフード等の各種瓶缶詰類が20%、液卵、凍結卵、乾燥卵等の卵
製品が20%、冷凍・冷蔵食品ほかが20%という売上比率になっています。

 マヨネーズ等ドレッシング類の業界全体での生産量は、平成3年で29万6千トン
ですが、そのうち約6割の17万8千トンを当社が生産しています。マヨネーズだけ
に限りますと、全国の生産量は21万6千トンで、10年前の昭和56年が19万トンだっ
たことからみますと、ずい分昔から親しまれていたこともあって、マヨネーズの需
要は高原状態にあると思われます。

 マヨネーズは卵の乳化作用を利用した代表的な加工品で、卵黄のみを用いる卵黄
型と、全卵を用いる全卵型の2つのタイプがあり、当社の製品は主に卵黄型です。


多くの食品加工等にも利用される鶏卵

 鶏卵の利用は多方面かつ多岐にわたっています。一般的な利用法で考えますと、
素材をそのまま用いるものと鶏卵の持つ機能を活かしたものとに分けられます。

 鶏卵をそのまま用いるものとしては、生のまま食べるほかに、煮る、蒸す、焼く、
炒るなどの手軽な調理で食べられるので、家庭等での鶏卵の利用はほとんどこれに
当てはまります。

 それから、鶏卵の持つ起泡性、熱凝固性、乳化性、栄養価、色調という5つの機
能は、様々な製品に利用されています。

 起泡性は、製菓・製パン業界でスポンジケーキやメレンゲ、あわゆきかん等に活
かされており、熱凝固性は、かまぼこ、めん類、ハム、卵焼きなどに利用されてい
ます。乳化性は、マヨネーズやドレッシングのほかアイスクリームにも利用され、
鶏卵の持つ良質の栄養価という機能は、主に病人の回復食や老人等の食事に活かさ
れています。また、鶏卵の持つ黄色い色は食味をそそるということで、カステラや
プリンの色として使われていますし、変わったところでは、熱を加えるとツヤがで
るということで、栗饅頭のつや出しに使われています。

 鶏卵から抽出される微量生理活性物質は、食品はもちろん、化粧品や医薬品にも
利用されています。現在、卵白からとれるリゾチームや卵黄からとれるレシチン等
がありますが、鶏卵にはいろいろな有益な物質が含まれていますので、この分野で
は今後もさらに研究が進むものと思われます。

 このように、鶏卵の利用は幅広いのですが、我が社はマヨネーズ等のドレッシン
グ類をはじめとして、厚焼たまご、オムレツ、錦糸卵、ゆで卵の缶詰などの業務用
食品を製造販売しているほか、全卵、卵白、卵黄などの形で、製菓・製パン、水産
加工、ハム、めん類等の業界へ原料として納入している外販部門があります。

 原料納入元としてこれらの業界の動向をみた場合、食品業界も景気後退で厳しく
なってくると思われます。


鶏卵生産量の7〜8%を割卵

 当社で割卵するものは、自社製品に使用するものと各種の業界に外販しているも
のを加えると、日本の生産量(約250万トン)の7〜8%に当たるのではないでし
ょうか。鶏卵の購入は、産地等と契約して買い入れています。

 マヨネーズの需要には、季節性はほとんどありません。野菜の値段の高低に若干
左右されるくらいです。テーブルエッグの需要も、年間を通じてほぼ一定していま
す。しかし、外販の部分は各業界の需要が季節によって違っています。例えば、卵
を使った夏の商品といえば、卵豆腐やアイスクリーム等ですが、秋以降になると、
ケーキ、カマボコ、ハム、めん類等の需要が活発になります。

 最近では鶏舎の温度管理や飼育技術も進んで、生産者も需要に応じた生産を心が
けてきているので、卵の生産量も昔ほどの山谷はなくなりました。


消費者の健康・安全性志向により製品も多様化

 最近の消費者のニーズとして、健康志向や安全性志向がありますが、マヨネーズ
についても、当社では食用植物油脂を半分に抑えた、カロリー半分のキユーピーハ
ーフという製品を平成3年9月から発売しています。若い女性をターゲットと考え
ていたのですが、カロリーの取り過ぎに気を使っている中高年層の需要もかなりあ
ります。 

 それに、最近アレルギーやアトピー性皮膚炎が問題になっています。アレルギー
は食べ物だけが原因ではないと思いますが、食べ物が引き金にならないように気を
配っていく必要があると考えています。一般的には、生後8カ月以前の子供には卵
白は食べさせない方が良いと言われているので、8カ月以前の子供用のベビーフー
ドには卵黄しか使わないようにしていますし、これらの流れとして 「あわぼーる」、
 「ひえりんぐ」 などの、アワ、ヒエを使ったスナック菓子的なベビーフードも作っ
ています。ただ、卵を全て悪者にするのではなく、栄養全般という観点から考えて
ほしいと思っています。


今後は加工、業務用の伸びに期待

 家計調査にみられるように、一般家庭におけるテーブルエッグとしての鶏卵の消
費は飽和状態になっているのではないでしょうか。鶏卵全体の需要を伸ばすという
ことから考えますと、今後は加工用、業務用にいかに使用されるかにかかっている
と思います。この点でも、海外において卵がどんな使われ方をしているのかを勉強
していく必要があると考えています。


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