年の瀬も押し迫まった12月28日に、島根県大社町にある島根ワイナリー(周藤昌 夫場長)を訪問する機会を得ました。ここは、特産のワインとともに、島根和牛を 提供していることで有名です。いろいろとお話を伺った中から、島根和牛にまつわ る話題を中心にレポートします。 入場者数500万人突破 島根ワイナリーは、JA島根経済連の直営で、昭和61年にオープンされました。 県特産のぶどうを原料にしたワイン醸造工場、見学コース、試飲コーナーに、62年 からはバーベキューハウスが併設され、今では“島根ワイン”と“島根和牛”を楽 しめる観光名所として定着しています。 出雲大社の観光ルートにのった立地条件の良さもあり、年々来場者が急増し、12 月23日には、6年前のオープン以来、通算入場者数が500万人を突破しました。特 に、平成4年には、岩国哲人出雲市長のアイデアで建設された出雲ドームが完成す るなど、一帯の観光施設の整備が進んだこともあり、昨年比10%増の来場者があり ました。 ブランド化に取り組む島根和牛 ぶどうを原料とするワインは、アルコールとさわやかな酸味が食欲を増進させ、 消化を助ける健康酒です。ワインと一緒にバーベキューで食べる牛肉もまた格別な ことを誰が見つけたのかは別として、これを名物に仕立てあげたことは関係者の御 苦心です。 島根といえば、和子牛の産地として知られていますが、現在、JA島根経済連は、 島根和牛のブランド化を推進しています。島根和牛のブランドの条件として、県内 の牛から生産された子牛を、県内で肥育し、県内でと畜・解体してAー4、Bー4 以上に格付けされたものとしています。島根の和牛というと今までは繁殖が中心で したが、農協直営の肥育センターを県内8カ所に設置するなど肥育にも力をいれて います。「(牛もワインも)本当のブランドとは、やはり地元で一貫して生産され たもの」と島根ワイナリー販売二課の藤原剛課長。 また、北海道三石町と提携して、もと牛のネットワーク事業を展開しています。 これは、島根和牛の雌牛と精液を三石町に供給し、生まれた子牛を島根に里帰りさ せ、肥育する事業です。今までにこの事業で里帰りした子牛は、3年間で265頭 (去勢7割、雌3割)にのぼり、県内で肥育されています。 表1 平成4年度(4−9月)の島根県子牛市場県外移出状況 (単位:頭、%)
区 分 | 雌 | 雄 | 計 | 割合 |
県 外 | 2,079 | 2,191 | 4,270 | 72.0 |
うち北海道 | 359 | − | 359 | 6.1 |
宮城県 | 260 | 162 | 422 | 7.1 |
長野県 | 83 | 221 | 304 | 5.1 |
山口県 | 127 | 208 | 335 | 5.7 |
佐賀県 | 97 | 404 | 501 | 8.5 |
県 内 | 620 | 1,038 | 1,658 | 28.0 |
合 計 | 2,699 | 3,229 | 5,928 | 100.0 |
県外移出率 | 77.0 | 67.8 | 72.0 |
資料:JA島根経済連調べ そのほか、島根和牛の子牛は、全国各地に移出され、それぞれの地域で肥育もと 牛または繁殖もと牛として飼養されています。平成4年4〜9月の子牛市場の県外 移出状況をみると、市場に搬入された子牛6千頭のうち7割以上が県外へ移出され ています(表1)。主な移出県は、北海道、宮城県、長野県、山口県、佐賀県など となっています。なお、最近の子牛市場の成績は、表2のとおりです。 表2 平成4年度(4−12月)島根県子牛市場成績 (単位:頭、円、kg)
性別 | 入場 頭数 |
取引 頭数 |
一頭当たり価格 | 平均 体重 |
kg当た り価格 |
平均 日令 |
||
最高 | 最低 | 平均 | ||||||
雌 | 4,337 | 3,919 | 2,410,200 | 26,700 | 567,739 | 261 | 2,170 | 260 |
雄 | 113 | 100 | 741,600 | 81,300 | 401,681 | 228 | 1,756 | 208 |
去勢 | 4,952 | 4,844 | 796,100 | 41,200 | 466,958 | 289 | 1,613 | 248 |
合計 | 9,402 | 8,863 | 2,410,200 | 26,700 | 512,662 | 275 | 1,858 | 253 |
資料:JA島根経済連調べ 注:和牛もと牛のみ 地域活性化の拠点として 最近の消費者ニーズの傾向として、規格のそろった大量販売製品が求められる一 方で、「本物」、「新鮮」、「安全」といった差別化商品が求められる傾向が益々 強まっています。島根ワイナリーでは、「和牛、ワインのほか、お米も地元のコシ ヒカリを使用、野菜、タレも地元産」と徹底して地元の味を大切にしています。地 域の特色を生かしながら、消費者ニーズに的確に対応した特産品を提供することに より、生産者と消費者を結びつける場所として、地域の活性化にも貢献している様 子をうかがうことができました。 (企画情報部 布野秀隆)