★ 事業団便り


発想の転換が必要なのではないか!
−計画生産から新システム再構築への提案−


 乳業経営者研修会は、事業団への出資者を対象に各分野の専門家を講師として招
き毎年実施しております。本年は、「厳しさを増す経営環境と企業の対応」という
テーマを軸に、10月21日と22日の二日間にわたり開催しました。

 その内容は、「酪農乳業をめぐる情勢」について農林水産省畜産局の川村牛乳乳
製品課長に説明を頂いた後、一般経済見通しについて「日本の景気・産業はどうな
るか」という演題で毎日新聞社の玉置論説副委員長に講演を頂きました。

 さらに、現場に密着したアップテンポな状況を把握するため、国内流通レベルの
動向については、「量販店の販売戦略」という演題で潟_イエーフーズライン商品
本部DMMの赤賀マネージャーに、また海外レベルの動向については、「海外の乳業
事情」という演題で鞄倹H加工原料第二本部の中西本部長代理に講演を頂きました。

 また、乳業経営者が抱えている昨今の問題のうち、特に人材確保等の問題に関し
ましては、「経営革新と人材育成」という演題で日本生産性本部の岡村参与に講演
を頂きました。

 各講演の中からポイントとなる点を紹介いたします。

 なお、紙面の関係で全部をお知らせできませんが、講演内容についていずれまと
めて発表したいと思っています。(本文中敬称略)


需給安定システムの再構築を提案(川村)

 計画生産が前提となっている現在の需給システムは、@飲用向けの需要の減退→
A乳製品の増加→B生乳生産の抑制、天候等の要因により起こる需給のアンバラン
スを解消しようとしているものの、このような乳製品が余るという状況になってか
ら蛇口に戻るというシステムでは、コスト的にも非効率であります。

 そこで飲用乳が余ったら、その余った分を脱脂粉乳やバターの加工に回さず、年
間を通じて10万トン程度見込める「全乳ほ育」やエサ用の「全粉」に置き変えると
いうシステムが考えられないものかということです。

 現在、これらにはエサ用の輸入脱脂粉乳を使っており、牛のみならず豚まで入れ
ると、生乳換算で約40万トンを輸入していることになります。

 全乳ほ育の需要でさえ毎年7〜8万トンあるので、現在の飲用乳の需要である5
00万トンの1.5%くらい狂ったとしてもそこの部分で吸収ができるということにな
るわけです。

 問題は、圧倒的に輸入脱脂粉乳の方が安いということによる価格差ですが、過剰
は毎年起こる話ではないので、業界全体でそこの部分について金を出し合ってでも
過剰のコストとして積み立てて置くといったような仕組みだってできるのではない
だろうかと提案しているところであります。

 また、需給計画というものにしましても、需要のぎりぎり目いっぱい生産するこ
とがいいことかどうかというのが一つあります。

 やはり、需要というのは一直線に伸びるというわけではないのですから、できる
だけその内輪の範囲で生産をやっていくというようなことが必要ではないでしょう
か。


平成不況の不思議(玉置)

 今回の不況は、日本経済がこれまで体験していなっかた不思議なことが多く、そ
の要因がよく解りません。不況は循環的に発生しており、最近では40年の証券不況、
46〜48年のドル・ショック、オイル・ショック不況、60年のプラザ合意による円高
不況と発生しました。

 今回の不況は、バブル不況といわれ異常好況後の反動による不況であり、前者の
ような外的要因による不況ではなく、まったくの自業自得的要因による不況であり
ます。

 不況は、鉄鋼、セメントといった素材企業から始まり、消費関連は一番最後に不
況になるといわれております。

 したがって、比較的影響が少ないといわれてきた食品関係が不況になるというこ
とは、戦前に経験したような大不況を意味します。

 今までの不況は大概24カ月以内に終わっておりましたが、今回の平成不況は、既
に36カ月と異常に長びいております。

 戦後三度の大きな不況と比べ、今回の不況で不思議なことは、今までと違って金
融政策がまったく効かない、つまり、いくら金融を緩和してもお金を借りる人がい
ないということであります。

 景気が悪いときには、公共投資、金融緩和、所得税減税という財政政策の三種の
神器がありまして、GNP450兆円の7%相当である30兆円規模の公共投資を今までに
打ち出しましたが、どこえ消えてしまったのかまったく効果を表しておりません。
金利も下げましたが、借り手がないため、これも効果を表していません。

 残っているのは、大型の所得税減税だけでありますが、これが効果を表すかどう
か解りません。

 今までの景気対策と違った、新たな対応が求められているのかもしれません。


問題は、輸入乳製品との折り合い(中西)

 ガット・ウルグアイラウンド(UR)交渉は、日本の農業のみならず世界の農業に
大きな影響を与えることになるが、憂慮すべき問題は世界的規模で農産物の減少を
招きかねないということであります。

 そうでなければ、農業保護の削減は絵に描いたモチのようなもので、できるはず
がないことになります。

 その場合、牛肉や果汁で国産品に対する影響を十分学んだように、URの決着は間
違いなく国産乳原料の縮小を招きかねないということであります。

 今日では、牛乳・乳製品は基礎食料の一つであり、必要欠くべからざる食品とい
う位置づけです。

 この食品としての位置づけは、市場環境がどのように変わってゆくとしても国民
が必要とする量を必ず確保しなければならないということであり、原料乳が有限で
あることを考えると、牛乳・乳製品の本質的なテーマは国内での供給をどう確保す
るかということに尽きるのでありましょう。

 結局、日本で消費される牛乳・乳製品の原料は国産牛乳が主でなければならない
ということです。


出てこない、じゃがバターの発想

 今回の研修会で、新システムの再構築(川村)、国内供給の重要性(中西)、ま
た催事による販売促進や新製品による需要の開発等(赤賀)、さまざまな有益な示
唆がありました。

 とりあえず、現在問題になっているバター在庫についていうならば、米の不作を
悲観的に考えず、例えば、「米の不足分を多少なりともじゃがいもバターでしのぐ」
というようなキャンペーンでバターの消費拡大を喚起する発想も必要なのではない
かと思います。

 タイミングとしては絶好の機会と思えるのですが。

(乳業部)
 
 

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