調査報告

ホテル・旅館業における食肉需要の実態

〜 食肉消費構成実態調査より 〜

      食肉生産流通部 


この報告は、 事業団が財団法人外食産業総合調査研究センターに委託した 「食肉消
費構成実態調査」 の結果の中から、 ホテル・旅館業における食肉需要の特性と仕
入れの状況について取りまとめたものです。  
第1章 調査の概要
 1 調査の目的

  これまでの調査で、 外食市場での食肉需要量は、 全食肉流通量の3割近くに達す
  ることが明らかになったが、 外食市場の食肉需要者として重要なポジションを占
  めるホテル・旅館業については、 その需要特性が十分に把握されていないのが現
  状である。 
   
    そこで、 この調査では、 ホテル・旅館業の食肉需要の特性や仕入れの状況を把
  握する一方、 外食市場での食肉販売促進を図ることを目的としている。 

  
2 調査の方法
(1) アンケート調査
   日本観光旅館連盟、 国際観光旅館連盟、 日本民宿協会、 日本ペンション協会な
  どに加盟している施設から無作為に抽出したホテル・旅館等1万か所に調査票を
  送付して行った。 有効回答票は1, 037票で、 回収率は10. 4%であった。 

(2) 調査期間
 平成5年4月1日から平成6年3月31日の間に実施した。 

第2章 食肉使用実態
   食肉種類別使用状況

   パーティー・宴会部門とその他の飲食部門に分けた食肉使用量の割合は、 パー
  ティー・宴会部門が43. 1%、 その他の飲食部門が56. 8%であった (表1)。 
  
    これを業種別にみると、 パーティー・宴会部門での食肉使用比率が最も高いの
  は 「シティーホテル」 (62. 8%) であり、 飲食部門での食肉使用比率が最も高い
  のは 「ペンション」 (92. 8%) であった。 
 
    これらの違いは、 当然のことながらメニューに反映してくるので、 食肉に対す
  る感度、 要求内容は自づと違ってくると考えるべきである。 
 
    同様のことをさらに食肉の種類ごとに比べてみれば表2のとおりである。 
 
    パーティー・宴会部門では、 牛肉の平均 (45. 9%) を上回っている業種として
  は 「観光ホテル」 (56. 7%) などの3つであり、 豚肉平均 (19. 1%) を上回って
  いる業種としては、 「国民民宿」 (32. 4%) などの4つである。 これらの業種は客
  単価水準からみて上記3つのホテル、 旅館とは異なる業種であり、 牛肉を使うこ
  とが多い業種ではその分だけ豚肉の使用比率は低く (16〜17%台) なる。 
 
    鶏肉は、 牛肉や豚肉ほど業種間の差は大きくなく、 各業種とも比較的似かよっ
  た使用率となっている。 
 
    その他の食肉とは、 ラム、 イノシシなどであるが、 宴会部門で供されている食
  肉の約1割はこうした肉となっており、 比較的地域色を生かした献立をとること
  が多い旅館が平均を上回っていることがわかる。 
 
    次に、 同様のことを 「飲食部門」 についてみると、 牛肉の平均使用率 (41.0%) 
  を上回っているのは 「ペンション」 (49. 3%) など3業種である。 このうち 「ペ
  ンション」 はパーティー、 宴会部門をもっているところが少ないので宴会部門で
  の牛肉使用率は目立った存在ではなかったが、 飲食部門では際立った牛肉使用が
  みられる。 
 
    豚肉の飲食部門での最も使用率の高いのは 「国民民宿」 (45. 2) であり、 平均
  客単価をなるべくおさえた業種において豚肉の使用率が高いといえる。 

 
第3章 牛肉の仕入状況
  
1 牛肉の仕入規模
  
    牛肉を仕入れているホテル・旅館業にその仕入規模を聞いたところ、 その全体
  の平均は、 年間仕入数量3, 790. 5キロ、 仕入金額1, 016. 6万円であった (表3)。 

2 牛肉の仕入内容

  (1) 国産牛肉の場合
    ホテル・旅館業が最近1年間に仕入れた牛肉をさらに部位別に仕入れの傾向につ
  いてみたのが表4である。 

  (2) 輸入牛肉の場合
   輸入牛肉のうち冷蔵品、 冷凍品について仕入部位を聞いたところ、 表5、 6のと
 おりであり、 最も仕入れた施設が多かったのは冷蔵品が 「ヒレ」 (54%)、 冷凍品が 
 「サーロイン」 (53. 2%) であったが、 仕入れ傾向は概ね似ていた。 
 
第4章 豚肉の仕入状況
1 豚肉の仕入規模
 
   豚肉を仕入れているホテル・旅館業にその仕入規模を聞いたところ、 その全体の
 平均は、 年間仕入数量2, 091. 8s、 仕入金額227. 8万円であった (表7)。 

2 豚肉の仕入内容

(1) 国産豚肉の場合
   ホテル・旅館業が最近1年間に仕入れた豚肉を、 さらに部位別に仕入れの傾向を
  みたのが表8である。 

(2) 輸入豚肉の場合
   輸入豚肉の冷蔵品、 冷凍品について仕入れ部位を聞いたところ、 表9、 10のとお
  りであった。 最も仕入れた施設数が多かったのは、 冷蔵品、 冷凍品とも 「ロース」 
  であり、 仕入れ傾向は概ね似ていた。 
第5章 鶏肉の仕入状況
1 鶏肉の仕入規模

   鶏肉を仕入れているホテル・旅館業にその仕入れ規模を聞いたところ、 その全体
  の平均は、 年間仕入数量2, 727sで、 仕入金額157. 9万円であった。 (表11) 

2 鶏肉の仕入動向
 
    鶏肉の仕入量が3年前と比べてどの程度変化しているかをみたのが表12である。  
  ホテル・旅館全体の動向をみると 「増えている」 とする施設が19. 9%であるの対し
  て、  「減っている」 とする施設は全体の15. 8%であり、 両者にさほど差はない。
   「変化なし」 とする施設も55. 0%と過半であった。
第6章 食肉の仕入先
1 牛肉の仕入先

(1) 国産牛肉の仕入量

   ホテル・旅館業のうち、 国産牛肉を仕入れているところにその仕入先を聞いたと
  ころ、 「小売店、 スーパー」 (64. 9%)、 「食肉問屋」 (43. 5%) が高くなっている 
  (表13)。 「食肉卸売市場」 の買参権をもち購入しているのは全体の4. 3%であった。
   以上をみてもわかるように、 ホテル・旅館といった業務需要であっても、 かなり
   の部分では一般消費者同様小売店 (食物店) が対応していることがわかる。 勿論、
   この場合の販売は電話注文を受けた後、 所定のカットをして配達するものであり、
   かなりの量まで地元の小売店が対応している。 
  
     それでも、 あまり大量の発注になると小売店では対応できない場合も出てくる。 
   このため、 業種別に仕入先をみても、 「シティホテル」 「観光ホテル」 など仕入量
   が多い業種では 「食肉問屋」 からの仕入れが増える傾向がみられる。 

(2) 輸入牛肉の仕入先

   輸入牛肉の仕入傾向をみる 「小売店・スーパー」 からの仕入れと 「食肉問屋」 か
  らの仕入れとが拮抗した状態となっており、 国産牛肉に比べて問屋からの仕入れが
  強くなる点が特徴といえる (表14)。 
 
    これを業種別にみると、 「シティホテル」 や 「観光ホテル」 など仕入量が多い業
  種では 「食肉問屋」 から仕入れる比率が高く、 個店に近い存在が多い旅館や民宿な
  どでは 「小売店、 スーパー」 からの仕入れが多くなることがわかる。 

2 豚肉の仕入先

(1) 国産豚肉の仕入先
 
  国産豚肉を仕入れているホテル・旅館から仕入先を聞いたところ、 「小売店、 スー
  パー」 (62. 8%)、 「食肉問屋」 (38. 7%) の順であった (表15)。 
 これを業種別にみると、 「食肉問屋」 から仕入れると回答した比率が69. 7%と高率
  であった 「シティホテル」 を除けば、 その他の業種は全て 「小売店、 スーパー」 か
  らの仕入れが6〜7割を占めている。 中でも 「観光旅館以外の旅館」 (75. 0%) と
   「民宿」 (73. 9%) では特に高くなっている。 

(2) 輸入豚肉の仕入先
 
  輸入豚肉の仕入先として最も多かったのは 「小売店、 スーパー」 (53. 6%) であり、 
  「食肉問屋」 (33. 0%) からの仕入れは国産豚肉より5ポイント低い値であった 
  (表16)。  これを業種別にみれば、 「食肉問屋」 からの仕入れ比率が高い 「シティー
  ホテル」 を除き、 全ての業種は 「小売店、 スーパー」 からの仕入れが主流であった。 
  特に 「観光旅館を除く旅館」 (70. 8%) の値は高くなっている。 
 一方、 「シティーホテル」 と 「観光ホテル」 では 「食肉卸売市場荷受」 から仕入れて
  いるとするところが11〜12%あり、 他の業種にはみられない傾向となっている。 

3 鶏肉の仕入先

(1) 国産鶏肉の仕入先

 国産鶏肉を仕入れているホテル・旅館から仕入先を聞いたところ、 最も高かったのは 
  「小売店・スーパー」 (62. 5%) であった (表17)。 
 これを業種別にみれば、 比較的食肉問屋から仕入れているのは 「シティホテル」  「観
  光ホテル」 及び 「ペンション」 であった。 

(2) 輸入鶏肉の仕入先

 輸入鶏肉の仕入先として最も多かったのは、  「小売店・スーパー」 (52. 5%) であっ
  た。 ただし、 その比率は国産鶏肉に比較して10ポイント下回る値であった (表18)。 
 いずれの業種においても 「小売店・スーパー」 からの仕入れが中心であるが、 輸入商
  社、 市場荷受からの仕入れもある。 

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