最近の畜産物の需給動向

  
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の参
考資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季節
調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                  乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔 牛  肉 〕
生産量は前年並み
 6月の牛肉生産量は、3万2千59トン(部分肉ベース、以下同じ、▲0.1%)
と前年並みとなった(図1)。

 生産量の内訳をみると、和牛については去勢和牛が6千643トン、めす和牛
が5千856トンとかなり増加(それぞれ8.4%、15.8%)したが、めす和牛に
ついては和子牛価格の低迷等から去勢和牛より増加しているものと思われる。

 一方、乳用牛については、乳用めす牛が8千767トン(▲1.0%)となった
が、乳用肥育おす牛は1万57トン(▲10.5%)とかなり減少した。 
冷凍品の輸入量は大幅に減少
 6月の輸入量については、冷蔵品は1万7千505トン(▲24.1%)となった
が、冷凍品は3万190トン(15.5%)となった。また、その他(煮沸肉、ほ
ほ肉、頭肉)は140トンとなり、合計では4万7千835トン(▲3.2%、図
2、3)となった。

 事業団の独自の調査による7月の輸入見込数量は、冷蔵品2万6千トン、冷凍
品は1万9千トン、合計4万5千トン前後と見込まれ、また、8月については、
7月よりも増加し、4万6千トン前後(冷蔵品2万7千トン、冷凍品1万9千ト
ン)になるものと見込まれている。 
期末在庫は引き続き9万トン
 6月末の推定期末在庫は、9万7千710トン(15.5%、図4)と前月に引き
続き伸びており、輸入品が8万5千605トン(15.4%)、国産品が1万2千
105トン(15.8%)であったが、3月と5月の大幅な輸入品増加の影響で、
6月の推定出回り量は、8万23トン(10.7%、図5)と引き続き増加傾向に
ある。
省令価格は千円台に
 6月の省令価格(東京市場、以下に同じ)は、946円/kgと前年をわずか
に上回り(2.7%、図6)、7月の省令価格(速報値、瑕疵のある枝肉を除く
)は、1,017円/kg となった。7月の黒毛和牛の主要クラスの価格(東京市場
)は、黒毛和牛去勢「A−5」が2,581円(▲1.9%)、同「A−4」は1,886
円(4.3%)となった。6月から7月上期にかけての輸入牛肉価格(国内仲間
相場)は、北米産冷蔵品はロイン系を中心に上昇、一方同冷凍品のロイン系は
保合、かた系についてはは下げている。豪州産冷蔵品についてはロイン系、も
も系とも上げており、同冷凍品についてはほぼ前回並みとなっている。
 
 〔 肉 用 子 牛 〕 
黒毛和種に初めて補給金交付
 6月の取引価格は、雌雄平均で28万円/頭(▲8.5%)とかなり値を下げた
(図7)。
 7月の速報値(8月10日現在、以下同じ)では、28万8千100円/頭
となり、保証基準価格(30万4千円/頭)を下回ったため、肉用子牛生産者
補給金制度が発足して以来初めて生産者補給金の交付が行われることとなった。
乳用種は大幅に下落
 6月の乳用種の取引価格は平均で5万7千円/頭(▲35.2%)と大幅に値を下
げた(図8)。

 7月の速報値では5万5千円/頭となっている。

 乳用種のヌレ子の価格は6月が4万8千400円/頭(▲23.5%)、7月の
速報値では4万7千800円/頭となっている。
 
 今月のトピックス
黒毛和種に肉用子牛生産者補助金を初めて交付
 2年度の肉用子牛生産者補助金制度発足以来初めて、第1四半期の黒毛和種
の平均売買価格が保証基準価格(30万4千円)を下回り、肉用子牛生産者補
給金が交付されることとなった。

 制度スタート後は枝肉価格が堅調に推移し、肥育農家の導入意欲が強かった
こと等から、子牛価格は高値で推移していたが、3年からの景気の後退、牛肉
輸入量の増加等から、高級牛肉として特別視されていた黒毛和種の枝肉価格も
徐々に低下してきた。

 そのため、肥育経営では販売収入の減少と現在出荷している肥育牛の導入時
価格(約20か月前)が40万円台と高水準であったことから、収益性が大き
く悪化している。このことが肥育経営の導入意欲を後退させ、子牛価格の低下
をもたらしているとみられる。

 なお、生産者補給金は子牛生産拡大奨励事業の奨励金と併せて、ほとんどの
ところではお盆前に各生産者に交付された。
 
〔 豚 肉 〕 
前年をわずかに下回った生産量
 6年6月の国内生産量は、7万9千278トンと前年同月をわずかに下回っ
た(▲1.1%)ものの、季節調整済み値の動きを見ると微増傾向で推移している
ことが分かる(図1)。

 6月のと畜頭数は、151万7千253頭と前年同月とほぼ同じであったが、
7月の速報値は猛暑により出荷が遅れていることなどから、140万頭と同年
同月をかなりの程度下回っている(▲9%)。

 農林水産省畜産局では、8月についても、149万9千頭と前年同月を下回
るものと予見込んでる(▲2%)
輸入量も4万トン台を下回る
6月の輸入量は、4月の基準輸入価格の引下げによる「輸入ラッシュ」も落ち
ついたようで、3万8千21トンと2か月ぶりに4万トンを下回り、前年同月
よりもわずかに減少した(▲2.2%,図2)。ただ、チルドは逆に5月よりも
増え、1万1千98トンとなっている。

前年度をわずかに上回る推定出回り量
 6月の推定出回り量(部分肉ベース)は、輸入品が前年同月をやや上回った
ものの(4.3%)、国産品は生産量がわずかに減少したため前年同月と同水準
となり、合計では12万トンと前年をわずかに上回った(1.4%、図3)。
 推定期末在庫は、国産品、輸入品とも前年とほぼ同じ水準で、9万6千トン
となった(0.7%)。 
強含みで推移した卸売価格
 3月以降、前年同月をかなり下回る水準で推移してきた枝肉卸売価格東京市
場、省令)は、6月には空梅雨のため需要が思ったより強かったと見られるこ
となどから、5月より66円も値を上げて499円/kg(2.0%)となった。7月
(速報値)は、猛暑で出荷が遅れ、と畜頭数が減少したことなどから供給が非
常にタイトとなり、1年ぶりに500円台に乗せ、520円となった(図4)。
8月の卸売価格(東京・大阪市場、省令)について畜産局では、肉豚出荷頭数
が7月をわずかに上回ると見込まれ、また、季節的需給動向等からみて、7月
を下回る水準で推移するものと見込んでいる(7月29日公表)。
 今月のトピックス
非常に落ちついた動きの推定出回り量

 月によって、また、季節によって、変動の幅の大きい推定出回り量であるが、
この動きを季節調節後で見てみると(図3)、国産品、輸入品ともに大きな変
動がほとんどなく非常に落ちついた動きであることがわかる。 ただ、国産品
は生産量の減少を受けて漸減傾向にあるのに対して、輸入品は漸増傾向にある。
  
  

〔 鶏 肉 〕

生産量はほぼ前年並み
  6月の生産量は、10万9千780トン(農林水産省食肉鶏卵課推計)とほ
ぼ前年並みとなった(▲0.7%)。また、6月のブロイラー用ひな出荷羽数は、
前年をかなり下回った(▲7.9%)。季節調整済み値でみると、5年夏以降急
減したが最近はゆるやかな減少傾向となっている(図1)。農林水産省統計情
報部によると、7,8,9月のひな出荷羽数は、それぞれ対前年比で89%、92
%、97%といずれも前年同月を下回ると見込んでいる。
輸入量は急増し4万トン台に
  6月の鶏肉の輸入量は、前月よりも8千531トン増加し、4万1千414
トン(36.2%)となった。国別の内訳をみると、ブラジル産の増加が目立って
おり前月よりも5千847トン増の1万67トン(対前月比138.4%)となっ
た。ブロイラーの国別輸入量を季節調整済み値でみると6年に入ってからは増
加傾向にある(図2)。
推定期末在庫も輸入品を中心に増加
 推定期末在庫は、輸入量の大幅な伸びに従い8万726トン(対前年比7.2%)
となり、うち輸入品在庫は6万6千トンと前月より約5千トン増加した。
 
 また、6月の推定出回り量(消費量)は、14万5千777トンと前年同月
よりやや増加した(4.6%、図3)。  
卸売価格は軟調
  6月のもも肉、むね肉の卸売価格(東京)は、それぞれ512円/kg、311
円/kgと前月より価格を下げている(図4)。7月の価格(農林水産省「畜産物
市況速報」)は一時もも肉が490円/kg、むね肉330円/kg台にまで価格を
下げたが、8月に入ってからはもも肉が510円/kg台、むね肉が350円/kg
台まで回復している。しかし、輸入量の急増等により今後の価格の動向が気に
かかるところである。 
 今月のトピックス
猛暑によるブロイラーの衰弱死について

 農林水産省畜産局は8月12日現在の「暑熱、少雨に係る畜産関係被害状況」
をまとめた。それによると、今夏の猛暑による家畜の死廃は、ブロイラー114
万404羽、採卵鶏29万8千586羽、乳用牛1千554頭、肉用牛460頭、
豚2千454頭となっている。
 特に被害の大きいブロイラーを地域別にみると、東北が45万9千180羽、
関東が14万5千850羽、北陸が9千450羽、東海が3万422羽、近畿が
7万9千60羽、中四国が21万7千222羽、九州が19万9千220羽とな
っている。
 

 〔 牛乳・乳製品 〕

わずかに下回った生乳生産品
  6月の生乳生産量は、73万7千977トンと前年同月をわずかに下回った
(▲1.1%)。北海道、都道府県別にみても、前年同月をやや下回った(それ
ぞれ▲0.6%、▲1.3%)。また、生乳生産量を季節調整済み値でみると、5年
春以降、減少傾向で推移している(図1)。
飲用牛乳向け処理量はやや上回る
 6月の飲用牛乳等向け処理量は、46万4千164トンと前年同月をやや上
回った(4.0%)。これを季節調整済み値でみると、4年度末から減少し始め、
5年秋を底に上昇傾向で推移している(図2)。
 また、飲用牛乳の生産量を見ると、空梅雨等の影響から飲料向け需要が好調
で特にはっ酵乳、乳酸菌飲料は前年同月を大幅に上回っている(牛乳4.4%、
乳飲料4.5%、加工乳10.4%、はっ酵乳19.2%、乳酸菌飲料23.7%)。
 6月の乳製品向け処理量は、生乳生産量が減少した一方で、乳用牛乳等向け
処理量が前年同月をやや上回ったことから、26万1千631トンと前年同月
をかなりの程度下回った(▲9.5%)。  
大幅に下回ったバターの生産量
  6月のバターの生産量は、乳脂肪分がアイスクリームの製造等に回ったため、
7千267トン(▲22.2%、図3)と大幅に、脱脂粉乳は、1万6千699ト
ン(▲11.2%、図4)とかなり大きく前年同月を下回った。価格を見てみると、
バターは引き続き低下傾向で、脱脂粉乳は5月より25kg当たり20円値を上
げ、上昇傾向で推移している。
 今月のトピックス
順調な伸びの国産ナチュラルチーズ
 農林水産省畜産局は、5年度の国産ナチュラルチーズ種類別製造量をとりま
とめた。その内訳を見ると、硬質チーズでは、主にプロセスチーズの原料とし
て風味味付けに利用されるゴーダ(5.8%)やチェダー(14.7%)が順調に伸
びている。また、白かびタイプでナチュラルチーズの中でも食べやすく、人気
の高いカマンベールも、かなり大きく伸びている(14.4%)。
 国産ナチュラルチーズの5年度製造量は3万3千436トンで4年度に続い
て過去最高となっており(6.6%)、ナチュラルチーズが消費者の間で定着し
つつあることを示している(巻末資料参照)。
 

 〔 鶏 卵 〕

前年をやや下回ったえ付け羽数
 6年6月の採卵用ひなえ付け羽数は、前年同月をやや下回った(▲3.2%)。
しかしながら、昨年秋からのえ付け羽数の減少傾向は下げ止まり感が見られ、
農林水産省統計情報部は、7,8,9月のえ付け羽数を前年同月に比べればそ
れぞれ105%、110%、99%と見込んでいる(図1)。
なお、6月の主要5都市の鶏卵市場における入荷量を対前年同月で比べて見る
と、札幌がかなり大きく下回った(▲13.5%)ものの、大阪、福岡はそれぞれ
かなり上回った(11.4%、9.6%)このことから、全体では3万5千174ト
ンと前年をわずかに上回った(2.1%)。 
需要の減少等から続落する卸売り価格
 6月の卸売り価格(東京平均)は、5月より3円/kg値を下げ139円/kg
にとどまったものの、前年同月に比べてかなり大きく下回った(▲13.6%)
(図2)。
 7月の卸売価格(全農東京M規格の平均価格)は、暑さの影響で需要が低
下している一方で、減産の効果が見られないことから、128円/kg(速報
値)となった。このような状況から、先月に引き続き、7月も標準取引価格
が今年度の補てん基準価格(163円/kg)を下回ったため、(社)全国鶏卵
価格安定基金と(社)全日本卵価安定基金は鶏卵生産者に対して28円/kg
の補てんを行うことを決定した。これで、補てんは4月より4ヵ月連続の実
施となった。 
 
 今月のトピックス
  椛S国液卵公社は7月末から鶏卵の買い上げによる市場隔離に乗り出した。
空梅梅雨による連日の暑さの影響で需要が一層低下すしている上に、採鶏卵
の飼料摂取量の減少による生育不順により、大玉の供給量が低下したことか
ら、過剰感のあるM規格以下の小玉を中心に行う予定(表1)。
 

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