食肉知識の啓発と最近の国産 

牛肉消費拡大キャンペーン

財団法人 日本食肉消費総合センター 

                                                普及啓蒙部長 河 野  博 


7月22日から、 国産牛肉“Jビーフ”の消費拡大キャンペーンが始まりましたが、 
このキャンペーンをはじめ様々な事業を実施している財団法人日本食肉消費総合
センターの河野普及啓蒙部長に同センターの活動についてご投稿いただきました。 
 
  平成3年4月からの牛肉輸入自由化に続き、 ガット・ウルグアイ・ラウンド基
本合意により牛肉関税率引き下げが決定し、 本年の関税率50%が段階的に引き下
げられ、 2000年には 38. 5% (年平均約2%) となることは、 皆様ご承知のとお
りである。  こうしたなかで、 不況による消費低迷の影響は畜産業とて例外では
なく、 生産農家や食肉業界に暗い影を投げかけている。 
 
  牛肉が輸入自由化された3年には、 国内での牛肉の流通量は国産53%、 輸入47
%の比率であったが、 4年には各50%、 5年には国産45%、 輸入55%と輸入が大
幅に上回る結果となった。 これは、 品質面では、 外国産牛肉の生産技術の向上や
冷蔵技術の革新などで着実に輸入牛肉の品質が向上してきたこと、 また、 価格面
では関税の引き下げと円高が大きな要因だと考えられる。 
 
  このため、 輸入牛肉と品質面に競合する乳用種牛肉の需要拡大を阻害するので
はないかという心配があったが、 最近では、 高級牛肉である和牛にも影響がでて
きた。 これは、 不況で接待用が減り、 パーティー等の自粛で高級牛肉 (霜降り肉) 
の需要の伸びも鈍化し、 「高級牛肉は自由化されても大丈夫」 という神話が崩れた
ともいわれている。 
 
  こうしたなかで、 (財)日本食肉消費総合センター (以下 「消費センター」 と
いう。 ) では、 「新鮮、 安心、 おいしい」 をキャッチフレーズに国産牛肉の消費拡
大対策に取り組んでいる。 消費センターは、 昭和57年4月に創立され、 食肉に関
する正しい知識の普及啓発、 情報の提供、 食肉の生産・流通及び消費に関する調
査など幅広い業務を行うなかで、 国民食生活の安定・改善に努めている財団法人
である。 

消費センターの事業の概要
1 食肉消費実態調査
  全国8地域19都市の消費者世帯2, 000世帯を対象に、 年2回、 6月、 12月にそれ
ぞれ食肉の消費、 購買行動、 嗜好性等の調査を行うほか、 全国8地域の食肉販売店
1, 000店舗を対象に、 年1回、 12月の売上高、 仕入量、 販売価格、 表示条件等につ
いて調査を行い、 その結果をとりまとめ、 関係機関等に配布している。 この調査は
昭和58年以降継続的に実施されているが、 最近、 特に利用度が高まり、 行政機関、 
マスコミ、 食肉業界等で活用され、 報告書は各界で有効に活用されている。 
2 食肉フォーラムの開催
  食肉と健康に関する医学的及び栄養学的見地から検討を行う 「食肉と健康に関す
るフォーラム」 委員会を開催し、 その成果をガイドブック等にとりまとめ、 行政機
関、 医学関係者及び食肉関係団体等に配布することにしている。 
 
  フォーラム委員会は、 東京大学名誉教授 藤巻正生先生をはじめ、 京都大学大学
院教授 家森幸男先生など11名の委員で構成され、 年3回のフォーラム委員会の開
催を経て、 その成果をとりまとめることにしている。 
 
  また、 昨年度は、 年4回の委員会を開催し、 その結果を委員会報告書としてとり
まとめる一方、 小冊子 「健康なからだづくりに食肉の栄養を」 を作成するほか、 リ
ーフレットを印刷作成の上、 行政機関、 食肉関係団体及び医学関係者等に配布し、 
食肉と健康との正しいかかわりあいについての情報の提供に努めた。 
 
3 食肉セミナー等の開催
  海外の食肉消費に関する知識・販売技術等の修得並びにこれらの知識を普及する
ため、 食肉セミナーの開催及び食肉販売技術の国際交流を図ることにしている。 ま
た、 食肉セミナー“MEAT STUDY” 「21世紀に向けての正しい食生活とは」 を平成6
年10月6日(木)13:00〜16:30に川崎市中原市民館ホールで開催することとして
おり、 多数の方が来場されることを期待している。 
 
  食肉販売技術者の国際交流は、 平成6年度はオーストラリアから食肉販売業務に
携わる者の子弟が来日し、 研修生として我が国の食肉販売店に住み込んで、 食肉の
処理販売技術を修得するとともに、 互いに情報交換を行うこととしている。 

4 食肉・栄養情報の普及
 食肉に関する栄養知識を普及するなかで、 最近、 消費者の利用頻度が高まりつつ
ある冷凍牛肉、 冷凍豚肉の解凍方法の違いによる成分変化を明らかにするとともに
、 牛肉における部位別のアミノ酸分析を行い、 その結果をとりまとめの上、 栄養知
識の普及促進を図るための資料として関係団体に配布することにしている。 なお、 
分析対象及び栄養分析内容は次のとおりである。 

分析対象
 (1)乳用種牛、 和牛及び輸入牛の生肉の6部位 (かた、 かたロース、 サーロイン、
    ヒレ、 うちもも、 ともばら) 
(2)一般販売豚及び輸入豚の生肉の5部位 (かたロース、ロース、 ヒレ、 もも、ば
   ら) 
(3) サンプルは、 小売店販売形態のものとする。 

栄養分析内容
(1)一般成分 (エネルギー、 水分、 たんぱく質、 脂質、 灰分、 炭水化物、 カルシ
   ウム、 リン、 鉄、 ナトリウム、 カリウム、 ビタミンB1、 ビタミンB2、 ナイ
   アシン) 
(2)アミノ酸 (18種)、 アミノ酸スコア
 
 昨年度は、 国産の牛肉及び牛・豚の内臓に含まれるたんぱく質、 脂質、 無機質、 
ビタミン、 アミノ酸等の栄養成分 (25項目) について、 調理前、 調理後 (内臓に
ついては、 下処理の前、 後) の含有量を測定した。 
 
  また、 市町村教育委員会等の協力のもとに、 ビデオ、 パンフレットを活用し、 
食肉と健康の関連等をわかりやすく説明する総合的な知識の普及啓発を図るとと
もに、 短大、 専修学校、 高校等の教育題材として食肉の普及啓発資材を供給して
若年層への食肉知識を普及啓発することにしている。 
5 消費拡大キャンペーン
  食肉の適正表示の促進、 国産牛肉の低需要部位を使用した新製品の開発・普及
による消費拡大、 食肉の消費拡大のためのPR活動等、 消費センターの事業の内容
は多岐にわたっているが、 今回は、 食肉 (国産牛肉) の消費拡大PR活動を中心に
述べてみたい。 
 
  牛肉の自由化により、 最近、 食肉の流通量が増加するなかで、 食肉の需要を拡
大し、 価格の安定を図ることは極めて重要である。 このため、 消費センターでは
従来から食肉の需給、 価格動向に応じ、 機動的に消費拡大を図るための各種PR活
動やキャンペーン活動を行ってきたところである。 しかしながら、 現在の牛肉の
価格動向をみると予断を許さない状況にあり、 国産牛肉の消費拡大キャンペーン
をより一層推進する必要があると考えている。 
 
  3年度以降実施した国産牛肉消費拡大キャンペーンの概要は次のとおり。 

平成3年度
<ジャパンビーフ フェスタ '91>
 3年5月に第1回国産牛肉消費拡大キャンペーンとして、 東京・新宿において、
歌舞伎十八番 「日の本牛之丞顔見世大興業」 と銘打ったPRイベントを開催、 広報
活動として、 朝日新聞等中央紙を中心にキャンペーンに関わる広告掲載を行った
ほか、 テレビ番組の中で国産牛肉消費拡大キャンペーンにかかわるPR放映を行っ
た。 
 
  また、 第2回目の消費拡大キャンペーンとして、 全国11道府県の主要都市にお
いても、 第1回と同様のイベントを中心とした消費拡大キャンペーンを行った。 


平成4年度
<Jビーフ真冬の大キャンペーン>
 キャラバン隊を編成・ニッポン列島を大行脚
@ 第1回国産牛肉消費拡大キャンペーン
 新聞等による広報として、 朝日新聞ほか5紙に国産牛肉消費拡大キャンペーン
にかかわる広告の掲載を行うほか、 テレビ番組の中で国産牛肉消費拡大キャンペ
ーンについての告知を行った。 
 イベントについては、 4年7月、 東京地区は池袋で、 大阪地区は、 梅田で、 そ
れぞれ5人の国産牛肉応援団によるJビーフサマーキャンペーン '92 「Jビーフ消
費促進大演説会」 を開催した。 

A 第2回国産牛肉消費拡大キャンペーン
 新聞等による広報として、 朝日新聞ほか4紙に国産牛肉消費拡大キャンペーン
にかかわる広告の掲載を行うほか、 テレビ番組の中で、 国産牛肉消費拡大キャン
ペーンについての告知を行った。 
 
  イベントについては、 4年10月、 東京地区と大阪地区のそれぞれ第1回と同一
場所で、 大学対抗による好き焼きマラソンなどのJビーフ秋の大キャンペーン 「J
ビーフ好き焼き祭り」 を開催した。 

B 第3回国産牛肉消費拡大キャンペーン
 新聞等による広報として、 朝日新聞ほか4紙に国産牛肉消費拡大キャンペーン
にかかわる広告の掲載を行うほか、 ポスター、 チラシ等を主要都市で掲示・配布
しキャンペーンの宣伝効果を高めた。 
 
  また、 キャンペーン期間として1月下旬〜3月下旬までの約50日間を設定し、 
12都道府県の主要都市でイベント等を行った。 なかでも、 東京から岡山までの8
都府県では、Jビーフ君を隊長とする大キャラバン隊を編成し、 東京都→神奈川県
→静岡県→愛知県→京都府→大阪府→兵庫県→岡山県のコースで、 キャラバン隊
を中心にJビーフ消費拡大キャンペーンを行った。 この間、 県庁所在地では、 地
元協力隊によるイベントを開催したほか、 県庁、 新聞社、 テレビ局などを訪問し、
Jビーフの消費拡大をアピールした。 特に、 県庁では生産者団体の会長から許さ
れた国産牛肉消費拡大にかかわる親書を携え知事を表敬訪問し、 Jビーフ生産者
に対する激励と消費拡大への協力を要請した。 
 
  なお、 東京・新宿の大行脚出発式には、 Jリーグ・ヴェルディ川崎の藤川、 武田
選手等を招きイベントを盛り上げたほか、 開催府県でも地元Jリーグの選手を招き、 
国産牛肉消費拡大のためのPR活動を行った。 

平成5年度
<国産牛肉 「Jビーフ」 シンボルマーク募集・決定>
 国産牛肉の消費拡大キャンペーン等を効果的に展開するため、 国産牛肉 「Jビー
フ」 のシンボルマークを広く一般から公募した。 公募に当たっては、 新聞広告、 公
募ガイド、 デザイン専門学校への募集チラシの配布等により、 以後の広告表現等に
おけるアイキャッチャーとしてふさわしく、 親しみやすく、 好感のもたれるデザイ
ンを募集した。 また、 7月には 「国産牛肉Jビーフ夏の大キャンペーン '93」 をタイ
トルとして、 国産牛肉の消費拡大をアピールするため、 東京と大阪で多彩なイベン
トを開催し、 ムードを盛り上げた。 イベントは東京・新宿、 大阪・梅田でそれぞれ
開催し、 ヘルシーでおいしい国産牛肉を食べてもらい、 食肉消費増進に結びつける
ようPR活動を行ったほか、 イベント会場においても会場内で募集チラシの配布を行
った。 
 
  この結果、 公募締切日までに7, 298点の応募があり、 審査委員会 (専門審査員…
イラストレーター 真鍋 博氏) の厳正な審査の結果、 東京都世田谷区のグラフィ
ックデザイナー 大谷智子さんの作品が選ばれた。 発表・表彰式は11月2日、 東京・
新宿で同時開催した国産牛肉・豚肉消費拡大イベントの中で行われ、 シンボルマー
クの発表除幕式を行うとともに、 賞状、 賞金及び国産牛肉 「Jビーフ」 1年分の贈呈
が行われた。 
 
  このほか、 12都道府県で国産食肉 (牛肉・豚肉)消費拡大のためのPRキャンペーン
を行った。 

<国産牛肉 「Jビーフ」 マークの登場>
 先に決定した国産牛肉 「Jビーフ」 のシンボルマークの浸透・活用を重点にキャン
ペーン活動を展開した。 
 
  キャンペーンでは、 新聞、 雑誌、 ポスター等にシンボルマーク入り消費拡大宣伝広
告を掲載するほか、 俳優の田中邦衛さんをキャラクターに起用したテレビCMを全国32
地区65局で放映 (5年12月、 6年2月、 3月)した。 CMは、 15秒スポットながら早朝
から夜半まで間断なく放映され、 国産牛肉 「Jビーフ」 のイメージを高めた。 このCM
は、 田中邦衛さんを国産牛肉の応援団長として起用、 食肉販売店のショーケースの前
で主婦二人が買い物かごを下げ、 「どれにしよう!どれにしよう!?」 と牛肉を品定
めしていると、 「Jビーフ」 シールを貼った牛肉パックを持った田中邦衛さんがズーム
アップで登場、 元気よく 「奥さん国産ですよ、 うまい牛肉Jビーフ!」 と呼びかける。 
これに対し、 主婦達が 「Jビーフ?」 と問いかけ、 画面に 「Jビーフ」 マークを貼った
牛肉パックがアップされ、 田中邦衛さんが最後にすき焼きを食べつつ、 一言 「国産だ
なァー」 としめる。 
 
  このほか、 販売促進資材として、 食肉専門小売店及び量販店 (日本チェーンストア
協会、 日本セルフ・サービス協会、 全国スーパーマーケット協会、 百貨店協会、 全国
農業協同組合連合会等の会員企業・店舗) に対し、 「Jビーフ」 マーク入りシール、 同
ステッカー等を配布し、 店頭販売強化に努めた。 
 
  以上、 昨年度までの国産牛肉の消費拡大キャンペーンのあらましであるが、 実施に
当たっては、 生産者団体及び関係食肉団体並びに食肉販売店 (企業) の協力が欠かせ
ないものであり、 この紙面をお借りして改めてお礼申し上げる次第である。 

平成6年度
<国産牛肉 「Jビーフ」 のイメージ・認知度高まる>
 昨年度に引き続き、 国産牛肉消費拡大キャンペーンを実施することになった。 今回
のキャンペーンは、 昨年度と同様に国産牛肉消費拡大協議会とタイアップし、 消費拡
大PRを実施するもので、 キャンペーン期間を前期として、 7月25日から8月31日まで
と定めている。 
 
  このキャンペーンでは、 「Jビーフ」 のシンボルマークを中心にすえて、 テレビ、 新
聞、 雑誌等のメディアを活用した広報活動を展開するとともに、 量販店、 専門小売店
の店頭において、 「Jビーフ」 シンボルマーク入りシール、 ステッカー等の販売促進資
材を用いた活動を行うなど、 総合的な消費拡大キャンペーンを実施している。 
 
  なかでも、 広報宣伝活動の中心となるものはテレビCMで、 今回も昨年に引き続き、 
俳優の田中邦衛さんをイメージキャラクターに起用し、 全国45局で15秒スポットCMを
放映している。 

 CMの内容は、 
1シーン‥ 「Jビーフ」 を自慢する買い物帰りの主婦3人がパッケージを見せ合う。 
          (お宅、 ついてる? Jビーフ) 
2シーン‥ブランド主婦のパッケージには、 あるはずの 「Jビーフ」 マークがついて
          いない。 あせるブランド主婦。 
          (トーゼン! アリャマない!!) 
3シーン‥そこへMr. 「Jビーフ」 の田中邦衛さんがはがれたシールを持って商店街
          を疾走してくる。 
          (奥さ〜ん! シール!…… シール) 
4シーン‥おいしそうな 「Jビーフ」 の焼肉の場面、 「Jビーフ」 マークイン。 
          (NA、 うまい目印 「Jビーフ」 ) 
5シーン‥田中邦衛さんがパッケージを持って、 一言。 
          (ついてる!? ) 

 なお、 6年度のキャンペーンのスケジュールは概ね次のとおりである。 
 以上が、 国産牛肉消費拡大キャンペーンのあらましであるが、 今後、 輸入牛肉のシ
ェアが高まることが予想されるなかで、 肉用牛生産振興のために国産牛肉の消費拡大
対策はますます重要度を増すものと思われる。 消費センターとしても、 予算の許す限
り従来以上に効果ある広報宣伝活動を展開したいと考えている。 また、 国産豚肉の消
費拡大対策についても、 時期をみながら、 それぞれ実施していることをご報告してお
きたい。 
 
  終わりになりましたが、 事業遂行に当たり、 これまで種々ご協力いただいた関係者
の皆様方に改めてお礼申し上げるとともに、 今後の活動に対し、 ますますのご指導、 
ご協力を賜りますようお願い申し上げます。 

財団法人 日本食肉消費総合センター
   理事長 太 田 康 二
〒107 東京都港区赤坂6−13−16 アジミックビル
   電 話 03−3584−0291
 
  


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