第3の食肉販売チャネルディスカウントストアの動き

      企 画 情 報 部


 今年の経済白書では、 「価格破壊」(低価格化) という言葉を取り上げ、 分析して 
いる。 低価格化の波は食肉の分野にも押し寄せ、 食肉ディスカウントストアが注目 
されている。 そこで、 今回は、 このような動きについて取り上げてみたい。 
 「価格破壊」 という言葉が、 一種の流行語となっている。 大手スーパーの相次ぐ値
下げ宣言、 各種商品を格安で販売するディスカウントストア (DS) の急速な広が
り。  「価格破壊」 と呼ばれる商品の低価格が広がっている。 経済白書では、 そのよ
うな認識の下に、 物価上昇率が低下していく現象 「ディスインフレーション」 につ
いて詳しく分析している。 その要因の一つとして、 白書ではDSに代表される新規
市場参入者による流通構造の変化と消費者の価格志向の強まりを挙げている。 
DSの動向と流通構造の変化
 流通コスト、 販売コストを大幅に圧縮したDSは、 安価でニーズに即した商品を
提供し、 消費者の支持を集めている。 この動きに刺激されて、 既存の流通業者も生
き残りをかけ、 コスト削減に取り組んでおり、 相乗的に流通構造が変化していると
言えよう。 メーカーの価格支配力が強かった国産の酒、 化粧品でさえ、 DSでの値
引販売が行われ、 これに対抗して最近では一般の酒小売店でも国産ビールを値引販
売しているのが現実である。 
 
  このグラフは、 小売各業態別の販売額伸び率を比較しているものである。 百貨店、 
スーパーが91年から92年にかけて伸び率を大きく鈍化させ、 特に百貨店については
マイナスになっている中で、 ディスカウント店が非常に安定的に成長していること
が分かり、 その急速な拡大は既存業態への大きな脅威となっている。 

  
構造的な消費者の価格志向
   消費者の価格志向の強まりについて白書では、 単に景気低迷による所得減少に
よるだけではなく、 構造的に、 商品の価格を見る目が厳しくなっている可能性を指
摘している。 この背景には、 節約志向の強まりに加えて、 消費者自身が内外価格差
の存在や流通業の効率化の進展を踏まえて、 商品価格はもっと下がってもいいはず
だと考え始めていることがあるとしている。 

DSの急伸
   いま、 ここでDSを定義するとすれば、 「メーカー等からの直接大量仕入れと、 
圧縮した流通・販売コストにより、 低価格を売り物とする新しい業態の小売業」 と
なる。 DSでは、 商品本来の機能と価格だけが勝負である。 仕入原価を引き下げる
ための大量仕入れ、 メーカー、 産地からの直接仕入れは勿論のこと、 ローコスト・
オペレーションが徹底的に追求され、 販売経費、 店の内外装、 什器なども極力切り
詰められる。 
 
  DSが消費者にとって身近なものとなったのは、 家電製品の安売りからではない
だろうか。 販売品目は、 カメラ、 靴、 洋服、 雑貨品、 スポーツ用品などへと急速に
広がっていった。 ただ、 食品の分野では加工食品を扱うDSはあったものの、 生鮮
食品を取り扱うDSは限られていた。 それがここ数年、 生鮮3品といわれる、 青果、
鮮魚、 食肉の専門DSが相次いで登場し、 各地で強烈な販売競争を繰り広げている。 
 
第3の食肉小売ルート DS
  従来、 食肉小売りは専門店と量販店 (スーパー、 百貨店) の2つであった。 そこ
に新たに参入してきたのが、 DSである。 食肉DSが、 注目を集めるようになった
のは、 88年の牛肉自由化決定前後からだろう。 安く出回り始めた輸入牛肉を目玉に
格安の牛肉販売がマスコミでも再三取り上げられた。 91年4月の牛肉輸入自由化を
契機として、 首都圏ではいわゆる大手DSのハナマサ、 ニュークイック、 BIGB
IGの3社が出店を競っており、 主な駅の近くには1店以上の食肉DSがあるほど
になっている。 
 
  このように急速な広がりを見せ、 販売量も増えている第3の小売ルートであるD
Sを無視して、 これからの食肉の生産・流通・販売を考えることはできない。 
 
  今回、 食肉DSの最近の動きについて、 格安の輸入牛肉を目玉にし、 販売の中心
においているDSが多い中で、 国産牛肉を主体に販売するユニークな商売を展開中
の近江屋 (埼玉県川越市) をレポートする。 また、 単なる食肉DSから、 総合食品
DSとして様々な飲食業にも取り組んでいる渇ヤ正の田辺部長にこれからのDSの
方向について伺ったので、 紹介する。 
 

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