国産牛肉で他店との差別化を!

                                      埼玉県川越市 株式会社 近江屋 

                                      営業統括部長 黒沢 義文氏に聞く 


やっぱり国産牛肉
 「お客さんは、ちゃんと分かっていますよ。やっぱり国産牛肉ですね」と
心強いことを話してくれたのは、埼玉県越谷市で「肉のびっくり市」を開
いている株式会社近江屋の黒沢義文営業統括部長。一部の大手スーパーで
も、あまりに輸入牛肉に偏りすぎたマーケティングを見直そうという動き
が見られる中で、同店では、昨年から競合店との差別化を図るため、国産
牛肉を主体に販売し、好成績を収めている。近江屋は、首都圏の量販店を
中心にテナント出店をしてきた食肉と惣菜・仕出しの専門店。「肉のびっ
くり市・四季食彩」は91年10月に同社が初めて出店した大型独立店で
ある。川越市は古くから城下町として栄えてきたが、近年は東京のベット
タウンとして人工が急増してきている。同店の商首都圏にも他の大手DS
がテナント出店しており、競争は当然厳しい。
 
 昨年、国産牛肉主体に切り替えるまではやはり、輸入牛肉の安売りをメ
インに商売を進めてきたそうである。ところが、年々激しくなる一方の競
合店との輸入牛肉の安売り合戦は、体力を消耗するばかりで、ほとんど利
益を取れなくなった。100g50円といったバカ安値の販売は、量だけ
はどんどんさばけるものの、手間は同じどころか、かえってかかってしま
う。
 
 一方、牛肉を食べ慣れてきて、牛肉の味がわかってきたお客さんに、安
い肉だけを売っていたら、次第に離れていくのではないかという恐れがあ
った。

 また、お客さんからも、「鮮度がよく、安心して買える国産の牛肉を安
く買いたい」という声があり、ちょうど、国産牛肉も値段が下がり、安く
提供できるようになったことから、国産主体に方向転換したのである。
4クラス構成の牛肉販売
 牛肉の販売は、和牛は「米沢牛」、国産牛は「榛名牛」と「十勝牛」、
それに輸入牛肉として豪州のオージービーフが加わる4つのクラス構成で
ある。売上数量の構成比は、十勝牛が40から50%と約半数を占め、次
が榛名牛で20%。残りを米沢牛と輸入ものが占めている。米国産は現在、
扱っていない。
 
 売り場では、十勝牛のPOPが非常に目立ち、オープンケースには、十
勝牛のシールが貼られたパックがずらりと並んでいる。オージービーフの
シールが貼られたパック売り場面積は非常に限られている。
 
 米沢牛は対面ケースで販売しており、十勝牛の一部もここで販売してい
る。業務用の大きなカットの豚肉、鶏肉が同じ対面ケース下段に並べられ
ており、不思議に思い尋ねてみると、「お客様との対話を通じて、ニーズ
を拾い上げ、ニーズに合った商品を勧めたい。

 業務用のお客様の声も直接聞くため、対面で販売している」とのことで
あった。
 
 仕入は、いずれも大手の食肉卸を通しているものの、榛名牛については
産地と密接に協力しながら仕入れており、産直に準じた形になっている。
 
広い商圏と朝市
 来店者のほとんどは車を利用しており、駐車場は100台分確保してあ
るが、それでも週末はかなり混雑するそうである。毎月の最終日曜日に開
かれる朝市では、通常売価をさらに引き下げ、大好評とのこと。当日はか
なり遠くからも来店があり、鮮魚、青果の販売も拡大し、魚のつかみ取り
なども企画して、お客さんが外までごった返すほどだそうだ。

 また、最近のアウトドアブームの影響で週末は、野菜、炭も一緒にした
バーベキューセットが大好評とのこと。
 
 店の2階はレストラン、宴会場となっている。3月から始めた1,980円の
しゃぶしゃぶ食べ放題は大好評で、毎晩、広い店内がお客さんでいっぱい
になるそうである。食べ放題とはいえ、美味しいお肉を出さなければ、1
階の肉屋の評判にも影響するので、お肉には気を遣っているという。
 
売るための努力
 お店のバックヤードには5人の精肉担当者がおり、ボックスで納品され
た部分肉を商品化している。多くのスーパーやDSがバックヤードの縮小
を進めている中で、5人も職人さんがいるのには驚かされた。黒沢部長は
「これが売るための努力なのです」と言い、部分肉を小割りにし、スライ
スしていく技術がお店の人気を支えているとも説明してくれた。

 この辺に、あくまで「肉屋」にこだわる同店の姿勢が伺える。近江屋で
は、去年9月に東京都練馬区に2号店を開店し、ここも好調とのこと。

 輸入牛肉を中心に据える量販店、DSが多い中、差別化のため国産牛肉
に力を入れる同社のユニークな経営に注目したい。

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