株式会社花正
営業本部部長 田辺 修治氏との一問一答
食肉DSの老舗とも言える株式会社花正 営業本部FC部開発担当部長の田 辺修治氏に、DSの販売戦略の現状とこれからの方向についてお話をお聞きし た。
食肉DSといえば花正の名前が挙がるくらい有名ですが、現在の活動状況を 教えてください。 A: 花正は食肉のDSとして有名になりましたが、昭和36年からセルフサー ビス方式を導入し、食肉だけでなく、青果、鮮魚の生鮮食品の販売も手が け、現在ではハム、ソーセージの製造、各種の加工食品の製造・販売から、 焼き肉、しゃぶしゃぶなどの飲食店、今流行のブラジルのシュラスコ料理 の店など、国内で併せて123店、中国をはじめとするアジアで、飲食店 20店舗を展開しています。 単なる食肉DSという枠を超え、総合食産 業として消費者のためのインテグレーションを目指していますが、基本は あくまで「より良いものをより安く」であり、値頃感のある供給というこ とを常に念頭に置いています。 このことを実現するために直接仕入による流通経費の削減はもちろんのこ と、店舗にかける費用なども極力抑えています。飲食店で販売するビール やワインも海外から大量・直接仕入れにより超低価格で輸入・配給してい ます。 主力の食肉販売について伺いますが、牛肉の種類別売上構成比はどのようにな っていますか? A: 輸入牛肉が7割、国産が2割で、残り1割が和牛です。輸入牛肉は、豪州 産が主体で100から120日のショートフェッドが中心です。半分をセ ットで豪州から直接買付け、残り半分を市中から部分別に買っています。 国産牛肉は生産者団体と協力して仕入れています。 和牛は、一定の規格を定め、これに合うものを買っていますが、ブランド にはこだわっていません。 最近では、普通のスーパーでも安価な牛肉が手に入るようになりました。これ らスーパーと差別化をどのように進めるのでしょうか? A: 日用品の買い物はできるだけ安く、という消費者の価格志向は非常に根強 いものがあります。 特に購入頻度の高い食品については、価格に非常にシビアです。 昔のように大きな差はないかもしれませんが100g10円の差でも、積 重ねれば大きいのです。 そして、その差を出していけるのが、我々DSであり、差別化とは品質に 応じた価格と考えます。 最近、輸入牛肉と輸入豚肉のPB商品(プライベートブランド、自主企画商品) の開発をすると発表されましたが、その目的は何でしょうか? A: PBというと、大手スーパーがメーカーと直接交渉して開発しているTV やCDラジカセなどの家電製品、洗剤などの生活雑貨などが有名ですが、 食肉の場合も食肉加工会社と一緒に自社規格の商品を開発し、直接、大量 に買い付けることを目指します。 豚肉は、カナダのメーカーと契約しま した。日持ちの問題があって、カナダからチルドポークを輸入するところ は少なかったのですが、混合ガスをパックに注入することでこの問題を解 決しました。これまで、豚肉は国内の産直などで対応してきましたが、相 場の変動が大きいので、安定的な供給ができないのが悩みでした。また牛 肉については、過去3年間、豪州の色々なブランドを使ってみて、品質が 安定している3社に絞込みました。 先方とは、量と価格を決めて一定期間の契約を結びます。安定した買付け は、双方にとって大きなメリットになります。DSの基本は流通の合理化 による低価格の実現です。国内の輸入会社との取引ではどうしても先方の 都合が優先しますし、我々が望む価格を実現できないこともあったので、 PBの開発に踏み切ったのです。 これからも輸入品を主体にして行かれるようですが、国産牛肉を広げるお考え はないのでしょうか? A: 極論を言えば、輸入品だけでも対応できます。国産品が欲しいというお客 さんもいらっしゃいますので店頭には置いていきますが、豪州産牛肉も品 質が向上し、その幅が広がっているので、希望するものを手に入れること ができます。 輸入牛肉に対抗して、どうすれば国産牛肉を売ることができるのでしょうか? A: 鮮度の問題などは、新しい技術が解決してくれるのでいつまでも国産優位 が続くことはないでしょう。問題は、売るための包括的な努力が決定的に 欠けていることです。国産牛肉は地域ごとに銘柄があり、ばらばらにPR しているのが現状です。「Jビーフ」キャンペーンが行われていますが、 もう一歩進めた販促の方法を考えていく必要があるのではないでしょうか。 特にエンドユーザーとタイアップした販促が重要と思われます。 消費者が何を求めているのか、売れるものは何かを考えながらものを作り、 売って行かなければなりません。 具体的な例がありますか? A: 米国産の牛肉で、一定の品質のものだけに限って扱っている商社がありま す。どちらかと言うと、グレードが高く価格も高めですが、地道にその販 売に取り組んできたため、マーケットがそれを認知し、毎月かなりの量が 輸入されています。 地味でも、継続的なマーケティングが国産品にも必要なのではないでしょ うか。 時代は急速に変わってきています。「いくらで売る」のではなく、「いく らなら売れるか」が重要なのです。すべてはここから始まります。その 「買っていただける価格」を実現するのが、我々の仕事だと思っています。 (聞き手 企画情報部 安井 護)