◎地域便り


肉用牛の生産コスト引き下げの限界は?

(鹿児島県 畑添 至)


 雨と台風で濡れそぼった平成5年度が終わり、桜の花が満開の中平成6年度が
スタートした。

 牛肉の輸入自由化など国際化の進展とともに、生産コストの引き下げが叫ばれ
るようになり、農家段階においても如何にコストを引き下げるかについて、あら
ゆる努力がなされている。  

 そのような中、ある肥育農家(黒毛和種が主体、一部F1を飼養)での取り組
みについて紹介する。 

(1)導入する肥育素牛は人気種雄牛の産子にこだわらず、これまでのデータを
   基にする。 

(2)価格の安い肥育素牛も導入し、危険分散する。 

(3)濃厚飼料は自家配合飼料とし、1kg単価を可能な限り引き下げる。このた
   め、

 @ 単味飼料は定時・定量(大量に)購入する。 

 A 購入先にこだわらない。(農協からも商社からも購入) 

 B 大型倉庫(大型車両の出入りを可能とする)、フォークリフトを備え輸送
   業者に便宜を図る。 

(4)牛ふんは堆肥として近郊の園芸農家へ販売し、農家の希望する畑まで条件
   を問わず運搬する。 

(5)牛のどんな小さな異常も見落とすことのないよう常に観察を怠らない。 

(6)獣医師との連携を密にし、事故を最小限にくいとめる。 

(7)牛舎や倉庫等は廃材を利用し手作りする。  

 このような経営方針で永年肥育経営を続けてきたが、牛肉輸入量の急増とバブ
ル崩壊の影響は大きく、収益は落ちこんできている。生産コストの引き下げに努
めてきている農家でも、肉用牛をめぐる厳しい状況の中、小さな失敗が今後の経
営を左右するものと思われる。農家はもちろんのこと畜産関係者の知恵と努力に
より、もうかる経営手法はまだ見つけ出せるのではないか。

 
 

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