◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

堆きゅう肥で水稲の無化学肥料栽培を実現

(愛知県 柳澤 淳二)

  愛知県豊橋市で乳用種と交雑種を450頭肥育している彦坂満氏 (40才) は、 
過去10年以上化学肥料を使用せずに水稲1.2haと牧草4.8haを栽培している。
  
  水稲の品種は 「初星」 で、 4月下旬田植え、 8月下旬の収穫という栽培体
系である。 元肥はもちろん、 追肥、 穂肥も化学肥料を使用しない。 

 毎年1〜2月に肥育舎からでる堆きゅう肥を、 マニュアスプレッダーで10
a当たり3〜4t 施用し、 土壌改良材 (石灰、 ケイ酸を主体に、 マンガン、 
鉄等を含む。)120kgと共にロータリーで鍬込む。 堆きゅう肥の量は前年の水
稲のでき具合を勘案して加減し、 施用から田植えまでの約3か月間に、 除草
を兼ねて2〜3回トラクターで耕起することが無化学肥料栽培の秘訣である。
 
 施用された堆きゅう肥は、 3か月以上土壌と十分混和され、 ゆっくりと発
酵、 分解し、 徐々に水稲への肥効を表わすものと考えられる。 
 
  10a当たりの化学肥料代は約6千円で、 1.2haでは72千円の肥料費を節約し
ているうえ、 冷夏の平成5年、 猛暑の平成6年も気象の変動に影響されず、 
例年の8俵の収量を維持している。 

  たい肥利用イコール環境保全型農業とは言い切れない面もあるが、 家畜ふ
ん尿の有効利用という観点から参考となる事例である。 
 

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