◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

豚流行性下痢 (PED) で多数のほ乳豚が死亡

(鹿児島県 渡辺 学)

  鹿児島県の薩摩半島南部にある養豚一貫経営農家5戸で、 平成6年1月か
ら7月にかけて、 これまで国内において発生が少ないとされていた豚流行性
下痢(PED)により多数のほ乳豚の死亡が発生した。 
 
  主な症状としては、 分娩直後でも母豚の乳房の張りが弱く、 分娩後も泌乳
量の減少・停止がみられ、 食欲不振、 発熱を示すものも見られた。 ほ乳豚は
生後3日齢を中心に1〜7日齢でおう吐、 黄色水様性の下痢を始め、 ほ乳行
動はおう盛であるものの、 母豚の泌乳停止も加わり、 脱水症状とともに次第
に衰弱死した。 農場によっては、 下痢に至ることなしにほ乳不足で衰弱死す
るものもあった。 一方、 10日齢以降での発症豚は回復するものが多かった。 

  子豚の死亡率は30〜65%であった。 
 
  今回の発生は、 生まれる子豚群が次々と発症し死亡したため、 被害が大き
かった。 その期間は短い農場で2か月、 長い農場で6か月に及んだ。 農林水
産省家畜衛生試験場九州支場と日本生物化学研究所の協力により PEDと診断
されたが、 対症療法及び消毒等の効果がすぐに現れなかった。 このため、 約
1か月かけた隔離分娩の処置を行いながら、 オールインオールアウト方式を
取り入れた飼養管理により終息した。 
 
  PEDは、 70年代にヨーロッパで発生以来、 80年代にカナダ、 フランス、 日
本で発生している。 最近では韓国でのまん延が報告されている。 我が国では
本県のほかに北海道、 三重県等での発生が報告されているが、 過去の下痢発
生例の中にPEDが含まれていることも推測される。 ワクチンのない現状では、 
早期発見と隔離分娩、 消毒の徹底が予防のためのポイントとなろう。 

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