最近の畜産物の需給動向

  
 国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の
参考資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季
節調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                 乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔  牛  肉  〕
生産量はやや増加
 12月の牛肉生産量は、4万1千789トンと前年同月よりやや増加した(2.6
%、図1)。その内訳をみると、去勢和牛とめす和牛は、それぞれ1万1千395
トン(7.2%)、8千565トン( 10.4%)とかなり増加し、乳用肥育おす牛と乳用
めす牛は、それぞれ1万1千948トン(▲2.9%)、8千937トン(▲3.3%)と減少
した。
12月の輸入量見込み数量は約4万9千トン
 12月の輸入量について事業団は、約4万9千トン(チルド約2万8千トン、フ
ローズン約2万1千トン)、また、1月を約4万4千トン(チルド約2万8千トン、
フローズン約2万1千トン)2月を約4万6千トン(チルド約2万5千トン、フロ
ーズン2万1千トン)と見込んでいる(詳細については、参考資料の「品目別輸入
動向調査」の項を参照)。
期末在庫量はやや増加
 12月の推定期末在庫量は8万2千492トンとわずかに増加したが(1.5%、
図2)、その内訳をみると、国産品は1万1千688トン(1.1%)、輸入品は7
万804トン(1.6%)となって約1万トンの減少となっている(図3)。
1月の省令価格は前年並み
 12月の省令価格(東京市場)は、1,009円/kgと前年をかなり下回った(▲15.1
%、図4)。和牛の2、3クラスについては、主に量販店等による特売需要等によ
り荷動きは活発であったもの出荷量が増加したことから、また4、5クラスについ
ては催事需要の低迷等から全ての品目で前年より下落した。

 1月の省令価格(東京市場速報、瑕疵のある枝肉を除く。)は、1,070円/kgとほ
ぼ前年並みとなった。去勢和牛の枝肉価格(東京市場、速報値)は、A5が2,586
円/kg(1.3%)、A4が1,936円/kg(0.7%)、A3が1,506円/kg(0.5%)とぼぼ前年
並みの水準となったが、これは、各クラスともに出荷量が減少したためで(それぞ
れ▲31.3%、▲5.0%、▲10.9%)、最近の価格の低下傾向に歯止めがかかったも
のと思われる。また、乳用肥育去勢牛の枝肉価格(東京市場、速報値)は、B3が
879円/kg(▲4.4%)、B2が669円/kg(▲10.1%)と前年同月を下回った(図5、
6)。
 
 1月上期の輸入牛肉の仲間相場は12月下期に比べ豪州産フローズンは値を下げ
たが、その他豪州産チルド、米国産については前年並みか値を上げた。




〔  肉 用 子 牛  〕
 
黒毛和種の取引価格は35万円台(1月速報値)
 12月の黒毛和種の子牛取引頭数は2万8千473頭(98.4%)、取引価格(雌
雄平均)は36万5千円/頭(110.3%、図7)となった。
 1月の取引価格(速報値、2月10日現在)は、35万8千円/頭と前月より価格を
下げているものの、前年同月を7.8%上回る価格となっている。
  
乳用種取引価格は前月並み(1月速報値)
 12月の乳用種の子牛取引価格(雌雄平均)は、5万3千円/頭となった(図8
)。1月の同価格(速報値、2月10日現在)は、5万9千円/頭となった。
 12月の乳用種のヌレ子価格は5万1千円/頭(▲110.6%)、1月の同価格(
速報値、2月10日現在)は、5万円/頭となった。 
 今月のトピックス
黒毛和種は保障基準価格を上回る
 農林水産省畜産局は、1月20日に平成6年度第3四半期(10月1日〜12月31日)
の指定肉用子牛の平均売買価格を告示した。褐色和種、その他の肉専用種、乳用種
については引き続き補給金の交付が発動されたが、黒毛和種については、年末の枝
肉価格の上昇と出荷牛の導入時の素牛価格が低下していることから、肥育経営の収
益性がやや改善されつつあり肥育農家の導入意欲が強まったため、第3四半期の子
牛価格は前年同期を上回った。その結果、黒毛和種の第3四半期の平均売買価格は
保障基準価格を上回り、発動には至らなかった。

〔  豚 肉  〕
前年をわずかに下回った生産量
 12月の国内生産は、母豚の飼養頭数の減少などから、と畜頭数が169万3
千123頭(▲2.6%)、生産量が8万9千418トン(▲2.1%)と前年同月をわ
ずかに下回った(図1)。
 
  1月のと畜頭数(速報値)は、151万4千800頭と前年同月をやや下回っており
(▲2.5%)、農林水産省畜産局では、2月についても、146万6千頭と前年同月
をわずかに下回るものと見込んでいる(▲2%)。
前年を大幅に下回った国産品在庫
 国産品の推定期末在庫量は、生産量の減少を受けて9月末以降前年同月を大き
く下回って推移し、12月は1万8千21トン(▲21.9%、図2)となった。
 
 一方、輸入品在庫は輸入量の増加傾向を受けて前年同月を上回って推移してお
り、12月は6万3千582トン(5.7%)で、合計では8万1千603トンと
なった(▲2%)。
弱含みで推移した卸売価格
 12月の卸売価格(東京市場・省令)は、下旬に休市前の在庫補充手当てから
一時的に値を上げたものの、上旬、中旬は総じて弱含みであったことから413円
と前年同月をやや下回った(▲4.4%、図3)。
 
 1月の卸売価格は、総じて弱保合で、調整保管の実施により、406円と前年同
月をわずかに下回った(▲4.4%、図3)。
 
 1月末の調整保管頭数は、5万2千91頭となった。
 2月の卸売価格(東京・大阪市場)について畜産局では、肉豚出荷頭数が1月
を下回ると見込まれていることと季節的な需要動向等から、1月を上回る水準で
推移するものと見込んでいる(1月31日公表)
 
 今月のトピックス
増加傾向を示す米国からのチルド輸入
 昨夏の国内相場の高騰をきっかけに急増した輸入チルドであるが、国別に見る
と、台湾からの輸入が月により増減が著しいのに対し、米国からの輸入は着実に
増加してきていることがわかる(図4)。
 
 その理由として、日系商社等と提携した米国のパッカーの対日輸出が本格化し
ていること、ユーザーが固定しており、長期契約に基づくものが多いことから国
内市況の善し悪しにかかわらず一定量が輸入されることなどが挙げられる。

 米国食肉輸出連合会では、豚肉の対日プロモーションに力を入れており、米国
からのチルド輸入は今後、増加傾向で推移しそうだ。
  

 

〔  鶏  肉  〕 

前年並みとなった生産量
 12月の生産量は、12万4千134トンとほぼ前年並みであった。
 生産量を季節調整済み値で見ると年末の需要期に合わせ上向いている(図1)
。6年の総生産量は、猛暑の影響等により夏場を大きく落ちこみ1〜12月の間で
は、130万2千141トンと平成5年をわずかに下回る結果となった(▲2.6%、図2
)。

  また、今後の生産指標となる12月のブロイラー用ひな出荷羽数は、5千653
万羽と前年同月をわずかに下回った(▲1.2%)。
 
  農林水産省統計情報部によると、7年1月、2月、3月のブロイラー用ひな出
荷羽数を、それぞれ前年に比べて97%、99%、95%と見通しており、生産量は、
今後も前年を下回って推移する見込みである。
前年を大幅に下回った推定期末在庫量
 12月の推定期末在庫量は、前年に比べて約1万トン減少し、8万1千2トン
(▲15.6、図3)となった。

 輸入品の在庫量は、昨年4〜11月までの輸入量の急増もあって、増加してきた
が、在庫水準が高かった前年同月と比べてかなり下回った(▲7.6%)。
堅調に推移した12月の卸売価格
 12月のもも肉、むね肉の卸売り価格は、クリスマス・年末の最需要期向け商
品が好調であったことから堅調に推移し、それぞれ、601円/kg(10.7%)、328円
/kg(1.5%)となった(図4)。
 
 最近の価格動向をみると、最需要期を過ぎたことから、値を下げ続け、月末に
はもも肉が553円/kg、むね肉が293円/kgとなっている(農林水産省「畜産物市
況速報」)。
 
 今月のトピックス
「食料需給表」から 

 平成5年度「食料需給表」(農林水産省官房調査課)から国民1人・1日当た
りの供給食料をみると、肉類(計)では、特に円高を背景に牛肉の輸入が増加
したことから、わずかではあるが1g増(1.2%増)となった。鶏肉は特に生産
量が前年度と比べて減少(2.9%減)したことが要因となってわずかに減少して
いる。
肉類及び鶏肉の供給純食料(表)
区分   年度 55 60 3 4 5
供給純食料(g) 肉類 61.6 68.8 79.1 81.0 82.0
  鶏類 21.1 25.0 28.5 29.0 28.4

(参考)

鶏肉生産量(千トン) 1,122 1,351 1,358 1,365 1,325
鶏肉輸入量(千トン) 80 115 392 398 390
資料:農水省「食肉需給表」、農水省食肉鶏卵課推計、大蔵省「日本貿易月表」
 注:供給純食料は国民1人・1日当たり。5年度は速報値。
  

 〔 牛乳・乳製品〕 

生乳生産はわずかに下回る
 12月の生乳生産量は、66万2千680トンと前年同月をわずかに下回った(▲
2.4%)。また、一日当たりの生乳生産量の推移を季節調整済み値でみると、
5年春以降、ゆるやかな減少傾向を示している(図1)。
 
飲用牛乳等向けは引き続き増加
 12月の飲用牛乳等向け処理量は、暖冬の影響等から38万8千826トンと前年
同月をやや上回った(4.3%)。最近の1日当たりの処理量の推移を季節調整
済み値でみると、5年秋以降、増加傾向で推移している(図2)。
 
 12月の乳製品向け処理量は、生乳生産量の減少、乳用牛乳等向け処理量の
増加から、25万7千946トンと前年同月をかなり下回った(▲10.0%)。
 
  
下げ止まるがバターの価格
 12月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、それぞれ6千353トン( ▲23.1%、
図3)、1万6千193トン(▲10.1%、図4)と引き続き大きく前年同月を下回っ
た。12月のそれぞれの大口需要者価格を見ると、バターは在庫が高水準であ
るものの、徐々に減少しつつあり、価格は前月と同じ950円/kg(▲4.7%)と
なった。脱脂粉乳は、輸入された一部が12月に放出されたものの、1万3千509
円/kgと安定指標価格を5.2%上回っている。
 
 今月のトピックス
牛乳販売店の顧客管理にコンピュータを活用
 第8回牛乳販売店優良事例中央発表会((社)全国牛乳流通改善協会主催)
が1月25日に開催された。全国の9ブロックから選出された宅配部門、卸・
自販機等部門の優良牛乳販売店の経営者がそれぞれ発表し、審査の結果、森永
新所沢駅前販売店・吉田良三さん(宅配部門)、金子乳業(有)・金子誠さん
(卸・自販機等部門)が最優秀賞を受賞した。
 
 宅配部門の吉田さんは70歳を過ぎているが、@地元の高齢者に依頼して宅
配PRのチラシを配布し、AFAXによる受注も行い、B1本でも配達し、C
コンピュータを活用して顧客管理と商品の売れ筋等の分析をするなど時代にそ
った経営に転換していく柔軟さが評価された。

 

〔  鶏  卵  〕 

9ヶ月連続して前年を下回ったひな出荷羽数
  12月のひな出荷羽数は、765万6千羽とほぼ前年同月並みとなった(▲0.8
%)ものの、依然前年同月を下回って推移している。ひな出荷羽数を前年の同
月と比べてそれぞれ100%、93%、87%と見込んでいる。

 12月の主要5都市(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)の入荷量は、2万1
千624トンと前年同月をわずかに下回った(▲2.2%)。

堅調に推移した12月の卸売り価格
 12月の卸売り価格は、 なべ物需要に加え、年末の加工向けの消費が上向い
たことから、堅調に推移し、217円/kg(23.3%)となった(図2)。

  1月の卸売り価格(東京全農M規格)は、年始(初市)は150円/kgとなった
。中旬以降は、市場の入荷量が前年に比べ少なかったことや、関係者によれば、
年始の滞貸が例年より若干早く消化されたことから、需給は引き締まり全規格
とも堅調に推移し、下旬には200円/kgとなった。
 
 今月のトピックス
鶏卵需給について
 平成5年度の「食料需給表」(速報)が公表されたが、自給率をみると、前
年を1%下回る96%となった。鶏卵は我が国の畜産物では唯一90%台を維持し
ており、62年度をピークに徐々に減少の傾向にあるものの健闘している(図3)。
 
 先進主要国の需給をみると、生産量は米国に次いで多く、輸入量は自給率が
多国に比べて低いドイツに次いでいる。しかしながら、輸出量は表に揚げた国
の中では唯一ゼロとなっており、他国に比べると国内の需要に見合った生産が
されているといえるであろう(表)。
主要先進国の鶏卵需給(表)
  食料自給率(%) 生産量(百万個) 輸入量(百万個) 輸出量(百万個)
日本 93 1) 43,252 1,605 0
ドイツ 71 2) 13,678 5,459 1,038
アメリカ 102 71,522 56 1,907
イギリス 97 10,645 666 261
カナダ 98 5,689 459 420
フランス 96 13,896 1,349 1,433
資料:農林水産省「食料需給表」(平成5年度速報)、OECD「Food
Consumption Statistics (1979-1988)USDA「Poultry World Markets
and Trade(October1994)」(1993)
注:1)食料需給率の1)は5年度速報値、その他は1988年。
  2)2)は旧西ドイツ。

  

元のページに戻る